第31話 負けたくない
蒼くんからメールが届いていることに気づく。
《さっきはごめん、怖い思いさせた。嫌いにならんといてな? また明日会えるの楽しみにしてる。ほんまごめん》
泣いている絵文字がたくさんついていた。
《大丈夫、大好き》
《ありがとう。ギターがんばるわ》
それから少しメールをして、わたしは机に向かう。お母さんの声がしたので下に降りる。絶対に蒼くんのことバレないはずなのに、今日あんなにキスしちゃったからバレてるみたいに恥ずかしかった。
「元気ないなー。なんかあった?」
お母さんはそれだけ言うと興味なさそうに、味噌汁をすすった。
「大丈夫。おいしいわ、今日もごはん」
「小さい時からいっつもあんたは褒めてくれるわ。悠太郎とは大違い」
わたしは食べ終えた食器を洗い、少しテレビを見てから部屋に戻った。
次もまた、キスするのかな……? それ以上のことも? ドキドキする。笑う蒼くんも、ギターを弾く蒼くんも、強引な蒼くんも……。
だけど気になるのは美咲のこと。わたしはため息をつく。蒼くんからもらったCDをCDプレイヤーで再生する。ヘッドホンをつけると騒音が遮断される。
蒼くんを渡したくない。わたしだけのものにしたい。そのための証が欲しい。
わたしはお風呂に入る。鏡を見ると、胸の少し上が赤くなっている。蒼くんだ……と思うと顔が綻ぶ。大丈夫だ、真っ直ぐに蒼くんは思ってくれている。
どうか、神様、わたしたちを引き離さないでください。蒼くんとのセックスも怖がりません。だから、そばにいさせてください。
《蒼くん、練習お疲れ様。今度、蒼くんのお家に行きたいな》
《急にどうした? いいけど》
すぐに返事がきた。引き離したくない。もっと蒼くんとわたしだけの秘密が欲しい。今日会ったのに、どんどん記憶が薄らいでいって不安になる。美咲の言葉が頭を掠める。
「そうなん? まじ?! じゃあライバルやん!」
ライバルか……結婚してるわけじゃないしな。奪われたらどうしよう。課題にも手がつかない。わたしは蒼くんに電話をする。
「おーどうした?」
「蒼くん」
「母さんにも紹介したいし、ちょうどええわ。部屋綺麗にしとくなー」
「わたしのこと好き?」
「なに? 大好きに決まってるやん。どうしたん、可愛いな」
「石井美咲って子知ってる?」
「だれそれ? 2年の子?」
「うん」
「石井さんかあ……だれやろ。どうしたん?」
「今日美亜とモス行ったら偶然会って。ラーのファンやって言われて。非常階段から降りるの見たって」
「ああ、美咲?」
美咲? なんで呼び捨て?
「あいつ、中学一緒やねん。俺中学からバンドやっててさ、あいつの兄ちゃんも俺の1こ上なんやけどバンドやっててさ。それで知り合ったけど……」
「そうなんや」
わたしの知らない蒼くんを知ってるだなんて、ありえない。
「なに、あいつがどうしたん?」
「いや……なんでもない」




