第三話 動き出す
「モモアこのおっさんヤバイな」
「うん、頭打ったのかな…」
「はぁ?頭打ったとか、あんた大丈夫?モモア変わったとこあるし心配やわぁ」
「何が?」
「何がて またその後どうですか?とか連絡するんやろ」
「うん…」
「やっぱりな。そやけどヒロシなんなん?」
「私が…おもいんだって…」
「まぁ、ちょわかるけど」
「ゆかり聞いてよ、さっきの電話の人ね、失恋したんですって言ったら だから? とか言ったのよ!」
「あんたそんなんまで話してるん?」
「違う違う、話の流れで」
「ふ〜ん。なんか あんた このおっさんと仲良くなったら性格明るなるんちゃう(笑)?」
「ちょっと ゆかり!」
「冗談冗談、ごめんごめん。あぁ!浴衣どーすんの?ほら京都で作ったヒロシとほら、琵琶湖花火大会の為の」
「あぁ!どしよ…もう仕上がるし…」
「仕方ない、よし!じゃ うちと行くか!」
「ゆかり 行く人いないの?ほら、バスの運転手さんとか」
「あ〜あの人は違うんだなぁ、なんだろなぁ、ランチはいいけどディナー駄目的な(笑)」
「わかんない」
「微妙にデート的な雰囲気はNGかな」
「どして?いい人じゃん」
「いい人なんやけどな〜。それだけかなぁ」
「そうなんだ…」
「はいはい うちの話は終わり!面白いから もっかい携帯貸して、かけてみる(笑)」
「やだよ」
「お願い。ね、もっかいだけ あのおっさんにかけたいねん(笑)」
「ちょっとゆかり、失礼だよ」
「モモアお願い、ね」
「え……はぃ、じゃ最後ね」
プルプルプルプルプルプル
「はい」
「あ、あの…こないだぶつかった…」
「あ〜何回もすみませんね、ほんと大丈夫ですから」
「……(あら?めっちゃ普通やん)そ、そうなんですか」
「はい、あなたのおかげです」
「はい?」
「あなたのおかげで脳に菌が入りクリアになりました。有難うございます」
「は、はぁ…えっと…」
「信じますか?」
「は?」
「苦しい時も嬉しい時も」
「は?」
「信じますか?」
「えっと…」
「あなたは信じますか」
「何をです?」
「きっとあなたは信じますよ あれを」
「だから何を?」
ガチャ プープープー
「あ!きれた…モモア…やっぱこのおっさんヤバい」
「どしたの?」
「信じますかやて」
「何を?」
「しらん」
「……」
カランカラン
「よぉサクラ〜早いやんけ」
「うん、仕込み手伝うわ。マスターニタニタ嬉しそうにどしたん?」
「見てみこれ、サクラ信じられるけ」
「うわぁ双子?」
「うむ、出汁巻き作ろおもてな、卵割ったら黄身2つて、信じられへんやないか!おいちゃん産まれて初めて見たわい」
「わたしも〜。で、マスターいくつ?」
「うむ、おむつ」
「(どさくさ攻撃失敗)ほんま信じられへんなぁ」
「そやサクラ、井上のドラ息子が お前さんとデナーに行きたいらしいぞ」
「ディナーやろ」
「最近はそーともゆーらしいな。どないするねん。あいつとデナー行くなら 絶交な」
「はぁ…マスターはガキか!絶交て…タッチミッキバリアとか…凄い人を傷つけた遊びやな」
「可愛い顔してすること鬼やないかゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」
「行かへんよ。井上さんの息子タイプちゃうし…つか…嫌いやねん」
「うむ…サクラはどんなんがタイプなんや」
「マスター見たいな人。あははな〜んてね」
「そうなんか」
「ちょっとちょっと、そこは なにゆ〜てけつかる やろ!」
「サクラ…」
「え?…なに?真剣な顔してどしたん?」
「あんな」
「(ドキドキヤバい)ななな何よ」
「おいちゃん実は前から」
「(あかんあかんドキドキ)ちょちょ」
「めっちゃ うんこしたいねん」
「どついたろか!そのまま一緒に流されろ」
「そないおこらんでも…ちょっとトイレ」
テクテクテク
「(はぁ…マスターのあほ)あほっ」
「なんかゆ〜たけ〜?」
「いちいちトイレの中から話してこんといて」
「はーい」
カランカラン
「すいません まだ…あ!」
「サクラちゃん、こんばんは。ひ、ひとりかな?」
「え?あ、ま、まぁ。井上さんどしたん?まだ開店準備中やねんか」
「うん、えとな、僕と 淡海ザホテイル でディナーいきませんか?」
「え?あ、えと、その」
「これチケットです。もし良かったら」
「あ、あの…聞いていい?」
「何を?」
「門脇さんに ヨッチャーあげた?」
「うん。それが?」
「前歯…抜けたって…」
「え!あれで?歯茎いってしもてたんかな」
「責任感じないの?」
「なんの?」
「僕がヨッチャーあげなければ門脇さんは とか」
「なんでそーなるの?じゃサクラちゃんはマスターにヨッチャーあげてマスターの歯が抜けたら責任感じる?」
「うん、死ぬまで忘れられないし、悪いことしたと、十字架背負っていきてく」
「え?…僕どしよ…そんな大変な事をしてしまったんだ」
「そうだよ。ディナーとか浮かれてないで手土産1つでも持って謝りに行ったら?」
「…どしよどしよどしよ」
「井上さん、大丈夫。門脇さんは心広いから、きっと許してくれるはずだよ」
「うん、じゃすぐにでも行くね。あ、じゃこのチケット2枚あるから誰かと行って!アドバイス有難う。じゃ」
