光る森の王国ヴェルディア
木漏れ日が緑の光を投げかけ、苔むした地面に光るキノコが点在する。ヴェルディアの樹海は、巨大な樹木が空を覆い、まるで生きているかのようにざわめく。ルシアンは、灰色のマントを肩にかけ、星屑の羅針盤を手に樹海の入り口に立つ。隣にはエリナが、金髪のポニーテールを揺らし、緑のチュニックに身を包んで目を輝かせる。
「うわっ、師匠! この森、めっちゃ生きてる感じ! 私の魔法、絶対ハマるよ!」
彼女の声は、鳥のさえずりと共に樹海に響く。
「騒ぐな。森は静寂を好む」
ルシアンは冷静に返すが、エリナの無邪気な興奮に、ほのかに口元が緩む。羅針盤の針は、樹海の奥――「生命の樹」と呼ばれる巨大な樹を指していた。クリスタルヘイムで「永遠の氷」の欠片を得た後、羅針盤は新たな力を獲得し、この樹に宿る「生命の種」が次の鍵だと示唆している。ルシアンはその意図を測りかねつつ、師匠クロノスの魂が宿る羅針盤に導かれ、旅を続けていた。
ヴェルディアは、生命魔法が発達した王国だ。住民は「森の民」と呼ばれ、植物や動物と対話しながら自然と共生する。中央にそびえる生命の樹は、森の心臓であり、夜には光るキノコや蛍が星空のように輝く。生命魔法は、植物や動物を操り、傷を癒し、自然の力を増幅する力で、高度な使い手は森全体を動かすことができる。樹海の空気は、湿った土の香りと生命力に満ち、どこか神秘的な静けさが漂う。
ルシアンとエリナは、苔むした小道を進み、森の民の集落にたどり着く。木の家屋は樹木と一体化し、屋根には光る花が咲いている。エリナは
「師匠、この家、めっちゃ可愛い! 住みたい!」
と笑う。ルシアンは
「観光気分はやめろ。目的は生命の樹だ」
とたしなめるが、彼女の自然への親和性に期待を寄せる。
×
集落で、二人は樹の語り手リリエンに迎えられる。リリエンは60代の女性で、緑と金のローブをまとい、穏やかな微笑みを浮かべる。
「時間魔法のルシアン、生命魔法のエリナ。ようこそ、ヴェルディアへ」
彼女の声は、風にそよぐ葉のようだ。
「だが、森は今、危機に瀕している」
リリエンは説明する。生命の樹の力が衰え、森全体が静まり、光るキノコの輝きが弱まっている。原因は、樹の根に巣食う「闇の菌」――魔物化した菌類で、森の生命力を吸い取っている。リリエンは二人に試練を課す。
「生命の樹を救うには、森の守護獣シルヴァンの協力を得ねばならない。汝らの心と力を試す試練だ」
「試練!? めっちゃ面白そう! シルヴァンってどんなやつ?」
エリナが目を輝かせる。ルシアンは
「軽率だな。だが、羅針盤がここを指した。受ける」
と答える。リリエンは微笑み、
「シルヴァンは森の魂だ。誠実な心だけが彼を動かす」
と告げる。
試練の場は、樹海の深部――光が届かぬ暗い森だ。道中、闇の菌が作り出す黒い霧が二人を襲う。ルシアンは
「クロノス・バリア!」
で結界を張り、霧を防ぐ。エリナは
「フローラ・ライト!」
と唱え、光る花を咲かせ、霧を押し返す。
「師匠、めっちゃ暗いけど、私の花、綺麗でしょ?」
エリナが笑うと、ルシアンは
「集中しろ。敵はまだ見えていない」
と返す。
森の奥で、シルヴァンが現れる。巨大な鹿のような姿で、角は光る蔓ででき、緑と金のオーラを放つ。
「汝らの心、試させてもらう」
シルヴァンの声は、森全体に響き、エリナに試練を課す。
「自然と対話し、森の意志を理解せよ」
シルヴァンは幻影を作り、エリナの過去――ミストヴェイルでの魔力暴走を見せる。
「お前の力は破壊を生む」
と幻影が囁く。
×
エリナは幻影に動揺するが、ルシアンの声が響く。
「エリナ、過去は変えられない。だが、今の君は違う!」
彼は時間魔法で幻影の動きを遅らせ、エリナに考える時間を与える。エリナは深呼吸し、
「そうだよ、私には師匠がいるし、森も仲間だ!」
と叫ぶ。彼女は自然魔法を全開にし、森の植物や動物と対話。光るキノコが一斉に輝き、シルヴァンを感服させる。
「師匠、森と話すの、めっちゃ楽しい!」
エリナの笑顔に、ルシアンは
「君の魔力は底知れないな」
と感心する。シルヴァンは二人を生命の樹の根へ導き、闇の菌との戦いが始まる。
闇の菌は、黒い霧と触手を放つ巨大な魔物だ。ルシアンは
「クロノス・スロウ!」
で菌の増殖を遅らせ、エリナは
「フローラ・ハーモニー!」
で森全体を動かし、光るキノコと蛍の力を結集。菌を浄化する光が樹海を包む。二人の魔法が融合し、シルヴァンの祝福を受けた新技「森の光輪」が発動。緑と金の光が魔物を消滅させ、生命の樹が再生する。
×
シルヴァンは
「森の娘、エリナ。汝の心は森と共にある」
と認め、「生命の種」を授ける。種は羅針盤に取り込まれ、生命の気配を追跡する力を与える。リリエンは
「君たちの絆は自然の調和そのもの」
と称賛し、二人は集落で祝福を受ける。
夜、蛍が舞う森で、エリナは
「師匠、森と一緒に戦うの、最高だった! 次はどこ行く?」
と笑う。ルシアンは
「エリナ、よくやった」
と初めて名前で呼び、
「クロノシアだ。準備しろ」
と答える。エリナの笑顔に、ルシアンは深い信頼を感じていた。