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クッキーとヤキモチ

焼けるのを待ちながら考える。

とりあえず~、必要なのは~?


こっちではパンに種類ないから「パン一つ」って店員さんに言うだけだからなぁ~

外に並んで貰ってぇ出窓から一袋売りかな?

…。ん?


「売り方とかをアドバイスしてくれる人が必要ですぅ~」

焼いたクッキーを抱えてハイラントさんに突撃~!

「あー、そうだよな。お姫様の国とじゃ違い過ぎるもんな。そういうのは、ザールのが知ってっからザールに聞いてくれ。今呼んでる。」

ガリガリとクッキーをかじりつつ、書類を捌きながらハイラントさんが答えてくれる。

「前の『だがし』より『くっきー』のが食べやすいな。これなら腹減ってる時にも助かるし。しかし、香ばしい匂いだな、焼いてる匂いで腹減るだろ、コレ。」

「うん、なんか、ご近所さんに、匂いのせいで迷惑かけてるみたいでぇ」

「ハハッ、毎日美味そうな匂いだけ嗅いで、食えないんじゃなー」

「う~。お店する前には左右と前のお家には迷惑かけるから挨拶行くつもりなんだけどぉ」

「ま、ジーヴルも休ませるから。あいつ仕事にならねーだろし。しっかし、あいつがあんな心配性だとはな」

「ボクが頼りないのもあるんだろうけどねぇ」

「…あー。お姫様細いし、ふわふわしてるからなぁ…ちょい!」

ハイラントさんに手招きされて近寄ると手首を掴まれて抱き込まれた。膝の上座ってるけどいいのかなぁ?

「…いくら俺相手でも、すんなりこれだもんなー」

呆れ顔でそう言われても

「ハイラントさんだからしないけど、変な人なら魔法で攻撃はするよ~?」

「お姫様の魔法って強いのか?」

「ん~?強いって言うより、便利?」

「便利?」

「例えばね~」

ハイラントさんのおでこにコッツンする。

「『以心伝心~ん!』」

ボクの記憶の見せたい物をハイラントさんに伝える。


コンコン!ガチャ!

「ユーマさんが用事だと…か…」ドサッ!


ザールさんの声がして振り向いたらドアには目を見開いたザールさんと無表情なネイがいた。

「…」

今の状況…

ハイラントさんの膝の上に座ってて、顔をすごく近づけてる。

あっ、これ、誤解されるパターン??

「ぁ「お姫様!今、今見たヤツもっかい見せてくれ!」ふぇっ!?」

釈明しようと口開く前にハイラントさんが口開いちゃったよ

「今のって」

「馬いねーのに動いてる馬車だ!」

「ああ、車かぁ。ちょっと待ってねぇ、他にも…いくよ~?」

ネイ達にも見える様におでこをコッツンする。顎はかなり引いてますぅ!

「…スゲーなぁ、こんなにいろんな形や大きさがあるのか」

「他にも荷物を運ぶ為のトラック、こんなのね?とか用途によって変わるよ~」

「馬車にも客車と荷車があるからな。しかし、どうやって動いてんだ?」

そこでおでこを離して目を開く。

ハイラントさんの目が開いてから機械について説明する。馬車はあるんだから、部品自体は作る下地が、あるはずなんだよね。

「ザール!」

「!は、はい?」

「お前も『クルマ』見せてもらえ。コレが出来りゃウチの国は栄える。お前の意見を聞かせろ。お前が必要だ!」

「っ!は、はい…。ユーマさん、よろしいですか?」


「うん、ザールさん、しゃがんで~?」 


腰を屈めてくれたザールにもおでこをコッツンして車を見せる。

「なんですか!これ!馬がいないのに動く馬車?しかも、なんて豊富な形と色!貴族達ならこだわっていくらでも出しますね!」


「ああ。しかも、馬の代わりの動力はいるらしいが、それを魔力で賄えりゃ遠出の時の負担も減る。馬にかかる費用を他に回せる。」


「魔力で…ですか。負担が大きそうですが?」


「それを効率良く出来るよーにしたいんだよ!それが出来りゃ一気に国を豊かに出来る」


「…道は長そうですが」


「俺らはまだ若いし、お姫様もいんだから希望はあるだろ」


「まあ、やり甲斐はありますね」


二人が話し合ってる間にネイのフォローに走る。

感情抜け落ちてて、すんごい怖いんだもん!

