第40話 許さない
こっちに戻ってきた類斗はわたしたちと会うようになっていった。昔と変わったのは、類斗の薬指に指輪がついているということ。居酒屋で話しながら、わたしは指輪に目をやる。不思議と、なんかその手に入れられない感が惹かれる。結婚相手よりもわたしを選ばせてやるんやから。
奏也はおいしそうに1杯目のビールを飲む。類斗はにこにこしている。
「なんかうそみたいやなーまたこうやって集まれんのもやし、酒飲んでんのも」
「てか、嫁とはどこで出会ったん?」
「あー実は地元近くてさ。で、まああいつの実家近くの方が子供育てるのはいいやろって」
「そーなんや、ええなあ結婚。文香はどうなん?」
「ほんまやー。あたし? そらしたいけど、ええひとおらんし。今付き合ってんのもあんまりなーって感じ。でももう悠莉は、なあ」
「え? わたしはまあね」
類斗と目が合う。わたしはカクテルを飲んで目をそらす。
「ラーのギターやで? 羨ましいわ」
「しかもめちゃくちゃラブラブやしなあ」
「ふーん、よかったやん、大川」
はあ……なんで急に寂しそうな顔すんのよ類斗。ありえない、そんな顔見せないでよ。わたしがサラダに手を伸ばそうとすると、類斗が「入れたるわ」と言って、よそってくれる。優しくするなよーあほー類斗!
お腹いっぱいになって店を出る。
「どうする? カラオケでも行く?」
「すまん、俺帰るわ。嫁が(頭にツノが生えたジェスチャーをする)」
「あ、わたしもごめん、帰るわ」
「まじかよーじゃーなー」
わたしはひとり歩く類斗を追いかける。
「行かんでよかったん?」
「うん……類斗とおりたかったから」
「なんよそれ。俺は安心したよ? ゆりちゃんに良いひとできて」
「わたしは……嫌や」
「なにが?」
「類斗がおらん世界嫌やった」
「……」
「なんで引っ越したん、なんで言ってくれへんかったん。全然許されへん。どんな世界をわたしが生きてたと思う? ただの……ただの幼馴染やけどさ……ごめんごめん」
自分の口から幼馴染って出て、それを自分の耳で聞くと一気に冷静な気持ちになった。
「どうしたん? 寂しくさせてごめんって」
類斗はわたしの頭をポンポンっと優しく叩いた。この際だし、もう全部言うか。類斗は既婚者だし。戻らないし、なんにも。
「許さへん……ずっと会いたかってんやから」
「どうやったら許してくれんの?」
わたしは、ラブホテルを指差す。類斗もそっちを見た。




