第16話 夏休み
高校生になっても、月1回は仲良しグループで集まった。郁ちゃんの姿はなかったけど、まあ、どうでもよかった。類斗は来たり来なかったり。サッカーが忙しいみたいだ。わたしは特に部活もしていなくて、だから高校の友達や文香と遊んでばかりいた。
夏休みに入ってからも類斗は遠征や練習ばかりでなかなか会えなかった。奏也はけがをして部活を休んでゲームばかりしているようだ。わたしたちは3人で時間を持て余していた。そんな時に、ようやく類斗も遊びに来た。日に焼けた真っ黒な類斗。身長がぐんと伸びて、わたしは見上げて喋るようになっていた。
「おー! 類斗ひさしぶり!」
奏也はゲームしていた手を止める。文香も雑誌から顔をあげる。
「よ、大川たちもおったんや。いつものメンツは安心するわー」
類斗は持っていたジュースやお菓子をテーブルに広げる。
「試合どうやったん?」
「ああ、勝ったよ。1ー0。まじ接戦やってさ、無理かもって思ったけど守り抜いたで」
「お前すごいよな、1年で試合出て」
「奏もこれからや。出来る筋トレしとけよ。またボール蹴ろや」
変わらない会話に安心する。それから2人がゲームするのを見て、たまに高校生活の話を互いにして、それから暗くなってきたのでわたしと文香は奏也の家を出た。類斗は奏也の家に泊まる約束をしているみたいだ。
「類斗来れてよかったねー」
「ほんまや、めちゃ黒くなってたなあ」
「練習がんばってるんやな」
それからちょっと止まって、文香の恋バナを聞いて別れた。
会いたかった類斗に会ったのに、身長も伸びて少し大人っぽくなった類斗にわたしは驚く気持ちしかなかった。ていうか目さえ合わせられなかった。サッカーがんばってるんだし、なおのこと邪魔できない気がした。
思い出がわたしの思いを支えてくれている。ジェットコースターのことや、カラオケ、それに送ってくれた帰り道。
またたまにこんな風に会えたらいいかーと呑気に思いながら、わたしは家のドアを開けた。
「ただいま」
類斗に会えただけなのに。今更実感が出てきて元気が出る。いやでも、高校でモテるんだろうな、って急にネガティブになる。だめでも告っておいたらよかったかな? いや、そんなんだめになって会えなくなるし気まずくなるだけ、2つの考えが同時に頭に現れては消えた。
「今日久しぶりに類斗に会ったよ」
「へー元気してた? サッカーがんばってるんやろ?」
「わたしより大きくなってた」
「ほんま? あんたより小さかったのになあ。すごいなあ」
お母さんが作ってくれていた、煮物に手を伸ばす。
「ていうかさ、あんたと類ちゃん絶対にくっつくと思ってたんやけどなー」
「え? ありえへんし」
「ほんまに? 仲良かったんやでー幼稚園のころから。ふたりで手つないでずっと一緒におったのに。類ちゃんのお母さんともよく言っててん」
「なに言ってんの。ただの幼馴染やし」
「ほんまに〜? 類斗ちゃんは違うかもよ」
「ちゃうよ、彼女おるもん」
「そうなん?」
「うん、今はどうか知らんけど」
変に感が鋭いお母さん。わたしは急いでごはんを食べて、それから宿題をしてお風呂に入った。変なの、また類斗でいっぱいだ。いつまで思い続けたらいいんだろう。このままだと、わたしはだれかと付き合うこともないのかな?