「ネイ?」

「…」

返事がない…。

見る限り怒ってるとかでもない。

むしろ、これは呆然自失?

「ネイぃ」

ネイの頬に手を添えてこっち向かす。

「…ぁ」

ようやく気が付いた。

「ネイ?ボクが好きなのはネイだけだから、信じてね?」

「っ!」

そのまま抱きしめられる。

苦しいけど、ちょっと嬉しい。かな

「ユウ。俺っ」

「信じてもらえないのは悲しいけど、ヤキモチやいて貰えるのは、ちょっと嬉しいよぉ?」

「ヤキ、モチ?」

「嫉妬の事」

「!…いいのか?」

「え?ボクだって妬くし?」

「えっ!?」

「…なんで、そんな驚くの~!」

「いや、だって」

「ボクだって、ネイの事、結婚したいくらい大好き!なんだよ~?」

「っ!…そう、か…」

「はい、これ。ネイの分」

「ん?」

「クッキーだよぉ。ネイのは特別だからね!」

「あ、ああ。ありがとう」


「ザールさんも、クッキーどうぞ!それでねぇ、お店について相談したいのぉー!」



「ユウ、この形はなんだ?あいつらのと違う」

とりあえずお茶でも飲んで落ち着こう!と椅子に座ってお茶飲みながらクッキー食べてるんだけど、うん、ネイのだけはハート型。

「ハートって言って、『好き』の形なのぉ、えへへ」

「!…そう、なのか」

「ボクの『好き』美味しい?」

「っ!あ、ああ。うまい」

真っ赤になって黙々とクッキーかじってるネイ可愛い!

「ハッ…仲睦まじくて結構な事で。」

「ね、ねぇ?ハイラント、あの人、人格。変わってません?」

「お姫様娶ってから、スゲー変わってるぞ。デレデレだし心配性だし独占欲つえーしな。恋は人を変えるんだなー」

「…。ンンッ!あの!ユーマさん?では、この形にはどんな意味が?」

「ザールさん達のは意味としては『願い』かな?」

「願い、ですか」

「他にもあんのか?」

「ん~?あと出来そーなのはぁ、四つ葉のクローバーの『幸運』と鳥の『自由』とかかなぁ?」

アイシングが出来ればもっと可愛いんだけど、色付けがなぁ…

「形の意味教えりゃ、女が更に食いつきそーだな」

「あー、好きだよねぇ。ピンクや赤のハートは好意、青は脈なしとかもあるよ~。ボクの国じゃ、バレンタインって言って年に一回、好きな人にハート型のチョコってお菓子を贈って愛を伝える日があるんだぁ」

「告白の日、ですか」

「まあ、恋人以外にも、義理チョコって友達って意味での好きのプレゼントもあるよぉ?その日は基本女の子側なんだぁ。

貰った男の人は一月後にお返しするんだけどぉ。友達ならお菓子とかなんだけど、恋人なら高い贈り物とかねだられたりするから、お財布大変なんだよぉ」

「ウチの国では出来なさそーだな」

「本来はぁ、恋人が愛を誓う日?とからしいよ?花とかの贈り物だったかな?」

「へぇ?それなら出来そうだな!」

「なら、ジーヴルとユーマさんの結婚した日を『愛の日』とでもして祝いますか?」

「お、それいーじゃねーか!」

「えぇっ!やだやだ!恥ずかしぃー!」


また脱線しちゃったよお、ハア。

「んで!お店するとして、何をどーしたらいーですかぁ!?」

「とりあえず、売り物は何があるんだよ?」

「パンわぁ、一人用の丸パンみたいな『ロールパン』と結婚式に使う干しぶどうの入った『レーズンパン』の二つかなぁ?

