表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

光る森の王国ヴェルディア

木漏れ日が緑の光を投げかけ、苔むした地面に光るキノコが点在する。ヴェルディアの樹海は、巨大な樹木が空を覆い、まるで生きているかのようにざわめく。ルシアンは、灰色のマントを肩にかけ、星屑の羅針盤を手に樹海の入り口に立つ。隣にはエリナが、金髪のポニーテールを揺らし、緑のチュニックに身を包んで目を輝かせる。


「うわっ、師匠! この森、めっちゃ生きてる感じ! 私の魔法、絶対ハマるよ!」


彼女の声は、鳥のさえずりと共に樹海に響く。


「騒ぐな。森は静寂を好む」


ルシアンは冷静に返すが、エリナの無邪気な興奮に、ほのかに口元が緩む。羅針盤の針は、樹海の奥――「生命の樹」と呼ばれる巨大な樹を指していた。クリスタルヘイムで「永遠の氷」の欠片を得た後、羅針盤は新たな力を獲得し、この樹に宿る「生命の種」が次の鍵だと示唆している。ルシアンはその意図を測りかねつつ、師匠クロノスの魂が宿る羅針盤に導かれ、旅を続けていた。


ヴェルディアは、生命魔法が発達した王国だ。住民は「森の民」と呼ばれ、植物や動物と対話しながら自然と共生する。中央にそびえる生命の樹は、森の心臓であり、夜には光るキノコや蛍が星空のように輝く。生命魔法は、植物や動物を操り、傷を癒し、自然の力を増幅する力で、高度な使い手は森全体を動かすことができる。樹海の空気は、湿った土の香りと生命力に満ち、どこか神秘的な静けさが漂う。


ルシアンとエリナは、苔むした小道を進み、森の民の集落にたどり着く。木の家屋は樹木と一体化し、屋根には光る花が咲いている。エリナは


「師匠、この家、めっちゃ可愛い! 住みたい!」


と笑う。ルシアンは


「観光気分はやめろ。目的は生命の樹だ」


とたしなめるが、彼女の自然への親和性に期待を寄せる。


×


集落で、二人は樹の語り手リリエンに迎えられる。リリエンは60代の女性で、緑と金のローブをまとい、穏やかな微笑みを浮かべる。


「時間魔法のルシアン、生命魔法のエリナ。ようこそ、ヴェルディアへ」


彼女の声は、風にそよぐ葉のようだ。


「だが、森は今、危機に瀕している」


リリエンは説明する。生命の樹の力が衰え、森全体が静まり、光るキノコの輝きが弱まっている。原因は、樹の根に巣食う「闇の菌」――魔物化した菌類で、森の生命力を吸い取っている。リリエンは二人に試練を課す。


「生命の樹を救うには、森の守護獣シルヴァンの協力を得ねばならない。汝らの心と力を試す試練だ」


「試練!? めっちゃ面白そう! シルヴァンってどんなやつ?」


エリナが目を輝かせる。ルシアンは


「軽率だな。だが、羅針盤がここを指した。受ける」


と答える。リリエンは微笑み、


「シルヴァンは森の魂だ。誠実な心だけが彼を動かす」


と告げる。


試練の場は、樹海の深部――光が届かぬ暗い森だ。道中、闇の菌が作り出す黒い霧が二人を襲う。ルシアンは


「クロノス・バリア!」


で結界を張り、霧を防ぐ。エリナは


「フローラ・ライト!」


と唱え、光る花を咲かせ、霧を押し返す。


「師匠、めっちゃ暗いけど、私の花、綺麗でしょ?」


エリナが笑うと、ルシアンは


「集中しろ。敵はまだ見えていない」


と返す。


森の奥で、シルヴァンが現れる。巨大な鹿のような姿で、角は光る蔓ででき、緑と金のオーラを放つ。


「汝らの心、試させてもらう」


シルヴァンの声は、森全体に響き、エリナに試練を課す。


「自然と対話し、森の意志を理解せよ」


シルヴァンは幻影を作り、エリナの過去――ミストヴェイルでの魔力暴走を見せる。


「お前の力は破壊を生む」


と幻影が囁く。


×


エリナは幻影に動揺するが、ルシアンの声が響く。


「エリナ、過去は変えられない。だが、今の君は違う!」


彼は時間魔法で幻影の動きを遅らせ、エリナに考える時間を与える。エリナは深呼吸し、


「そうだよ、私には師匠がいるし、森も仲間だ!」


と叫ぶ。彼女は自然魔法を全開にし、森の植物や動物と対話。光るキノコが一斉に輝き、シルヴァンを感服させる。


「師匠、森と話すの、めっちゃ楽しい!」


エリナの笑顔に、ルシアンは


「君の魔力は底知れないな」


と感心する。シルヴァンは二人を生命の樹の根へ導き、闇の菌との戦いが始まる。


闇の菌は、黒い霧と触手を放つ巨大な魔物だ。ルシアンは


「クロノス・スロウ!」


で菌の増殖を遅らせ、エリナは


「フローラ・ハーモニー!」


で森全体を動かし、光るキノコと蛍の力を結集。菌を浄化する光が樹海を包む。二人の魔法が融合し、シルヴァンの祝福を受けた新技「森の光輪」が発動。緑と金の光が魔物を消滅させ、生命の樹が再生する。


×


シルヴァンは


「森の娘、エリナ。汝の心は森と共にある」


と認め、「生命の種」を授ける。種は羅針盤に取り込まれ、生命の気配を追跡する力を与える。リリエンは


「君たちの絆は自然の調和そのもの」


と称賛し、二人は集落で祝福を受ける。


夜、蛍が舞う森で、エリナは


「師匠、森と一緒に戦うの、最高だった! 次はどこ行く?」


と笑う。ルシアンは


「エリナ、よくやった」


と初めて名前で呼び、


「クロノシアだ。準備しろ」


と答える。エリナの笑顔に、ルシアンは深い信頼を感じていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