表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第1章 第3話「推しの肘が尊いって言われた」

帝国諜報局の受付で、サシャ・アルバは首をかしげていた。


(……本当に、ここ?)


 地味すぎる建物。看板は風で落ちていて、代わりにチョークで壁に「スパイ」って書いてある。


(これは……逆に目立つのでは?)


「えっと、アルバ様ですね。担当官の者、すぐお呼びいたしますねぇ」


 受付の女性が奥の扉を開けると――


「えっっ!?ご本人ッ!? あわわわわ、ちょ、待って無理です、心の準備が……っ」


 奥から、悲鳴のような声が聞こえた。


 直後、バタバタと走ってきたのは──


 金髪ショート。

 小柄で、えっちな服装の少女。

 (なんというか、布が全体的に……足りてない)


 だけど手には分厚い資料ファイルと短弓、そしてなぜかアクスタ(?)が。


「メ、メロウ・アリーナですっ……!は、初めまして……その、サシャさんっ、あの……」


 少女はモジモジと、そしておっぱいを揺らしながら深くお辞儀した。


 ファイルとアクスタが床にぶちまけられる。


「……」


「……その……すごい近距離で見られてると思ったら……嬉しくて……(ふぇぇ)」


(なんだこの子……危うい)


 道中、サシャは無言でメロウを観察していた。

 彼女はずっとしゃべっていた。ほぼ独り言で。


「ジェリド様の肘の角度、今日も完璧でしたぁ……」

「推しが笑うと、世界が浄化されますよね……」

「ていうかあのポーズ、絶対狙ってますよぉ……プロ意識の塊……尊……」

「……あ、すみません。今完全に“戦闘モード”入ってました」


(いやむしろ、そっちが本業では……?)


 そのとき、背後の建物から“魔導車”が暴走して突っ込んできた。


「避け──!」


「ふふふふ……この距離なら、外しませんからぁ♡」


 メロウが、満面の笑みで短弓を構えた。


 バシュッ。

 瞬間、魔導車の制御核に魔弾が命中。車体はバウンドして、その場で大破した。


 メロウは振り返ってにっこり。


「ね、急所を知ってれば、怖くないんですぅ」


 ……サシャは無言で後ずさった。


 帝国中央情報局──通称“諜報詰所”にて。


 メロウが笑顔でお茶を淹れながら、自作のジェリド様グッズを並べ始めた。


「その、あの……推しの肘の角度が、今日、神でしたっ……」


 サシャは遠い目で頷いた。


(ああ、うん、理解した。この子……「ガチ勢」だ)


「ねえ、アリーナ。任務って、どのくらいこなしてるの?」


「え? あの、ジェリド様が写ってる敵国の監視カメラ映像なら、すべてスクショしてフォルダ分けして──」


「違う違う、命がけの方の」


「あ……そっちも、まあ、割と……」


 彼女はさらっとダガーを回しながら言った。


「推しが“この世界を焼け”って言ったら、私、笑顔で焼けますよぉ」


(──この子、爆弾すぎる)


 その夜、サシャとメロウは宮廷広場に呼び出される。


 すでに待っていたのは、青き髪の貴族令嬢。


 リナ・ローレンス。


「……貴方たち、明日から私と行動を共にしていただきます」


「うぇえ!?なにその立ち絵、完璧すぎません!?」


 メロウが興奮気味に囁く。


「清純美少女×高貴×ブチギレ属性……この子……“推せ”ます……」


「ちょっと待って、あんた諜報員としての目は?」


 サシャがツッコミを入れた瞬間。


 リナがキレた。


「今、何か言いました!?嘘つきのくせに!」


 氷の気配が、空気を刺す。


 サシャは溜息をついた。


(このメンバーで金塊を追うって……ほんと、どうなってんのこの帝国)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