第2話 既婚者
向かい合わせに座り、互いになにか言いたげなのに全く言葉にならなかった。いい具合で2軒目に移ろうという話になり、わたしたちは地元の駅に戻った。
類斗がいなくなった理由は、引越しだった。しかも、違う県に。中学時代に交換ノートもしていたわたしたちには数えきれないぐらいのエピソードがあった。だけど、どれも類斗への思いがあったから、楽しかったのかもしれない。ちらりと類斗を盗み見しながらわたしは薄いカクテルを啜った。
「もう何歳やっけ?」
奏也はいつも容赦なく、そしてなんでもずけずけと質問する。誰の年齢のことだろうか。
「この間、1歳になった」
「そうなんや、俺の兄貴の子供はもう3歳やわ」
と、類斗は笑顔で言った。覚悟はしていたけど、高校で会わなくなってから。だけど、まだわたしたちは20歳。早すぎるんじゃない? まあ、類斗も奏也も高校卒業して働いてはいるけれど。もちろん、浮気でもなんでもない。類斗は普通に結婚して家庭を築いているだけ。わたしに気持ちなんか一切ない。
それなのに、この気持ちはなに? 抜け駆けしたから? わからない。とにかくもう飲むしかない。わたしは飲めないはずなのに、タブレットでさらにカクテルを注文した。だけど、飲んでも飲んでも気持ちはおさまらず、逆に沈んでいった。
「おめでとう! やるなあ!」
「おめでとう!」
よくもそんなに言葉が出るもんだなあ、と思いながらもなにも言わない方が怪しまれると思ってわたしも「おめでとう」とたぶん笑顔で言った。
類斗はわたしとの約束はとうの昔に忘れてしまったのだろう。ていうか、あの約束なんてなかったのかも?
「類斗、俺のおごりや! どんどん飲んで食え!」
奏也はハイボール片手に陽気な声を出す。
「まじかサンキュー」
と言い、類斗はタブレットを手に飲み物を注文した。
くっそー、なんでこんな再会になってしまったんだろう。たいていのドラマはお互い好きなままフリーで再会して、それから甘い時間をはずなのに。ありえない。まあ、わたしも彼氏いるけど。
わたしはトイレに立った。そして用を足して出てくると、前には類斗が立っていた。なんでやねん、また身長伸びてるやん、と思うとドキドキが加速する。
「ゆりちゃん」
ふたりきりになると呼んでくれた、わたしの名前。なんで今呼ぶんよ、どういう意味なん、なんの意味もないんやろうけど、って思いながらわたしは手を洗った。
トイレの中で、類斗はどんな表情してんだろ?




