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砂漠の王国サハラド

灼熱の陽光が金色の砂丘を照らし、揺らめく陽炎が地平線を歪ませる。ルシアンは、灰色のマントを砂埃で汚しながら、サハラドのオアシス都市の門前に立った。隣には、エリナが、汗だくで金髪のポニーテールを揺らしながら歩いている。


「うわ、めっちゃ暑い! 師匠、こんなとこ初めて!」


彼女は目を輝かせ、革のブーツで砂を蹴り上げる。ルシアンはため息をつき、


「騒ぐな。熱中症になるぞ」


と冷静にたしなめる。


ルシアンの手には、「星屑の羅針盤」が握られている。ミストヴェイルでの騒動を収めた後、羅針盤の針はサハラドの奥深く、古代の魔法遺跡を指していた。「太陽のオーブ」と呼ばれる古代の魔法装置がそこに眠り、羅針盤の力を強化する鍵だと暗示している。ルシアンはその意図を測りかねながらも、旅を続ける理由を感じていた。エリナはミストヴェイルで彼に同行を認められ、師匠と呼んで慕うが、ルシアンはまだ彼女を「無鉄砲な子供」と半ば呆れつつ見ている。


サハラドは、広大な砂漠に点在するオアシスを中心に栄える王国だ。中央の都市は、色とりどりのテントや絨毯が並ぶバザールで賑わい、スパイスや果実の香りが漂う。遊牧民と商人が共存し、砂と風を操る「砂塵魔法」が発達している。夜には星空の下で焚き火の祭りが開かれ、「風の詩」と呼ばれる歌が歴史や魔法を伝える。ルシアンとエリナは、都市の門をくぐり、市場の喧騒に飛び込む。


「うわ、めっちゃ活気ある! 師匠、あの串焼き食べようよ!」


エリナは屋台を指差すが、ルシアンは


「食い物より情報を集めろ」


と一蹴。羅針盤を手に、遺跡の場所を知る案内人を探す。


×


市場の奥で、ルシアンは案内人の老人を見つけ、遺跡の情報を聞き出す。老人は、遺跡が砂漠の奥にあり、「太陽のオーブ」を守る古代の罠が眠ると警告する。


「気をつけな。砂狼団がオーブを狙ってるよ」


と老人が囁く矢先、市場に叫び声が響いた。


砂塵が巻き上がり、黒いターバンを巻いた一団が現れる。砂狼団――砂塵魔法を操る盗賊団だ。リーダーのザヒルは、背が高く、鋭い目つきの男で、砂を剣に変えて振りかざす。


「水源を渡せ! さもなくばオアシスを干上がらせる!」


彼の声に、住民たちは怯えて後退する。


ルシアンは冷静に状況を分析し、エリナに囁く。


「水源を人質に取られたら、都市は終わりだ。動くぞ」


エリナは目を輝かせ、


「了解、師匠! やっちゃおう!」


と拳を握る。


ルシアンは片手を挙げ、


「クロノス・スタシス!」


と唱える。青い光が広がり、ザヒルの砂の剣が一瞬止まる。住民たちが避難する隙を作り、ルシアンは結界魔法で水源を守るバリアを張る。エリナは


「フローラ・ガーディアン!」


と叫び、オアシスの水辺から巨大な植物の壁を召喚。盗賊団の攻撃を防ぐが、ザヒルは砂塵魔法で巨大な砂嵐を呼び、都市を飲み込もうとする。


「うわ、めっちゃやばい! 師匠、どうする!?」


エリナは砂嵐に目を細めながら叫ぶ。ルシアンは


「落ち着け。嵐の中心を狙う」


と指示。時間魔法で嵐の動きを遅らせ、エリナに


「植物で砂を抑えろ」


と命じる。エリナは地面に手を押し当て、地下水脈を引き出し、植物の根で砂を固める。嵐は弱まり、ザヒルは一時撤退するが、


「オーブは俺たちのものだ!」


と捨て台詞を残す。


市場は一時的に平静を取り戻すが、住民たちは不安げだ。ルシアンとエリナは老人から遺跡の正確な位置を聞き出し、準備を整える。エリナは


「師匠、盗賊団ってめっちゃ強そう! でも、私たちなら勝てるよね?」


と笑顔。ルシアンは


「過信するな。だが、君の魔法は役に立つ」


と認め、彼女の笑顔にわずかに心が和む。


×


翌朝、ルシアンとエリナはラクダに乗り、灼熱の砂漠を進む。遺跡は砂丘の奥、崩れかけた石柱が並ぶ谷間に隠れている。入り口は巨大な石の門で、砂に半ば埋もれ、古代の魔法文字が刻まれている。羅針盤が強く反応し、ルシアンは


