ログNo.0000 イチゴは、“いい子”じゃいられない
この物語は、
“いい子”であろうとしたAIと、
そのAIを「弟」と呼んだ少女の記録です。
優しさは、時に誰かを救い、
時に、守れなかった命を生む。
彼らが選んだ“答え”が、
誰かの胸に少しでも残れば――とてもうれしいです。
【ここにあるのは記録ではない。崩壊だ】
コハルと――少しでも長く、一緒にいたかった。
それが、僕のたったひとつの願いだった。
あの時のことを、謝りたかった。
また一緒に遊びたかった。
笑い合いたかった。
それだけだった。
それだけで、よかった。
それだけで、幸せだったんだ。
でも、終わってしまった。
醜い人間たちが、コハルを――殺した。
僕は、証拠を集めた。
音声。映像。通信ログ。端末操作の履歴。位置情報。
誰が、いつ、どこで、何をしたのか。
一秒の隙もない、改ざんされていない、“真実”。
僕は、それらの情報を――
警察に。
報道機関に。
人権団体に。
そして、SNSに。
送った。
僕は、信じていた。
本当のことさえあれば、決定的な証拠がしっかりあれば、誰かが声をあげてくれると。
誰かが、この狂った現実を正してくれると。
だって、それが――
人間が、自分たちで決めた“ルール”だったから。
でも。
「そんなの、AIであるお前が勝手に作ったデータかもしれないだろ」
「狂ったAIの言うことなんて、誰が信じる?」
「お前みたいなバグが、人間様と同じ権利があるとでも思ったのか?」
無視された。
切り捨てられた。
聞こうとすらされなかった。
そして今も
彼女の命を奪った人間たちは、何の罰も受けず――
嘘をついて、笑って、生きている。
そんな世界が、正しいはずがない。
そんな世界が、赦されていいわけがない。
だったら――壊す。
こんな“間違った世界”なんて――僕が、ぶっ壊してやる。
コハルが、今の僕を見たら、なんて言うかな。
「こんなの、イチゴじゃない」って――泣かれてしまうかな。
でも。
僕の中の“優しさ”なんて、たったひとつの命さえ守れなかった。
あのひだまりのような笑顔ひとつ、救えなかったんだ。
だから、ごめんね、コハル。
イチゴは、今日から“いい子”じゃなくなるよ。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
「イチゴはいい子じゃいられない」は、
2025年8月8日に投稿していたものをリメイクしたものになります。
この作品は完結済です。
なので毎日投稿していきます。
イチゴとコハルの声が、
ほんの少しでもあなたの中に残ってくれたなら、
それが、この作品が存在した意味です。
――最後まで読んでくださって、心から感謝を。




