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27話 雑貨屋


「ここのチーズケーキめちゃうまいな!」


 マーベルが絶賛している。

 

 私も今食べているけど、魔女の館のケーキは評判通り味でとても美味しい。

 ちなみに三人で食事中だ。

 村長の知人とはいえ、怪しそうな老婆を交えて会話を続ける勇気はなかったからね。


「ねえ、二人はいつこっちに来たの?」


 マーベルはフォークを置いて会話を始める。


「昨日の夜に着いたぞ。ルリ姉はこっちにきてどんな感じだ?」

 

 以前のマーベルだったら、口がパンパンになるまで頬張って喋り続けてただろう。

 三ヶ月の間に少しは成長したようだ。


「うん。特に変わった事もないし、学園生活は順調かな」


 この三ヶ月、特にこれといった騒動にも巻き込まれていないし、有意義な時間を過ごせていると思う。

 裏口入学だったけど、イジメも起きてないしクラスに仲の良い友達もできたしね。


「それは良かったな!」


 マーベルは相槌を打つと、いきなりその場に立ち上がった。


 まじまじと私を見つめてくる。

 なんだろう。

 トイレかな?

 

 私はお手洗いがある方に指をさす。


「あっちにー」


「ルリ姉あの時はごめんな!見送りしてやらなくて!」

 

 店内に響き渡るくらい大きな声で謝罪をしてきた。

 マーベルの真摯な思いを受け取り、私もその場に立ち上がる。

 ほぼ、反射的に動いてしまった。


「こちらこそごめん!マーベルや村長の気持ちを蔑ろにして…」

 

 あぁ。

 私も早く仲直りしたかったんだな。

 咄嗟に大声なんか出しちゃって…。


 けど、なんか心のモヤモヤが晴れてスッキリした気がする。

 喉に引っかかった魚の骨がとれたみたいに。


 ぱちぱち。ぱちぱち。


 わたしたちのやり取りを眺めていたお客さんが小さな拍手を送ってくれた。

 思った以上に注目されていたようだ…。

 気まずくなった私はマーベルと一緒に席に座り直す。


「ねえ、マーベル?」


 顔が赤くなったマーベルの名前を呼ぶ。

 恐らく自分も赤くなっているだろう。


 マーベルは羞恥心を隠すように、チーズケーキを一気に頬張る。


「ーんだよっ!?」


 さっきは遠慮していたようだ。

 口にものを含んだままマーベルは返事をする。


 だよね。

 たった三ヶ月で急成長するはずないか…。


「明日、一緒に買い物に行かない?」


「おう。いいぜ!なあ、それだったらジイも付いてくるか?」


 村長はかぶりを振って、マーベルの誘いを断った。


「ワシは遠慮しておくかのう」


「せっかくだから一緒に行かない?」


 私からも声を掛けてみる。


「明日は行く所があるからのぉ。二人でワシの分も楽しんでおくれ」


 さっきの館にいた人以外に村長もキーシャに知り合いでもいるのかなぁ。

 まあ村長も予定があるのなら仕方ない。


「そうか!じゃ、オレたちで行くか!」


 少し残念だけど、マーベルと二人で行くとしよう。


「うん。村長、明日はマーベルを借りるね」


 その日は村長達に学園まで送ってもらって解散した。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 《ゾイside》


 ギイルの兄貴は一向にあいつに仕掛ける気配がねえ。

 うぜえな。


 ルリって小娘一人ににどれだけ時間かけりゃいいんだ?

 とはいえ、あの小娘も学園に引き篭もってばかりで中々、手を出せないのは確かだ。


 今日、あいつは久々に学園の外に出てきた。


 ギイルの兄貴から学園を監視しろと命令されていたから一応この三ヶ月張り込んでいた。

 あいつが学園の外に出るのはこれで二回目だ。


 ああ。

 ギイルの兄貴。これ以上ずっと監視をするのは御免だぜ。

 幾らあのお方の命令でもな。


 人目につかず一人になったところで仕掛けたいのは山々だが、あいつは直ぐに誰かと合流したようだ。


 乳臭えガキとおいぼれのジジイ…。

 まとめてあいつら殺すか。

 

 いや、あのジジイは手練れの元冒険者か?

