第6話 夜八時
ホテルは思っていたよりも大きかった。わたしは文香から「○○と◯◯カップルは一緒の部屋で寝るらしい」「◯◯は告白するって」などの噂話を聞きながらも、ずっと類斗のことを考えていた。
バスから降りると、少し前をふたりは歩いていた。叫んだ名前、聞いていたふりした方がいいのかな? でも聞いてないし。誰なんだろう? もしかして、今日類斗も告白するとか? なんてことで頭がいっぱいでかばんを取り忘れて先生に怒られた。
「大川、いい加減にしろよ。どうした、ぼけっとして」
担任の西野はわざと、わたしを睨みつけた。
「すみませーん」
こんなやり取りは日常で、すぐに文香によって類斗たちに報告された。聞いた類斗は意地悪く笑った。
文香と、あと仲がいい絵美と莱が一緒の部屋だった。荷物の整理をしながら、互いにテーマパークの話をして盛り上がった。
絵美には好きな男子がいる。隣のクラスのわっちゃんこと渡瀬だ。類斗や奏也と同じサッカー部で、仲がいいためわたしもたまに話したりしている。若干、チャラい印象? まあよく言えばムードメーカー。だけど、明るい絵美とは相性はよさそう。
「わたし実は告白しようと思ってんねん」
絵美は笑顔で言った。
「まじか、いつ?」
「ほんまやいつ?」
わたしは整理していた手をとめ、絵美の方を見る。
「今日の夜。わっちゃんにはさっき伝えてん。八時に来てって。だからごめんやけど、部屋その時使わせてくれへん?」
「いいに決まってるやん」
「がんばって」
「祈ってるわ」
わたしは驚きながらも、
「がんばって、絵美」
とやっと言葉が出た。そういえば、テーマパークでお土産買い忘れた、と思い出すとまた類斗の顔が浮かんだ。
絵美もついに告白するのか、わたしまでドキドキしてきた。
それからわたしたちは私服に着替える。絵美はミニスカートに胸元のあいたセクシーな服だった。わたしは、普通のロンTにジーンズ。まじでださい。文香はいつも通り、姉のおさがりと思われる大人っぽいモノトーンの服だった。
絵美は洗面所で化粧直しを始める。わたしが座ったベッドの端から見えた。まつ毛にマスカラを塗り重ね、アイライナーを目の際に引いていた。それからコテで髪を巻き、軽く身なりを整える。わたしは化粧なんてしたことないけど、文香から色々教えてもらってはいる。
少し目の印象が変わった絵美を見て、可愛いなーって思った。一生懸命な女子はいつでも可愛い。




