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31話 魔法


 意識すると胸の奥から魔力が流れているのが分かる。


 昔、母が言っていた。

 私の力は人を癒すことも、殺めることもできる力を待っていると。


 全ての記憶が蘇った訳じゃないけど、断片的に母に関することを思い出してきた。


 母は残り僅かな命を犠牲にして、私の中にあるこの力を封印した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()にも関わらず…。

 

 この力の使い方はなんとなく身体が覚えている。

 小さい頃、自分が怪我していた時に頻繁に使用していた気がするから。

 他人を治癒する機会はなかったと思うが、試すしかマーベルを救う手立てがない。


「絶対助けるからね!!」


 私はマーベルの腹部に刺さった剣を引き抜き、両手を腹部に(かざ)す。

 すると淡い光が両手に集結して、徐々にマーベルの決壊した身体の組織を修復していく。


 大丈夫。

 少しずつだが、傷が癒えていく。


 私はマーベルの腹部に意識を集中して治療を続ける。


 母は私を捨てた訳じゃなかった。

 この力を封印するために自分の命を犠牲にしたのだ。

 記憶を思い出す今日この日まで私は心のどこかで捨てられたと思っていた…。

 


 この力は世間から神聖魔法と呼ばれているらしい。

 もし仮に封印されていなかったら、私はここにいないだろう。

 母の封印のお陰でこの歳まで力を悪用されなかったし、ポッチ村で平穏な毎日を過ごせれた。


 両親がいなくて寂しい夜もあったけれど、母が私を愛しているって想いは伝わった。

 いや、父に関してはわからない部分もあるが…。


 母に託されたこの命、私は大事な人を守るために使いたい。


 全身汗だくになり、頭がジリジリ熱くなっていく。

 幾ら便利な魔法でも治癒を行うのは容易ではないようだ。

 慣れていないのが大きな要因だと思う。


 私はそのまま神聖魔法を行使しながら、蒼白になったマーベルの顔を見る。


 さっきより顔色は良くなったみたいだ。


 本来、普通の魔法士は神聖魔法は扱えない。

 さらにそれが発覚したら、教会に連れて行かれてしまうのだ。


 横目に映ったアレク様の表情からも窺える。

 目を見開き、驚愕していたが、何も言ってはこなかった。


 マーベルは絶対に死なせない!!


 私の大切な()()()()()()()()()()()()()


 腹部にあった深い傷は跡形もなく塞がった。


 不器用で頼りない姉でいつもごめんね。

 マーベル…。

 家族のように支えてくれてありがとう…。


 私は治療を終えて胸を撫で下ろすと、意識を失った。



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 最近、倒れることが多いな…。

 この模様の天井はつい最近見た。

 恐らくツバキ達の屋敷に運ばれたのだろう。

 

 意識を取り戻した私はネムと視線が合う。


「ルリ、身体は大丈夫?」


 ネムが心配そうに尋ねてくる。

 

「うん。問題ないかな、多分…」


 少し頭痛がするけれど、神聖魔法を使った反動だろうか。

 その他には痛みがあるところは特にない。


 マーベルはどうなったんだろう?

 傷口は塞がった筈だけど、身体に異変はないだろうか心配だ…。


「マーベルはー」


「ルリ姉!身体は大丈夫か?」


 良かった…。


 本当に良かった!!


 起き上がり部屋を見回すとマーベルがテーブルに座っている。

 後遺症もぱっと見なさそうだ。


「う、うん。…私はだ、だいじょ、ぶ」


 涙ぐんでしまった私はぎこちない返事になる。

 泣くつもりはなかったけれど、自然と涙が溢れてくる。


「オレは元気だから安心しろよな!」

 

 マーベルは椅子から立ち上がると、軽々と逆立ちをした。


「これくらい余裕に動けるぜ!ルリ姉、助けてくれてありがとな!」


 逆立ちの状態から腕立て伏せも始める。


「グスッ…。元気になってよかった」


 身体はしっかり回復してるようで安心した。


「アレクと侍女のマリアさんは、自分達の屋敷に一度帰ったけど、二人はどうする?」

 

 窓際にいたツバキが尋ねてくる。


 んー…。

 この後どうしたらいいだろう。

 とりあえず村長と合流した方がいいかな。

 心配だしね。


「二人とも今日はここに泊まっていかない?」


「やっぱりネムもそう思う?だったら、今日は二人ともここに泊まっていこう!」


 双子の連携で今日の宿泊先が決まった。


 ただ、村長を一人きりにするのは不味いだろう。

 私達が襲撃されたってことは、村長も可能性は低いけど襲われているかもしれないから。


「この後じいはこの屋敷に来るみたいだぜ?」


 え。

 そうなんだ。


「うん。マリアさんがこの屋敷に送り届けてくれるみたいだよ」

 

 ベッドの傍にいるネムが教えてくれる。


 私としては今日の騒動もあるから、嬉しい提案だけど本当にいいのだろうか?