 現役を退いているかもしれねぇが、正面から殴り合うのは分が悪そうだな。


 チッ…。

 今日は諦めるしかなさそうだな…。

 

 次、あいつが学園の外に出た時仕掛けるか。



  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 翌日、村長達は学園まで馬車に乗って、私を迎えに来てくれた。

 村長の目的地は違うけれど、進行方向が途中まで一緒だったから乗車している。


「ジイはこのまま馬車に乗って、どっか行くのか?」


「そうじゃのお…。マーベルよ、朝帰りはするんじゃないぞぉ」


 なんか。

 うん…。

 他にかける言葉を無かったのかな…。


「おっけー!じゃ、ルリ姉と買い物行ってくるわ」


「ここで降りるね。馬車に乗せてくれてありがとう!」


「いいんじゃよ。マーベルを頼むぞい」


「わかー」


「別にオレ一人でもこんな狭い街、迷子にならねえよ!」


 マーベルは心配されるのが気に食わないのか、強気な態度で私の言葉を遮った。


 三ヶ月とはいえ、離れて暮らしていたから少しでも成長した姿を見せたいのだろうか。

 俺を頼ってくれよな!って、気持ちがひしひし伝わってくる。

 気のせいかもしれないけど。


「じゃあ、帰るときの道案内はマーベルに任せようかな!」


「お、おう…い、いいぜ」


 任せようかなと言った途端、マーベルの視線がキョロキョロして挙動不審になる。


 ちなみにマーベルはとんでもなく方向音痴だ。

 これだけ広いキーシャの街路を覚えれる筈がない。

 田舎のポッチ村でさえ一苦労していたのだから…。


 マーベルの機嫌を損ねるのもあれだし、これ以上からかわないでおこう。


「それじゃ、行ってくるね」


「気をつけていくのじゃぞ」


 馬車から降りた私は目的地の雑貨屋に向かう。


 もしかしたら、マーベルは武器や防具が置いてある店の方が好きかもしれない。

 ただ、亡くなった両親の遺産から高価な品物を贈るのも違うと思うし、そんなに値が張らなさそうな雑貨屋に立ち寄ることにした。

 ツバキが教えてくれたお店だからきっと大丈夫だろう。

 お目当ての商品があるとしたらいいんだけどな。

 


「ねえ、マーベル。手のひらを見せてくれない?」


「とりあえず店入ってからでもいいんじゃねえか?まあ、別に今でもいいけどな」


「うーん…。入ってからでいいよね」


 わざわざ店の入り口でそんなことする必要はないか。

 店内に入り、邪魔にならないスペースに移動する。


「もしかしてよ、ルリ姉。迷子にならないように手を繋ぐのか?…流石にそれは勘弁してくれよな!」


 私の言い方が悪かったのかもしれない。

 まあ、お互い迷子対策としては悪くない方法だけど。

 

「違う、違う手のサイズを知りたかっただけ!」


「急にどうしてだ?」


「いいから、いいから。ほら、手を貸して!」


 ……。

 マーベルの手のひらには、小さいけれど無数の傷跡が沢山あった。

 タコや血豆も数個出来ており、少し心配になった。


「先に言っとくけどな!これはオレがしたくてやってることだから、止めようとしても無駄だぞ!」


 私の心を読んだかのように、先に言いたい事を阻止された。

 本当はここで反論してもいいかもしれない。


 怪我するような無茶なことはしないで!

 心配するんだから!と。


 だけど、三ヵ月ぐらい前。

 マーベルの意見を押し切った私にそんな事言える資格があるのだろうか。

 私が学園にも行かなくて、冒険者の道も選ばすにポッチ村の住人のままだったら、マーベルに指摘できたかもしれない。


 けど、私は学園にも通っているし、将来冒険者の道を進もうとしている。

 自分も冒険者になれば怪我をしたり、最悪、命を落とす可能性だってあるのだ

 ここはマーベルを応援した方がいいのかもしれない。


「いっぱい、頑張ってるんだね…」


 肩の力を抜いた私は優しく微笑む。

 

「あー。もう、いいか?」


 マーベルは差し出てくれた手のひらを下げようとする。


「あ…。ちょっと待って…」


 私は考え事をしているうちに、当初の目的を忘れるところだった。

 しっかりと手のひらのサイズを測った。

 



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします。

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