第11話 受験勉強
わたしは寝ぼけている文香と一緒に部屋に戻った。部屋のベッドでは、莱たちが眠っていた。部屋に入って思い出す。わっちゃんと絵美のキスシーン。そして、類斗の驚いた顔に、郁ちゃんとのこと。
色々とあった修学旅行だな、と思いながらわたしもベッドに潜る。眠れないだろうけど。類斗はただの心配性だ。郁ちゃんのことだけ心配したらいいのに。腹がたつ。わたしに優しくしないでほしい。顔も見たくない。それなのに、掴まれた手首の感覚が痛いほど残っている。
ドアを叩かれる音で起きる。絵美たちはすでに起きて化粧をしていた。わたしも飛び起きて、文香と準備を始める。シャワーを順番に浴びて髪を急いで乾かした。
昨日と一緒のレストランに行き、モーニングを食べてそれから帰りのバスに乗り込んだ。修学旅行は最悪だった。唯一、絵美からの嬉い報告だけが救いだった。バスが発車すると、わたしと文香はすぐに眠りについた。夢の中の類斗もとびきり優しかった。一緒に眠ったベッドのにおいやぬくもりを思い出す。嫌いになろうと思えば思うほど、類斗で溢れていく。
修学旅行が終わると、本格的に受験勉強が加速した。わたしはテニス部を引退。類斗たちもサッカー部を引退したけど、二人は地元のチームにも入っているため練習に勉強と忙しそうだった。わたしたちは昼休憩中一緒にお弁当を食べたり、ゲームをしたり鬼ごっこをして楽しんだ。ずっとこのままの学生生活を続けたいのにな、と思った。
絵美とわっちゃんは公認カップルになっていた。だけど二人を見ると思い出す修学旅行の夜のこと。それなのに色々な思いはさらに加速する。
類斗には聞けない、知っているだろう奏也にも。郁ちゃんとの関係を。ふたりがたまに話しているのを見かけるけど、わたしはすぐに意識の外に追いやる。郁ちゃんよりも類斗に近い自信だけあった。だけど、付き合ったことないわたしにしてみれば、付き合うとはどういう意味があるのかわからなかったけど。それでもずっと幼馴染という自信だけがあった。
手を繋いだのは、中学になってからは修学旅行だけ。だけど、幼稚園でも小学校でもあった。まあ、恋人には程遠い幼いものだったけど。高校はバラバラだ、四人とも。別に普通のことなのに。だけど想像できない、類斗と離れるなんて。類斗はどうも思ってないんだろうなー。郁ちゃんとこれからデートするのかなーなんて思いながら、わたしは昼休憩時に類斗のトランプを引いた。ババだった。類斗が笑う。くしゃっとした笑顔で。眩しくて、わたしは泣きそうになった。