後、クッキーとキャラメル、子ども向けの駄菓子クレープ!」

「一人じゃ辛くないか?それ」

「作るのはだいじょ~ぶ!基本作り置きだし。パンは数量限定で朝から売り切れるまででしょー?クッキーとキャラメルはある分だけだし。駄菓子クレープは2時から4時の子ども限定だから。でも、並んで貰ったり用意したりお会計したりが1人じゃ辛いかなぁって」

「あー、確かに」

「人も殺到するでしょうしね」

「1人が買える数とかも決めなきゃあ、買い占められちゃいそうだしぃ、騒がれたら周りに迷惑かけちゃうしぃ~、弱っちいボク一人じゃ、抑止力にはならないと思うんだぁ」

「ジーヴルをずっと貼り付けとくってもなぁ?」

「有事には動いて貰いますし、護衛と店員を雇うべきですね」

「ならウチから出そうぜ?ジーヴルもそれなら文句ねーだろ?」

「ああ」

「お給料ってどんくらい?」

「報酬はパンでいー」

「えっ?」

「他では手に入らない物が手に入れられんだから文句は言わねーよ」

「そ、そう、かなぁ?」

「で、パンは大きさはどんくらいだ?」

「ふぇ?んとボクの握り拳くらいだよぉ?」

「なら『ろーるぱん』と『れーずんぱん』は一袋五個入りで銅貨十枚な。

きゃらめるとクッキーも五粒入り銅貨十枚。」

「…ロールパンやクッキーが一個が200円?こ、この大きさでいいのかなぁ…」

「砂糖は高いんだから菓子は高くしろ!他の商売人が困るだろ!」

「あ!そっか…うん、分かったぁ」

ボクの罪悪感より経済のが大事だよね ぇ


お店の事に夢中で、結婚式というかお披露目の事すっぽ抜けてたユーマですぅ。

熱中するものがあると時間の流れが早いよねぇ。


「お姫様!結婚式で使うパン、どんなんにするんだ?」

出窓からハイラントさんがひょっこり顔を出してそう言われて思いだした。

だ、だいじょぶ!まだ、間に合う!

「えっと、ね?ヒミツ☆」

「そうかそうか。楽しみにしてるぜ!じゃあな!」


ウェディングだし、シューじゃないけどクロカンブッシュみたいに積み上げようかなぁ?小さいのいっぱいなら分けやすいしね!

バター多めにしてしっかりしたパン生地にして何もなしとレーズン入り!

「そうと決まれば焼かなきゃ!」

たくさんの人が食べれるようにたくさん用意したいね!


えっとぉ、台になるパンを焼いて~いろんな大きさの丸パンをくっ付けて…ウェディングだし白で良いからアイシング出来るかな?試してみよ。ダメならカラメル作ろう!パンは後は組み立てるだけ!の状態で待機中。残念ながら、アイシングは上手くいかなかったのでぇ、接着はカラメルですぅ。その代わり白いお花飾るんだぁい!


服はあのアオザイみたいなのでいーし、ボクが用意するのはこれ位。

後はハイラントさん達任せ。国の儀式は分からないからね。張り切って用意してくれてるし、お任せだぁい!


