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大好きな幼馴染は既婚者子持ち  作者: hitorigasuki


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第17話 涙

 九月に入って、それからクリスマスになっても類斗はやって来なかった。


「実はさー類斗から口止めされてたから言わんかったんやけど、引越してんあいつ」


 奏也の部屋でシャンメリーを開けている時だった。部活で忙しいとばかり思っていたのに。


「え? なんで?」


 文香が先に喋った。


「ようわからんねんけど、親が離婚したかなんかで。おばちゃんの実家の近くに引っ越したみたいやで」

「そうなん? どこ?」

「F県やったかな?」


 F県となると、ここからは飛行機で行かないといけない。


「それが実は夏休みの終わりぐらい。突然決まったみたいやで。類斗もめちゃくちゃ落ち込んでたわ。寂しくなるからお別れも言いたくないし、普通に別れたいからって。夏休みに俺の家泊まった日に聞いてさ、びっくりしたわ」


 心がえぐりとられたみたいに、ぐわって倒れそうになった。


 教えてくれてもよかったのに。確かに聞いたところで引越しはとめられないだろうけどさ、それでもなにか変わったかもしれないのに。ありえない。類斗! もう嫌い!


「俺からのクリスマスプレゼントや、類斗のこと」

「よく黙ってたなあ」

「ほんまそれ」


 3人で唐揚げとか食べて、テレビ見ながらばかみたいに笑っているのに、笑おうとしないと笑えないわたしがいた。


 不思議だ、引越ししただけなのに永遠に会えないみたいに感じてしまう。


 ぷつりと切れた、もう会えないんだって。


 類斗以外を好きになれるチャンスがきたんだ。食べてるはずなのに、唐揚げもシャンメリーも全然味がしなくて、わたしはずっと上の空だった。


 それから、文香は好きな先輩に会いに行くとかなんとかでいなくなって、日向くんたちが来て、ゲームが始まって、わたしは帰ることにした。


 珍しく、外まで奏也が出て来てくれた。


「気をつけて」

「ありがとう」

「類斗のこと黙っててごめんなー」

「いや、類斗から言われたんやったら、奏は悪くないよ」

「まあそうやけど、別れも言わんなんかありえへんやろ? 俺も会ったのは大川たちと一緒の日が最後やで」

「そうなん?」

「とにかく、黙っといて。大川をよろしくって。何回も言ってた」

「じゃあ、バイバイ、またね」

「おう、じゃあ」


 ああ、ペダルってどうやってこぐんだっけ。と思ってたら、両目から大量の涙が出てきた。本当にあほみたいだ。類斗に費やした時間も気持ちも。あほみたい。泣き終わったら、類斗のこと忘れようって思ったのに、泣いたらさらに類斗との思い出が出てきて「ゆりちゃん」って言う声が聞こえる気がした。


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