第29話 始業式
美亜とわたしは一緒のクラスになれた。喜びを分かち合い、一緒にごはんを食べに行く約束をしてから、わたしは蒼くんが待つ場所に急ぐ。非常階段からギターの音が聞こえる。
蒼くんがいた。
「ゆりちゃーん」
「蒼くん」
ギターをケースにしまう。そしてすぐに横に並ぶ。手を握る、わたしから。
「おお、なに? 積極的」
蒼くんは驚いたようだ。わたしは蒼くんの肩に頭を乗せる。
「ちょっと……ひっつきすぎ。やばいってば」
「ふふ」
「嬉しすぎるけどさ」
「美亜と一緒のクラスになれてんー」
「よかったやん。だからテンション高いん? ってほんまにちょっと、ゆりちゃん、あかんって」
「なにが?」
「近いからさ……もう……」
「……キスしたい……蒼くんと……」
「ええ? ほんまに言ってる?」
「うん……蒼くんがいい」
「かーそんなセリフ絶対俺以外に言うなよ?」
抱きしめられる。きつく抱きしめられて、それから少し距離ができて顔が近づいてくる。わたしはぎゅっと蒼くんの手を握る。やっぱ怖いかも。
だけど、蒼くんの唇はわたしの唇に触れなくて、わたしの肩に落ちた。
「かっこわるいなー俺。あかん、ライブより緊張する」
わたしは蒼くんの顔を両手で持ち上げて挟み込む。そして蒼くんの綺麗な目を見つめながら、そっとわたしは目を閉じて蒼くんめがけて唇を重ねる。
驚いた顔の蒼くんを見つめる。次は蒼くんからわたしの唇に唇を重ねる。優しすぎて、ため息がでそうになる。もっと強引に、わたしの気持ちに踏み込んでめちゃくちゃにしてくれたらいいのに。
それからキスが止まらなくなって、両手を重ねながら、いつまでも続けた。蒼くんの舌がわたしの口に入ってくる。うう、だめ、どうしたらいいんだろう。
「んん……だめ……」
それと同時に蒼くんの右手が、わたしの胸元に伸びる。それから唇が首元に。そしてまた唇に。強引で力強くて、わたしは力が入らなくなる。
眼鏡を外した蒼くんにドキドキする。学校なのに、どうするの? ブラウスのボタンを外されていく。
「ごめん……無理……ゆりちゃんが可愛すぎてとまらん……」
そしてわたしの胸辺りに唇を押し付ける。蒼くんの小さな頭がわたしの首元にある。
「蒼くん……」
恥ずかしすぎて、溶けそうになる。非常階段のドアが開く音がして足音がするのに、蒼くんは止めてくれない。
「蒼くん、誰か来ちゃうよ」
わたしは口元を手で押さえながら呟く。
「いいの、ゆりは俺んだから」
んー……。ふにゃふにゃになったみたいに、力が入らない。蒼くんはゆっくりと顔を離して、わたしのブラウスのボタンをつけてくれた。
「怖かった?」
急にいつもの優しい顔になる。眼鏡をかけた蒼くん。わたしは迷いながら小さく首を縦に振った。
「男なんか、こんなことしか考えてないから。気をつけてや、俺以外には」
手を繋いで階段を降りる。女子生徒たちにすれ違う。蒼くんは見向きもしない。




