第15話 ジェットコースターの約束
類斗は自転車をこぐ足を止める。住宅街でわたしたちは自転車の動きを止める。
「教えてえや、ずるいやん」
聞こえなかったって、言うべきだろうか。
「いや、実はさ……」
あかん、頭真っ白や。まさかこんなこと聞かれると思わなかったし、ていうかちょっと人通り多いし。
「俺ら、ずっと幼馴染やろ? 教えてえや」
類斗らしくない真剣な表情が、暗い夜に溶ける。美しすぎる。触れられない距離にいる、芸術作品みたいだ。類斗とはこのまま、このままの関係が一番ぴったりなのだ。
「実は、わたし叫びすぎてて、類斗の声聞こえてなかったよ」
「え? まじ? たしかにゆりちゃん最初っからずーっと叫んでたもんな」
「そうそう、ごめんね、約束守れなくて」
「なんやそれやったら、降りた時に言ってえや」
「慌ててたし、ごめん」
「俺だけあほやん。ずっとドキドキしてたのに。ゆりちゃんいっつもずるいわ」
ここで告白したら、類斗は困るだろうか。もうこんな風に話してくれなくなるのかもしれない。類斗、類斗、わたしはあなたで頭がいっぱいで夜も眠れません。類斗は郁ちゃんでいっぱいなの? じゃあ、なんでわたしの手を握ってくれるの?
サッカーばかは、手の感覚疎いとか? そんなわけないか。
「ゆりちゃん、高校行っても遊ぼうな」
「もちろん。あほみたいに、かくれんぼしようや」
「ええなあ。ゆりちゃんがおらん人生なんか考えられへんわ」
「そんなんわたしもやで?」
再び自転車をこぎ、あっという間にわたしの家の前についた。
「あ、お母さん呼んでくるな」
「ええよ、おばちゃん忙しいやろ」
「なんでや、わざわざ来てくれたのに」
「会わなくなっても、俺絶対毎日ゆりちゃんのこと考えてるわ」
「え」
「ゆりちゃんの天然炸裂エピソードに決まってるやん」
「なんよそれ。類斗のあほ」
「ありえへん話ありすぎて、思い出しただけで元気出るわ」
そんなんわたしもやん。離れたくないな、このまま、ずっと今が続いたらいいのに。
「サッカーがんばりや」
「俺よりうまいやつおらんから安心して」
「そうやろな」
「また試合見に来てや。あ、今日のゆりちゃんのゴールは完璧やった。俺が仕込んだだけあるわ」
「せやろ。はは」
「じゃあな」
「類斗ありがとう」
類斗が地面に足をつけて、自転車をまたいだまま近づいてくる。そしてわたしの頭にポンっと手を置く。
「綺麗な髪の毛、ずっと触りたかっただけ。ええやろ、俺ゆりちゃんの世話がんばってんから。じゃ」
「……まあな、バイバイ」
微笑んで立ち去る類斗を見送りながら、わたしは倒れそうだった。ずっとわたしの髪の毛なんかを触りたかったって……? 類斗に触れられた頭に自分の手を重ねる。好きを増やさんといてほしいのにー!! あほ類斗!