「そういえば、ネイは何着るの?」

結婚するのを決めてから、ネイの方のベットで寝てるから会話する機会が夕食中とベットに定着してきた。

「一応式典用の服があるからそれだな」

「へぇ~、楽しみぃ」

かっちりした服見た事ないよなぁ

「…ユウ」

「なぁに~?」

「本当に、良いのか?」

この通り。ネイの方がマリッジブルーなんだよねぇ。

「…ボクはねぇ?ネイと一緒に居たいの。これからもずっと、ネイにご飯作って二人で食べたいの。ネイは?」

顔を両手で包んで固定して目を合わしてそう告げると、泳いでた視線が合う。

「俺も、ユウと居たい」

「だから結婚するんでしょぉ~?」

「ああ」

「んもう、しっかりしてよぉ旦那様なんだからぁ」

「っ!だ、だんな?」

「そーだよー?もし養子もらうならパパだからね?どっしり構えてよ?」

「…あ、ああ」

「もう、ネイったら意外と可愛いんだから」

「か、可愛いくないだろ!?」

「可愛いよぅ!あ~もう!だぁい好きぃ」

ぎゅう~!って抱きついたら抱きしめ返してくれる。

うふふ、幸せだなあ。


結婚式当日。


朝一でお城にパンを運び込んで飾り付け。

クッキーのハートや花を添えられた大小合わせて200個のパンの山!

うん!圧巻ですっ☆

切るのは馴染みがないから、みんなの前で食べさせ合いっこする事にしたのぉ、んで、「幸せのお裾分け~」ってみんなにも振舞うんだぁ


「うわっ!すげーな!」

「あ、ハイラントさん、おはよ~!でしょでしょ!?頑張ったのぉ~!」

「おお!すげーわ。綺麗だし、こりゃこれから流行るな。貴族の娘とかが真似したくて煩くなるぞ」

「って言っても、パン積んだだけだよぅ?」

「パン自体もそうだし、積み方もだし、この引っ付けてんのも珍しいんだよ!」

「あっ、そっかぁ!…これの受注で商売出来るかな」

「出来るな。確実に。天使が作る祝いのパンなんて幸せになれそーじゃねーか」

「…ハイラントさんまで天使とか言わないでよぅ」

「いや、親父がお姫様の事、天使天使うるさいから貴族にはお姫様は天使だって浸透してきてるぞ。大体、ジーヴル自体が神の遣いだからな。ま、神の遣いと天使ならお似合いだしな。」

「…詐称にもほどがあるよぅ」

「いやいや、お姫様空から落ちて来たんだろ?普通天使だと思うだろ」

「え?」

「や、普通の人間が空から落ちて来る訳ないだろ。しかも無傷。『神の遣い、夜を司る者の元に羽の様に軽やかに舞い落ちて、抱き留められると同時に見初められ結婚!』なんて、これから先、おとぎ話並みに語られるぞ」

「ぃやぁ~やめてぇ、恥ずかしぃ!」

「ハイラント、ユウをからかうな」

「お、旦那登場」

振り向いた先には、真っ黒な生地に銀の装飾がされた軍服みたいな服を着たネイがいた。

「良かったな、ジーヴル。嫁さんメロメロだぞ」

「は?」

はい。カッコよすぎて目が離せません。いつもの怠い感じが、今はセクシーですぅ、ドキドキしちゃう~

「ユウ?」

「ネイ…カッコいぃ~」

「っ!そ、そうか」

「うん!」

「見惚れんのもいいが、お姫様もそろそろ支度しな」

「ふぁい」

「おいおい、大丈夫か?侍女呼ぶか?」

「ううん!だぃじょぶ!一人で行ける!行って来る!」

用意されてる部屋に早歩きで向かうよ~!

アオザイに着替えて、レースのベールを被る。

ブーケはやめた。騒動になりそうだから。

鏡を見る。

真っ白なアオザイもあって、本当、花嫁さんみたい。


男の子なのに花嫁さんなのはちょっと変な感じだけどぉ、気にしたら負けだよねぇ

幸せなんだしぃ


「ユーマさま?お時間です」

「はぁい」


広間へ続く大きな扉の前にネイが一人立ってた。

「お待たせぇ」

「…」

「ネイ?」

「ぁ、いや、綺麗だな」

「でしょ~ぉ、綺麗だよね、このレース!」

「いや、ユウがだ」

「へ?…ぁ…あり、がと」

「ユウ」

「にゃにっ?」

「愛してる。これからもずっと、お前だけを」

「…ネイっ。うん!ボクも、ボクもネイを愛してる。これからも、よろしくね」

「ああ」

差し出された手を取り、横に並ぶ。


これからは、横に並んで一緒に歩いて行くんだ!


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