23話 模擬戦
大方、A、Bクラスの混合ペアが揃い終わった。
「ルリって呼び捨てでもいい?」
「うん、いいよ」
ツバキに返事をして、私は屈伸を行う。
「ねえねえ、少し気になるだけどさ。ルリって師匠とかいるの?」
「ううん、いないよ」
「え!?そうなんだ…」
ツバキは少し目を丸くすると首を傾げた。
どうして急に師匠がいるとか訊いてきたんだろう。
これからペアを組むからかな?
ツバキはふと思い出したかのように尋ねてくる。
「あ!?…そういえば、ネムから聞いたんだけどさ。筆記試験って、ルリが二位だったんだよね?」
「うん…そうだけど、たまたま取れた順位かな。次回は厳しいと思う」
私は苦笑して返事をする。
師匠と仰げる人は居ないけど、村長から算術や文字の読み書きは小さい頃から教わっていた。
そのおかげもあって筆記試験は満足できる結果となった。
もしかして、筆記試験が良かったから師匠がいるって思ったのかな…。
「ま、偶然の二位だったとしても、その結果は凄いよ!しかもネムとは僅差だったらしいし、1位も夢じゃなかったよね!」
ツバキは興奮した様子で、称賛してくれた。
平民は貴族と比べて勉学に疎いことが多い。
最低限の教育を学ぶにしても、やはりお金がどうしても必要になってくるからだ。
ツバキは学園に通っていない私が、いきなり好成績を収めたから気になったのだろう。
「でも、ツバキちゃんもAクラスで1位じゃなかったっけ?」
「あはは。まあ、一応そうかなあ…後ろから数えてだけどね…」
ツバキは少し照れくさそうに苦笑いをする。
ネムから訊いていたけれど、まさか後ろから数えての順位だったのか…。
「あ…。ご、ごめん!あれだったら数発殴っていいから!」
両手をガチガチに握りしめて目を瞑る。
殴られる覚悟は出来ている!
「大丈夫!大丈夫!ぜんぜん気にしないで!」
目を開けるとツバキは屈託の無い笑顔で、私の背中をポンポンしてくれた。
やらかしてしまった…。
本当にごめんなさい!
「ま、ネムと違って、私は体を動かす方が得意なんだよね!」
ぺったんこだが、自信満々に胸を張っている。
それは心強いな。
「だから、あいつには模擬戦で負けたくないんだよね!」
ツバキの視線の先には銀髪で、丸縁眼鏡をかけた男の子がいた。
眼鏡のおかげなのか、知的な印象だけれど切れ長の瞳がどこか近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
目つきが悪く、少し睨んでいるようにも見えるから余計そう感じるのだろう。
「筆記試験ではあいつにボコボコにされたけど、実技ではコテンパンにしてやるわ!」
「確か、委員長を務めているシルベル君だよね」
「そうそう!だから今回の実技試験、絶対に勝ってやる!」
ツバキは指の関節をポキポキ鳴らした。
「もしかして、シルベル君に模擬戦を申し込む感じだったりして?」
「そのつもりかな!ちょっと強引なお誘いかも知んないけど、一緒に戦って欲しいな!」
ツバキは両手を合わせて懇願してきた。
なるほど…。
妹のネムは控えめで大人しい性格だが、姉のツバキは想像以上に負けず嫌いで、好戦的な性格なのかもしれない。
「うん、いいよ…。なんか良い作戦とかあるかな?」
さっき墓穴を掘った私は反省の気持ち込めて承諾する。
「そうだねー。とりあえず真正面から叩き合いたいかな!!」
それは作戦というよりツバキの願望じゃないだろうか。
なんか、雲行きが怪しくなってきたな。
「魔法が使えない試験だけど、ツバキの得意武器って何なの?」
「それがねぇ…」
ツバキは思案顔になり、言葉に詰まった。
大体こういう時の悪い予感は的中する。
「私ってさ、ゴリゴリの遠距離の魔法士なんだ!剣や槍とか使って、近接戦闘はできないんだよね!」
嘘でしょ…ツバキの姉御。
さっきの自信満々の態度は、何処から湧いてきたんだろう…。
そういうことか。
