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第1章 第2話「キレ芸ヒロインと目が合った(冷たい)」

帝国身分登録局──それは、華麗なるマウント合戦の戦場である。


「“祭事と神官の家”か……お堅そうだけど、清潔感は合格ね」

「“武芸と職人の家”って……ぶっちゃけ脳筋でしょ?」

「“海賊と商人”? え、それ冗談じゃなくて?」


 午前十時、登録所の待合ホールは、貴族たちの“目線だけの社交界”と化していた。


 サシャ・アルバは、隅の椅子にふんぞり返りながら、鼻の奥で笑う。


(おっと、視線が痛い。帝都の貴族って、“無言で悪口言う選手権”でも開催してるの?)


 自分の職業身分〈海賊と商人〉は、帝国内では最底辺。

 ここにいる全員が、彼を「場違い」と断じている。


 だが──サシャは、そんな空気を気にも留めなかった。

 というか、ちょっと楽しい。


(誰も僕を信用してない。最高の立ち位置だよね)


 そのときだった。


「――リナ・ローレンス様、受付へどうぞ!」


 場が、凍った。


 足音すら神々しく聞こえるほどに静まり返るなか、ひとりの少女が入ってきた。


 長く美しい蒼髪が揺れる。

 清楚な白と青のドレスに身を包み、背筋は1ミリも曲がらない。

 頬には紅の一閃。瞳は、宝石より澄んでいる。


「うわ……」

「やば……やっぱ令嬢の格、違うって……」

「ちょ、カメラ回していい?」


 モブ女子たちが騒ぐなか、サシャはひとこと。


「……完璧な、炎上体質だなあ」


 なぜなら──彼女の持っている身分証に、こう書かれていた。


 《政策と貴族の家》


(ガチ中枢じゃん。ヤバ……この人、間違いなくめんどくさい)


 予感は、当たった。


「貴方……サシャ・アルバ、ですか?」


 リナ・ローレンスが、歩み寄ってきた。

 眉一つ動かさずに、サシャの書類を見下ろす。


「“海賊と商人”。しかも、滞在許可証が“手書き”ですって……? 本気で提出なさったのですか?」


「ええ、もちろん。帝都の皆さん、寛大ですから」


「ふざけないで。私、冗談で炎上したこと、何度もありますのよ?」


(うわぁ、火薬積んでるなあこの人)


 それでもサシャは、にっこりと笑った。


「じゃあ気をつけないと。……その髪、思ったより燃えやすそうだし」


 刹那。


 リナの眉がぴくりと跳ねた。

 空気が一瞬、凍る。


(え、今の、引いた? それともキレた?)


「この……低能がァ!!」


 来たッ!!


 周囲の魔力が爆ぜ、地面が凍る。


 何もしてない受付嬢が「えっ!?何!?また氷!?」と叫ぶ中、サシャは床を滑って逃げた。


「え、ちょ、ちょっと!?僕まだ書類提出してな──」


「黙りなさいこのクズ!!」


 叫ぶリナ。

 キレ芸の化身と化した貴族令嬢。

 その瞳が、青く輝いていた──氷魔法、暴走モード。


 でも。


(……すげぇ、キレてんのに、上品だな)


 不思議と、魅せられるものがあった。


 結果。

 建物の一部が凍結し、身分登録が一時中断。

 だが事件は、さらに続く。


「……あら。あなた、皇帝からの召喚状が来てますわね」


 怒りを沈めたリナが、淡々と封筒を差し出してきた。


「まさかとは思いますけど。貴方も、“選ばれた側”?」


「さあ。帝都って、ミスを“見なかったことにできる”街らしいですし」


「こんなひとと組むなんて・・・」


「信じたの? ……それが、君の負けだよ」


 ふたりの間に、火花が散った。

 そして凍った。


 受付のモブ女子が、こっそり呟いた。


「……これ、絶対、相性最悪からのバディ化するやつじゃん」



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