第36話 結婚
それからは蒼くんの家に遊びに行ったり、蒼くんがわたしの家に来たりの交流も始まった。公認になったので出かけたりもしやすくなった。
だけど、明日で蒼くんは卒業してしまう。わたしは蒼くんと後悔ない高校生活を送れたのだろうか? でも間違えなく、あの日好きだと言ってよかった。
在校生として卒業式に出席した。卒業式の日は休みをもらったらしく、わたしたちは久しぶりにのんびり会えることになっている。式が終わり、校舎から出てきた蒼くんと手を繋いで最初に喋ったベンチに向かう。そして、ふたりで再現する。あの日のことを思い出しながら。ぎこちないふたりを演技して笑って、短いキスをした。これから、蒼くんと夕方まで過ごすことになっている。まだまだ時間はたっぷりある。
わたしたちは並んでベンチに座る。すると、蒼くんはリュックをごそごそさせた。出てきたのは小さな袋。
「もしかしてクッキー?」
「昨日頑張って作った」
あの日くれたクッキーと一緒のクマだった。だけど、それ以外にも袋の中になにか入っている。指輪だった。小さなピンキーリングだ。
「次は左の薬指にはめる指輪買うから、その一歩手前」
「ありがとう」
「じつは俺も同じの買ってん。だからオソロ」
「嬉しい」
「だからずっと一緒にいてほしい。またちゃんとプロポーズはするから待っててや」
そういえば一緒のものって持ってなかった。
「これはめてさ、プリクラ撮ろう」
「いいなあ」
ふたりでゆっくり歩いてショッピングセンターに向かう。そこの中にあるプリクラに入る。他にも学生がいた。同じ高校のひともいれば、違う制服のひとたちも。
ふたりでプリクラの機械に入る。そういえばプリクラも撮ったことなかったなーと思いながら写る。キスしたりハグしたり。
機械から出てきたプリクラをすぐに蒼くんは自分のケータイに貼り付けていた。わたしも真似して貼る。
〝ずーっと一緒〟
蒼くんの綺麗な字で描かれている。それから近くの店でうどんを食べて、またショッピングセンターをぶらぶらして、公園で遊んでからわたしの家の近所を歩いた。おかしいな、さっきまで明るかったのにもう日が沈みかけている。
「ゆりちゃん」
手を繋いで歩く。
「実は、明日から東京やねん」
「え」
「黙っててごめん」
「会社変わったやん、それで東京出やなあかんくなって。それに実は、学校も東京のところも受験しててん。黙っててほんまにごめん。ゆりちゃんを不安にさせたくなかったから」
「そんなん、早く言ってえや」
「でも俺の気持ちはずっとゆりちゃんの近くにあるし、好きな気持ちも一生変わらん。休みの日は絶対1番に会うし、だからその、ゆりちゃんが大学卒業したら結婚してほしい」
大学卒業? まだ受験もわたししてないし。何年後? ていうか明日から遠距離になるってこと? 色々なことが頭をよぎるのに、受け入れる以外に方法はない。
「ゆりちゃんが大学入る頃には仕事も軌道にのってると思うから、いっぱいエッチしよ?」
耳元でつぶやかれると、顔が火照る。
「ごめん、戻って支度するわ。毎日メールも電話もするから! 俺のこと忘れんといてや!」




