終末の海テルミナス
星空を映す海が、静かに波打つ。テルミナス、終末の海。無数の浮島が点在し、虹と嵐が交錯するこの海域は、まるで世界の果てのようだ。ルシアンは、空飛ぶ船の甲板に立ち、灰色のマントをなびかせ、星屑の羅針盤を握りしめる。隣にはエリナが、金髪のポニーテールを揺らし、緑のチュニックに身を包んで目を輝かせる。
「うわっ、師匠! この海、めっちゃキラキラしてる! なんかドキドキするね!」
彼女の声は、風と波の音に混じって響く。
「騒ぐな。ここは世界の均衡がかかった場所だ」
ルシアンは冷静に返すが、エリナの無邪気な笑顔に、ほのかに心が和む。羅針盤の針は、テルミナスの中心――「星の心臓」が眠る巨大な水晶柱を指していた。クロノシアで「時間の歯車」を手に入れた後、羅針盤は時間と空間を操る力を獲得し、この心臓が旅の最終目的だと示唆している。ルシアンはその重みを胸に刻みつつ、師匠クロノスの魂が宿る羅針盤に導かれていた。
テルミナスは、定住者のいない神秘的な海域だ。浮島には古代の魔法使いたちが残した遺跡が点在し、空間と次元を歪める「混沌魔法」が漂う。星の心臓は、すべての魔法の源とされ、世界の均衡を保つ力を持つ。熟練者でさえ狂気に陥る危険な混沌魔法は、空間を改変し、幻影や次元の裂け目を生み出す。海域の空気は、星の光と嵐の緊張感に満ち、水晶柱は青と紫の輝きを放つ神聖な存在感を漂わせる。
船が浮島の港に着くと、ルシアンとエリナは石の階段を下りる。エリナは
「師匠、この島、なんか浮いてる感じがヤバい! 最終ボス出てきそう!」
と笑う。ルシアンは
「油断するな。敵はこれまでとは桁違いだ」
と警告し、羅針盤を握りしめる。
×
浮島を進むと、突然、空が暗くなり、雷鳴が響く。黒いローブをまとった男が現れる――暗黒魔導士ヴァルドリン、ルシアンの師匠クロノスの宿敵だ。
「ルシアン、エリナ。星の心臓を渡せ。さもなくば、世界を混沌に沈める」
彼の声は低く、海全体に響く。ヴァルドリンは羅針盤の秘密を知り、クロノスの魂を嘲笑う。
「クロノスは私の前に敗れた。お前も同じだ」
ルシアンの目が鋭くなる。
「ヴァルドリン、お前の野望はここで終わる」
エリナは
「師匠、こいつ、めっちゃ悪者っぽい! やっちゃおう!」
と拳を握る。ヴァルドリンは笑い、混沌魔法で空間を歪め、二人を別次元に引き離す。島々が揺れ、嵐が荒れ狂う。
ルシアンは暗い次元に閉じ込められ、クロノスの死や過去の失敗が幻影として現れる。
「お前は守れなかった!」
幻影の声が響き、ルシアンは心を揺さぶられる。一方、エリナは別の次元で、ミストヴェイルでの魔力暴走や仲間を危険に晒した記憶に襲われる。
「私のせいで……」
彼女が呟くが、すぐに立ち上がる。
「違う! 師匠と一緒に乗り越えてきた!」
エリナは自然魔法で光る花を咲かせ、
「フローラ・リンク!」
と唱える。彼女の魔法は次元の裂け目を作り、ルシアンに届く。
「師匠! 私、絶対諦めないよ! 一緒に戦おう!」
ルシアンは彼女の声に力を取り戻し、
「クロノス・ブリーチ!」
で次元を破る。二人は再会し、ヴァルドリンに立ち向かう準備を整える。
×
水晶柱の前にたどり着くと、ヴァルドリンが待ち構える。星の心臓は、巨大な水晶の中で赤と金の光を脈打つ。ヴァルドリンは混沌魔法で巨大な幻影の怪物や次元の嵐を召喚し、浮島を揺さぶる。ルシアンは
「クロノス・スタシス!」
で嵐を遅らせ、エリナは
「フローラ・ハーモニー!」
で海と島の植物を結集し、幻影を押し返す。
「師匠、めっちゃやばいけど、私たちならいけるよね!」
エリナの笑顔に、ルシアンは
「君を信じる」
と頷く。二人の魔法が融合し、新技「星花の刻」が発動。青い時間の波紋と光る花弁が絡み合い、ヴァルドリンの混沌魔法を浄化する。羅針盤が光り、クロノスの魂が現れ、
「ルシアン、エリナ。未来を切り開け」
と力を貸す。星の心臓が輝き、ヴァルドリンは次元の彼方へ追放される。
×
戦いの後、星の心臓はテルミナスの海に新たな光をもたらし、浮島が安定を取り戻す。ルシアンは
「エリナ、君は私の時間を変えた」
と感謝し、エリナは
「師匠と一緒なら、どんな冒険も怖くない!」
と笑顔で返す。羅針盤が再び動き、新たな目的地を指す。
夜、浮島の縁で星空を見ながら、エリナが問う。
「師匠、次はどこ行く?」
ルシアンは
「次はお前が羅針盤を握れ」
と微笑む。エリナは
「どこへ行く?」
と笑顔で応じ、二人は新たな冒険へ旅立つ。