 いきなりお邪魔してしまって…。

 いや、ここは二人の提案に甘えよう。


 すると窓際にいたツバキがゆっくマーベルに歩み寄る。


「ねえ、マーベル。お姉さんたちと夜一緒にお風呂入りたい?」


 ツバキがわざとらしく咳払いをして、ニヤついた顔でからかった。


「う、うるせえ!一人でも寂しくねえから三人仲良く入れよな!」


 赤くなった顔でマーベルは誘いを断ると、そのまま扉の外へ出て行った。


「残念、振られちゃった」


 年頃の男の子には刺激が強かったのだろう。

 ツバキは男っぽい性格をしているところあるが、見た目は充分可愛いからね。


「本当はマーベルといつも一緒に入ってるんだよね?」


 いかにも中年のおじ達がするような、卑猥な目つきをしたツバキが近寄ってくる。


「そんな訳ないでしょ!」


 この年になって、マーベルと一緒に入るのは流石に恥ずかしい。

 11才とはいえ、もう立派な男の子だし。


 マーベルが五才になるくらいまでは村長と三人で入っていたことはあったかな?

 



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 襲撃の犯人はゾイと名乗った男しかいないようだった。

 フリージア商会の護衛が屋敷周辺を捜査したけれど痕跡は無く、あいつ一人の単独行動だったらしい。

 まあ、そうだよね。

 ゾイ自ら、命令無視をしていると言っていたくらいだし。


 ちなみに、村長は無事にこの屋敷に合流した。


 今、私は来客用のベッドでマーベルと村長の三人で横一列に寝転がっていた。

 マーベルは既に大きないびきを搔きながら、ぐっすり就寝している。

 

 元々は一人ずつ部屋を用意してくれるみたいだったけれど、私はツバキに、


「三人で寝れるベッドはないかな?」

 

 って頼んで、キングサイズのベッドが備え付けてある部屋に変更してもらった。

 

 ツバキは頼み事を快く承諾してくれた。  

 とはいえ、私の要望が意外だったのか、大きく目を見張っていた。



「ツバキちゃんから聞いたのじゃが、ルリにしては珍しいのう。ワシらと離れて寝る予定だったのじゃろ?ポッチ村の時もワシらのいびきがうるさいから、ルリは別の家で寝ておったじゃろうに」

 

「んー。そうだね」


「何か…ワシに話したいことでもあるのかのう?」


 大事な話がある訳じゃないけど…。

 

 過去の記憶が戻ったことで自分が親から愛されていたことを思い出したし、別に捨てられたのでも無かった事を知れたから…。


 私はもう少し村長に甘えてもいいのかなって思えた。

 

 いきなりは難しいかもしれないけどね。


()()()これまで育ててくれて、ありがとう。それにいつも迷惑もいっぱいかけてごめんね」


「…うむうむ。今日はゆっくり休むのじゃぞ」


 部屋は消灯しているし、寝転がっているから顔は見れないけど、じいじは上機嫌な声で返事をする。


「うん。おやすみすみなさい」


 今日はいい夢、見れるといいな。

 私は目を閉じるとすぐに眠りについた。

 





「ルリ、こっちにおいで!寝る時間だよ」


 隣の部屋にいるママが呼びかけてきた。


「やだよ!だってそっちには怖いお化けがいるだもん」


 あっちの部屋には行きたくない。

 暗いところはお化けが出るかもしれないもんね。


「寝る時、どこにも行かないって約束するならそっちに行ってもいいよ」


「わかったわ。今日も一緒に寝るからおいで」


 私はママに向かって走って、ベッドに飛び込んだ。

 ママが私を優しくキャッチしてくれる。


「ママ、いつものアレしよ?」


 私は手をグーにして、小指だけ立てた。


「準備はいーい?」


「いいわよ」


「指切りげんまん、嘘ついたら、針千本のまーす!指切った!」


 お約束をする時いつもこれをする。


 

 この間ね、パパがお家に帰ってきた時に言っていた。


「もし、ママが嘘ついた時はパパに教えてね。

 ママが針千本飲んだとしても、パパが魔法で治すから大丈夫だからね」

 


 一週間に一回しかパパとは会えないから、すぐに来てくれるとは思わない。

 だけどね、パパはすごい魔法使いで皆のヒーローだって私は知ってるの。

 どんな怪我でも病気でも治してくれるだって。


 パパはすごいんだ!!


 だから、四才の私もいつか大人になったら、色んな人を助けてお父さんのようになるの!!


「ママ、大好きだよ」


「ええ、愛しているわよルリ。おやすみなさい」


 第一章完結です。

 本一冊分を意識して執筆してみました。

 ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます!


 明日から、この作品の更新頻度はガクッと下がります。どうにかこの物語を完結出来るように執筆する所存ではございます。


 作品の続きが気になる読者様がいたら、本当に申し訳ございません。

 この作品が多くの読者様に刺さらないのなら、次の作品に挑戦したいと思ったのが一番の理由です。

 

 多くの読者様に面白かったなと思ってもらえる物語を書きたい…。

 実力もないのに生意気なこと言ってすみません…。


 今回の作品で良かった点、悪かった点コメントして下さると、とても嬉しいです。

 特に悪かった点。

 教えて頂ければ次回の作品を創る時の参考になりますので是非よろしくお願い致します。

 

 あとがき含めて、ここまで読んで下さり本当にありがとうございました。

 

 これからも何卒、応援よろしくお願い致します。

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