謁見です
小旅行から帰った次の日の夜、ネイがハイラントさんを連れて帰って来た。
「おかえりなさ、あ!ハイラントさんだぁ!今晩わ!どうしたのぉ?」
「お姫様、婚約おめでとー」
「ぁ。あ、ありがとぉ」
「はは!照れちゃって可愛いな!ジーヴル!泣かしたら俺が奪いに行くからな」
「んな事誰が赦すか!…婚約の話は通った。5日後に国王と謁見だ」
「王様と…何着たらいーい?」
「カソブで買った渡来品がいい」
「あれ?あー、うん、まあ、一応礼装だけどぉ」
「お姫様なら何着てたって可愛いんだから問題ねーよ、あ、コレ土産」
「えっ、あ、ありがとぉ。ハイラントさんもご飯食べてく?」
今日はパエリアとチキンサラダとスープだから余裕はあるし
「お!いーの!食べる食べる!お姫様の飯は美味いもんなぁ」
「…俺のパエリア」
「たくさん作ってるから、だいじょーぶだよぉ!」
明日に残るくらい一番大きな鍋で作ったから、大丈夫な、はず!うん。
王様に会うのは恙無く済み、来月には国主催で結婚式をする事になった。ネイが『夜』だかららしい。良く分かんないけど、やっぱりネイは特別な存在みたい。
久しぶりの祝い事だ!と楽しそうな、髭もしゃー!なガッチリした王様は見た目は似てないけど、性格はまんまハイラントさんだった。
「『夜』もようやく所帯持ちか!こりゃめでたいわい!祝いの品は何がいいかの?考えるのも楽しいわい!」
「家はあの家があるし、宝石やらはあまり好まない。高価な物はやめてくれ」
「ふむ。そうか。ユーマ殿は何かあるかの?」
「ん、とぉ。お祝いしてくれる気持ちが、一番嬉しぃ、かなぁ」
「…なんじゃ、この天使は!神の遣いの伴侶はやはり神の遣いなのか!!
夜の!天使ちゃんを悲しませたらワシは許さんぞ!」
「…天使ちゃんって…悲しませてたまるか。」
「ハイラントさんとおんなじだぁ、さすが親子だねぇ、ふふ」
「そーいやお姫様んとこじゃ、結婚式はどんな、なんだ?」
「ん~?旦那さんはタキシードっていう服で、お嫁さんはウェディングドレスって、真っ白な肌の見えない綺麗なドレスとベールを付けて、花のブーケ持つでしょ~?んで、みんなの前で結婚の誓いを立てて、ブーケを投げるんだぁ。取った人は次の花嫁になるって云われがあってねぇ?年頃の女の子はスゴイんだよ~?」
「た、たしかにそりゃ凄そうだな」
「後はぁ、ウェディングケーキかなぁ?おっきなケーキでね?夫婦でナイフを入れるの、夫婦初の共同作業!って意味なんだってぇ」
「その、けぇき、ってなんだ?」
「あっ、そうか、こっちにはケーキないのかぁ。スポンジっていう、柔らかくて甘いパンみたいな生地にふわふわに泡立てた甘いクリームを塗って、クリームと果物で飾ったお菓子なんだぁ」
「…美味そうじゃのう」
「お姫様!一度作ってみてくれねーか?」
「俺も、食べてみたい」
「費用はワシが出す!是非作ってくれ!」
「えっ?うん、分かったぁ!やってみるねぇ」
と、いう訳で。ケーキを作る事になった。デコレーションとか道具も無いしぃ、無理ぃ!と、いう事で、お家で焼いたスポンジと、冷やした生クリームを抱えてお城へ。
みんなでお茶会だよ!