ツバキは私に特攻させて、後方から援護してくれる感じなんだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私達は出番が回ってくるまでは、他の生徒達の観戦をしていた。
やはり魔法が扱えるAクラスの方が戦闘能力は高い。
違うクラス同士でペアを組んでいるため、勝敗で判断することは厳しいけれど、試合全体の流れを見る限り、私たちBクラスの方が実力が劣っている。
それはそうなのかもしれない。
平民と言えど、魔法を扱える者たちは幼い頃からギルドに登録する子が多いらしい。
今行われた試合は、女の子同士のペアが勝利した。
公平に試験を行うため、青年教師が魔力感知の結界を敷いている。
そのため魔力を行使した不正は今のところ行われていない。
「では、本日最後の模擬戦を行います。シルベル君、ネムさん、ツバキさん、ルリさん前に出て下さい」
青年教師の呼びかけに応じて、私たちも前に出る。
いよいよ私たちの出番だ。
対戦相手は委員長のシルベル君とネムだった。
「ルリもツバキもよろしくね」
妹のネムが微笑んで話しかけてきた。
「覚悟しなさい!シルベル!負けないんだから!」
威勢よくツバキが言い放った。
「シルベル君もネムもお手柔らかにお願いします」
ツバキとは違い、私は弱腰な態度で返事をする。
「お互いに最善を尽くそう!」
委員長は眼鏡をクイッとしてそう告げると、私たちから距離を置く。
先生からお互い二メートルくらい距離を置いて、ポジションに着いた。
模擬戦のルールは至ってシンプルだ。
土のグラウンドに直径十メートルほどの白い線が引かれており、その円の内側で決闘を行う。
どちらか一人でも円の外側に出てしまう。
あるいはギブアップとペアの一人が先生に宣言すると敗北が決まる。
後は先生が試合の状況を見て勝敗の判断をするらしい。
私は剣を選び、相棒のツバキは弓を選択した。
私が前衛になり、二メートル後方にツバキが後衛として弓を構える。
「これより模擬戦を始める。それでは、はじめ!」
先生が試合開始の合図を放つ。
攻撃を仕掛けたのは私達からだった。
ツバキが弓を弾き、勢いよく木製の矢がシルベルに発射される。
シルベルは木剣を二度振って、矢をギリギリ叩き落とす。
私はその隙に両者の距離を出来る限り詰めていた。
予めツバキと話し合っていたからだ。
私は木剣をシルベルの頭から腰に掛けて剣を振り下ろした。
剣の軌道をあっさり見抜いたシルベルは、半身ズラして攻撃を回避する。
私は追撃を試みようと、振り抜いた剣を下から振り上げると、両者の木剣が強く衝突した。
体勢が若干崩れた私の隙をシルベルは見逃さない。
首目掛けて木剣が勢いよく振るわれた。
かろうじて私はシルベルの攻撃を防ぐ。
力の均衡は直ぐに破れ、私は競り負けそうになる。
筋力では勝ち目がないのは明らかだった。
シルベルの木剣の力をいなしながら、打ち合わせ通り私は地面に伏せた。
その瞬間、シルベルに向かって第三、第四の弓矢が放たれた。
当然、シルベルは矢に視線を向ける。
私から一瞬目線が外れた隙に足払いを掛けた。
矢を叩き落とすことが出来たシルベルだが、私の足払いはしっかりと決まり転倒する。
倒れた瞬間に私は立ち上がり、シルベルが握っている右腕を力強く踏む。
「くっ…」
足元からシルベルから苦悶の声が聞こえた。
踏みつけていない反対の足で、木剣を蹴りシルベルの手元にあった木剣を吹き飛ばした。
そのまま木剣をシルベルの首筋にかける。
「参った…」
シルベルは降参の意を示すと、見物していた生徒達は、
「おお、あれが例の編入生か」
「容赦ないんだな、ホントに…」
「脳筋ツバキとの組み合わせは、今後、絶対ナシだろ」
観客達の声が私の耳に入るが、
「おい、ごらぁ!脳筋ゴリラって言った奴、ツラ貸せやあ!」
と、ツバキの大声が見物していた生徒達の声を掻き消したのであった。
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