第10話 ベッドの中で
ありえない、ありえない、ありえる。類斗の手の感覚が蘇る。わたしは仕方なく、505号室に戻った。文香たちはまだゲームを続けている。
「ああ、またお菓子忘れちゃった」
と、あほみたいな嘘ついてやり過ごす。しばらくすると類斗が戻って来た。わたしと目が合ったはずなのに、すぐにそらされた。ありえん。
「郁ちゃんたちなんやったんー?」
「いやーえっと……」
「先生見回り来るみたいやで! 隠れろ!」
「おーい、寝る時間やぞー」
外から先生の声がする。ドアが開く。わたしは布団にもぐる。類斗は慌てて電気を消し、わたしがもぐった布団に入って顔だけ出す。奏也と文香はいつの間にか隣のベッドに入っていた。
「おやすみー明日は七時からごはんやでー遅れるなよ」
と言って、先生は部屋を出て行った。近い。類斗が。暖かい。やばい手も体も近い。ぎゅーって抱きつきたくなる。
郁ちゃんと手繋いでたな。無事付き合ったんだな。そしたら、こんな風に近づいてたら郁ちゃんに怒られるし、なんなら類斗嫌なんじゃない? って思ってたけど、ずるいわたしは動けなかった。とりあえず、類斗とは逆の方に顔を出す。少し離れてるのに、ばかみたいに類斗の体温を感じる。全身で類斗が好きだと言っているみたいで気づかれそうだし、心臓の音がうるさいしでもう全然眠れそうになかった。
類斗は寝てるのかな、起きてるのかな。わかんない。知らない。どうでもいい。でも大好き。悔しい。なんで郁ちゃんなんだろ。可愛いもんな。大きな目。優しくて思いやりのある性格。まさしく類斗。お似合い。なんかこれから類斗と居づらくなるな、とか考えてたら、ほんとにいつの間にか眠ってて、わたしは文香を起こして慌てて部屋に戻ろうと思った。
ああ、そうそう。わたしは類斗と同じベッドで寝ていた。なんかあったかいもんなって思ってると、すぐ隣に綺麗な顔した類斗がいた。わたしはゆっくりと寝返りをうつ。近くで寝顔を見たのは初めてだ。心の中で、類斗大好きって叫んだ。困らせたくないから、言えないけど。ああ、郁ちゃんの顔見たくないな、ていうか離れたくないな。ちょっとだけ触りたいな。だめだよな。友達以上にはなれないな。
だけどその時うっすらと、類斗の目が開いた。
「ゆりちゃん、足大丈夫?」
小さな声で類斗が言う。
足? ああ、やっぱりさっきわたしがいたのバレてたんだ。ちょっと膝打っただけなのに。
「え……大丈夫」
郁ちゃんとのこと思い出して、そっけなくしてしまう。近づきたいのに、こんなに近くにいるのに類斗が遠い。彼女出来たよって報告してほしいのに。でも聞きたくない。
「戻るね」
わたしが布団から出ようとすると、わたしの手首を類斗は掴んだ。
「どこぶつけた?」
わたしの足元に手を伸ばす。恥ずかしさに、体が痺れる。
「大丈夫やってば、戻るね」
手首が熱っぽい。落ち着いていたはずの心臓の音がまた高鳴る。あほみたいだ、類斗に振り回されすぎてる。




