第27話 春休み
「そうなん?! おめでとう!」
春休み最後の日に会った美亜は喜んでくれた。
「ありがとう。そうそう、都馬くんについてさ、蒼くんに聞いたんやけど、なんか女たらしらしくってやめといた方がいいって言ってたよ?」
「そんなん関係ないよ。もうライブの日からわたしの頭の中は都馬《《さま》》だけよ」
もうだめだ。完全にわたしの言葉が入らなくなっている。明日は始業式だ。わたしは2年に、蒼くんは3年になってしまう。受験やバイト、音楽活動に忙しくなるだろうな、あんまり邪魔できないなと改めて思った。
わたしと蒼くんは毎日少しだけでも会っている。蒼くんの家は高校の近くで、わたしは高校のある最寄駅から自宅のある最寄駅までは電車で30分ほどある。それなのに蒼くんはいつもわたしの家の最寄り駅までわざわざ来てくれるのだ。1時間ぐらい手を繋ぎながらお喋りをすることもあるし、バイトやバンド活動がある時は30分未満の時もある。
「じゃあねー」
「また明日、クラス発表ドキドキやな」
わたしたちは一応英語がメインになっているクラスを選択しているので一緒になれる確率は高かったけど、あとは運に任せるしかなかった。2年は修学旅行があるし、どうなるんだろうって思った。
自宅最寄駅に戻り、蒼くんを待つ。今日はこの後特に予定はないと言っていたが、忙しそうな蒼くんには少しでも早く家に帰ってゆっくり休んでもらいたかった。
ギターをさげた蒼くんが笑顔で手を振り、わたしのもとにやってくる。
「ゆりちゃん、待ったー?」
「全然、さっき来たところ」
昨日も会ったのに、全然会えてないみたいにぎゅーっと力強く手を握られた。
「会いたかったー」
「スタジオどうやった?」
「いやー楽しかったわ、とりあえず新しいアルバムもいい感じ」
わたしたちは駅近くの公園に移動する。この時間帯には子供もおらず、小さな遊具だけがそこに静かに鎮座している。わたしたちはベンチに並んで座る。蒼くんは背負っていたギターをおろして、柵に立てかける。
「実はさーゆりちゃん」
「どうしたん?」
「新しいアルバム作ってるって言ってるやん?」
「うん」
「黙っておいて驚かせようと思ってたんやけどさ、実はラーがインディーズなんやけどデビューすることになってん」
「え、すごいやん」
「俺らもびっくりしたで。ゆりちゃんが来てくれたライブあるやん、あの時に見に来てくれてたひとに声かけられてさ。ぜひって。ほんまはすぐにでも言いたかったんやけど、詐欺かもなーとかメンバーと言ってたからさ。でも色々あれよあれよで進んでて、完成は一応夏前やねんけど、それからライブをして高校生バンドとして売り出してくれるみたい」
「よかったやん!」
「だからさー俺迷ってたんやけど、音楽続けながら、学校も行ってきちんと音楽勉強しようと思ってて」
「応援してる!! 絶対にラーはいいよ!」
「きちんとさ、決まってから言えてよかった。俺は全力でゆりちゃんのためにこれからもギター弾くし曲も作るから」
「嬉しい、ありがとう」
それから沈黙が流れる。全部、上手くいきますように。蒼くんの音楽が届きますように。