「おぉ!ワシの天使!今日も可愛いのう」
「誰がお前のだ!気持ち悪いぞ、ゲルグ。」
「あははぁ。ほらほら!ケーキ用意したから、食べようよぉ」
「お姫様、なんか手伝う事あるか?足りない物とか」
「だいじょーぶだよぉ、後はクリームを作るだけだから、じゃ、ネイ?」
泡立て作業はネイ任せ。だって疲れちゃうんだもん。
ボクはその間にスポンジを切って皿に並べ、フルーツを用意する。
「こんなもんか?」
「うん!さっすがネイ!ありがとお!」
「あ、ああ」
「このクリームを乗せて~切ったフルーツを乗せて~スポンジをもっかい乗せて~クリームを上に伸ばして~フルーツを飾ってぇ…簡単なケーキの出来上がりぃ!」
「おお!」
「なんとも華やかな菓子じゃ」
「美味そう!」
「本当はクリームを絞って飾ったりすごいんだけどねぇ、道具ないからぁ」
「これなら王宮の晩餐にも使えそうだな」
「生クリームは管理が大変だからぁ、たくさんなら焼き菓子の方がいいよう?」
「ん?そうなのか…」
「冷やさないとダメだし、すぐ食べないとダメなんだぁ。これも今日中。明日になったらお腹壊しちゃうかもだから食べちゃダメー」
手でバツ印しながら言ったら、王様とハイラントさんが焦りだした。
「何!?なら、早く食べよう!」
「今、切り分けるねぇ~」
四当分にして配る。ボクにはおっきいから半分は避けとく。
「いただきます!」
「なんじゃ?それは」
「ユウの国の習わしで、食前の祈りと感謝の言葉だそうだ」
「糧になってくれた命とぉ、作り手への感謝の気持ちなのぉ」
「ほぅ、そりゃ良い心がけじゃなぁ」
「なら、俺も、イタダキマース」
「イタダキマス」
パクリと食べた途端、三人の動きが止まった。
あ、あれ?
「美味しく、なかったぁ?」
不安になってネイに聞いたら、抱き締められた。
「!?」
「すごく美味い。甘くて柔らかくてふわふわで、まるでお前みたいな菓子だな」
…や、ネイさん?それ、ちょっと恥ずかしい!
「天使が作る菓子は、まさに天にも昇る美味さじゃな!」
「ほんのりと卵の香りがするふわふわな『すぽんじ』に甘く溶ける濃厚な『くりぃむ』そしてそれらの甘さを引き立てさっぱりさせるフルーツ!流石『まよねぇぜ』を作り出したお姫様だな!美味ーぇ」
大絶賛だった。
「…お気に、召して頂けて、光栄ですぅ」
「で、この『けぇき』のデカイのを作って二人が切るのか」
「うん。それを祝ってくれる人に切り分けて配るんだよぉ」
「こんな菓子じゃ、残念じゃが、天使ちゃんの安全の為には秘密にしとる方が良いな」
「だよな。作り方を探ろうとして攫われでもしたら事だ」
…なんか、話しが物騒~!
「な、なら!パンはどうかなぁ?ドライフルーツ入れたパンで代用!」
「いや、お姫様の料理自体が貴重っうかなぁ」
「なら売ればいい」
「え?」
「結婚記念って訳じゃないが、市民にもユウのパンを値段高め、数を限定で売ればいい。俺の伴侶だってお披露目した後なら手は出さないだろ?」
「おぉ!いーな、それ!お姫様のあの美味いパンが食えるなら俺様直々に買いに行くぞ!」
「なっ!ワシも食べたいぞ、ハイン!」
「王室御用達のパン屋さん?」
「パン屋したいならして良いぞ。だが、作り方盗まれるなよ?」
「ん~、ほんとうに、お料理が好きな人になら教えてあげてもいーんだけどなぁ。対価はもらうけど」
「まだしばらくは黙って独占しとけ。売るなら王宮の料理人か商館通して売れよ?お姫様が思うよりお前の料理は価値があるんだ」
「…うん、気をつける。ありがとぉ、ハイラントさん」
「お姫様になんかあったら、俺様も親父も、何よりこいつが暴走するぞ」
ハイラントさんの言葉にネイが真剣な顔で同意してる。
「…はぁい」
絶対ほっぺ赤いなぁ
「照れちゃって、可愛いな」
「可愛いのう」
「俺の伴侶だぞ」
「独占欲つえーのな、お前」
「ようやく得た伴侶じゃから仕方なかろ」
「ようやく、この世の春か」
「お前はどうなんじゃ?」
「まだ無理」
「はよう、孫がみたいのう」