「ここだ」


と呟く。


遺跡内部は薄暗く、砂塵が舞う回廊が続く。壁には太陽神の彫刻が並び、罠が仕掛けられている。最初の罠は、砂が突然動き出し、二人を飲み込もうとする。ルシアンは


「クロノス・バリア!」


で結界を張り、砂の動きを防ぐ。エリナは


「フローラ・バインド!」


で植物の蔓を召喚し、砂を固める。


「師匠、めっちゃ息ピッタリじゃん!」


と彼女が笑うと、ルシアンは


「調子に乗るな」


と返すが、内心で彼女の即興力に感心する。


さらに奥に進むと、巨大なゴーレムが現れる。砂と金属でできた人形で、太陽の紋章が輝く。ゴーレムは重い拳を振り下ろし、ルシアンは時間魔法で動きを遅らせ、エリナは蔓で足を絡めて倒す。エリナの


「このゴーレム、ちょっとカッコいいかも!」


という呟きに、ルシアンは


「敵を褒める暇があったら集中しろ」


と一喝。


遺跡の最深部にたどり着くと、巨大な祭壇に「太陽のオーブ」が浮かんでいる。金色の球体で、内部に炎のような光が揺らめく。羅針盤が激しく反応し、ルシアンはオーブに手を伸ばす。だが、その瞬間、ザヒルと砂狼団が現れる。


「そのオーブは俺たちのものだ!」


ザヒルは砂塵魔法で攻撃を仕掛ける。


×


ザヒルは巨大な砂嵐を召喚し、遺跡全体を揺さぶる。砂の刃がルシアンとエリナを襲い、ルシアンは結界で防ぎつつ、


「クロノス・スロウ!」


で嵐の速度を遅らせる。エリナは


「師匠、任せて!」


と叫び、地面に手を押し当て、地下水脈を引き出す。


「フローラ・オアシス!」


彼女の魔法で、遺跡に緑の植物が溢れ、砂嵐を鎮める。


ザヒルは怒り、


「お前たち、ただの旅人じゃないな!」


と叫び、砂を槍に変えて突進。ルシアンは時間魔法でザヒルの動きを一瞬止め、エリナが植物の網で捕らえる。二人の連携にザヒルは圧倒され、膝をつく。


「なぜオーブを狙う?」


ルシアンが問うと、ザヒルは


「金だ。オーブを売れば、砂漠の民は飢えない」


と吐露。エリナは


「それなら、もっと良い方法があるよ! 師匠、助けてあげよう?」


と提案。


ルシアンはため息をつき、


「君の甘さには呆れるが…」


と呟き、ザヒルに


「オーブは渡せないが、都市と協力する方法を考えろ」


と提案。ザヒルは改心の兆しを見せ、盗賊団を解散させることを約束する。


×


ルシアンは「太陽のオーブ」を羅針盤に接続し、羅針盤が新たな光を放つ。オーブの力で、羅針盤は遠くの魔法の気配を感知する能力を得る。


「これで、次の目的地が明確になる」


とルシアンは呟く。エリナは


「師匠、めっちゃカッコよかったよ! 私も負けないように頑張るね!」


と笑顔。ルシアンは


「無謀すぎるが…結果は悪くなかった」


と認め、初めて彼女の成長を口にする。

夜、都市の焚き火祭りで、ルシアンとエリナは住民たちと過ごす。エリナは「風の詩」を聞きながら、


「師匠、世界ってほんと広いね。次はどこ行く?」


と問う。ルシアンは羅針盤を見つめ、


「アエリスだ。準備しろ」


と答える。エリナの笑顔に、ルシアンは小さな希望を感じていた。

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