「うん」
カランカラン
カラカラ
ジャー
バタン
「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ腹痛いゲラゲラ便所の中でお前さんらの話聞いてたらゲラゲラ」
「ちょっとマスター私も必死なんやし」
「アホぬかせ、ごめん無理やねんで済む話やないかい。何が十字架背負ってやねん」
「だって…傷つけたら悪いし」
「ゲラゲラ〜あいつアホやし、手土産かったい堅い おかき買いよるぞ」
「え〜また門脇さん歯が」
「うむ…もうな、酷すぎるねん笑顔が」
「門脇さん?」
「お前のおかんもやけど、なんで化粧しよらんねん」
「私のお母さんは邪魔くさらしいわ」
「おかんは邪魔くさいんか」
「うん、よっぽどじゃないと化粧せーへんて。あ、そや、このディナー券どうしよ」
「ドラ息子はサクラと行きたかったんやろな」
「だって…無理やもん」
「そやな、仕方ないよな」
「マスター一緒にいく?」
「なんでやねん!ドラ息子に返してこい」
「せっかくやし」
「お前悪いな〜」
「くれはったんやもん」
「おいちゃん人のチケットでよ〜いかんわ」
「明後日やて」
「店休みやないか何時や?」
「18時」
「用事ないぞ」
「私も」
「おいちゃんテブラママ知らんぞ」
「は?誰が手ブラなんよ」
「みんなよ」
「何ゆ〜てんの?」
「ナイフとフォークでカチャカチャ」
「テーブルマナーか」
「そやぞ!お前さんちゃんと覚えとけよ」
「外から使っていくんやんな?」
「知らん」
「え?マジかー」
「箸くれゆーわい」
「ちょっとマスター、フレンチの雰囲気楽しもうよ」
「うむ…ジャージやな」
「はぁ終わってんな」
「ゲラゲラゲラゲラ行く気満々やないか」
「ほんまによ」
「ゲラゲラゲラゲラ ドラ息子すまん」
「井上さんごめんマスターといくわ」
「ゆかりぃ、やっぱ神を信じるかじゃない?」
「そうやんなぁ、あのおっさん信仰心バリバリなんやろか…菌がまわって…ゆーてた気するわ」
「菌?」
「うん、頭がクリアになって…あなたのおかげですって。モモアなんかしたん?」
「してないしてない。ぶつかっただけだよ」
「そかぁ…あんた信じる?」
「え?幽霊と未確認飛行物体は信じるかな」
「うちも。宇宙人はいるな」
「うん、絶対いるね」
プルプルプルプル
「はい」
「あ、こちら京都の浴衣専門店のユーカッタゲッチューでございます。ご注文の商品ちょっとシースルーチックで彼氏もウハウハデロンデロン生地仕上げができましたので」
「(はっず…言わなくても)はい行きます。すぐ行きます。おいくらですか?」
「はいこちらの ちょっとシースルーチックで彼氏もウハウハデロンデロン生地しあげは9万5800円となります」
「わわわかりました。はいはい行きます」
ガチャ
「あはは〜モモアあんたそんなん頼んでたん?へー巨乳振り乱してやらしーわ〜」
「ちちち違うの…それしか余ってなくて仕方なく」
「はいはい仕方なくね(笑)やらし〜」
「ちょっと ゆかりぃ」
「どこがシースルーなん?」
「…おへそ…と かた…」
「あははははー最高!それでヒロシをメロメロのつもりがあははは あんた振られてやんの(笑)」
「いやだ~、もう、最悪だよ」
「よしよし良い子良い子」
「え〜ん…」
カランカラン
「いらっしゃい」
「まいど」
「またお前か!まいど」
今日も賑わうスウィーティ
カランカラン
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃい」
「こんばんは」
「あ!確かKOGANDAYOYOの」
「はい、前から気になってまして」
「気になってたらすぐ来るやろがゲラゲラ」
「ちょっとマスター!」
「あはは、ですよね。ビールお願いします」
「はいよ」
この日
初めてスウィーティにご来店の
カフェの やすえ さん。
「はいどうぞ」
宜しくお願いします。
スウィーティには
順さん、小橋さん、たっちゃん
そして やすえさん。
マスターはグラスを拭いていた。
横顔が素敵だった。
ライトも程よくマスターを照らし
いっそう素敵に見えた。
「あの あなたお名前は?」
「あ、サクラと申します」
やすえさんは
私を呼び、小声で
「あなたタイプでしょ」
とマスターを小さく指さした。
「あはは〜やめてくださいよ〜ゾンビですからね」
私は逃げるかの様に静かに返事をした。
「マスター!ビールもらおうかしら」
「はいよ」
「マスターって男前ですよね」
「ゲラゲラゲラゲラ聞き慣れて耳痛いわい」
「私タイプよ」
やすえさんは
初対面のマスターにガンガン話していた。
私は見ないように
小橋さん達と話していた。
ですよね〜 や あははー
など
やすえさんの声が気になった。
「サクラなんか顔怖いぞ」
たっちゃんが私の顔を見て言った。
「私って不細工かなぁ」
「なんやどしたんや?」
「別に!」
「なんやねん」
マスターが私を呼んだ
「サクラちょっと」
「何?」
「明日散髪行くからな」
「はぁ?そんな事」
「うむゲラゲラ」
「お二人って仲良いんですね」
「ゲラゲラ〜サクラはおいちゃんが好きやさかいに。な」
「ないわ禿げ!(はぁ…もぅしらん)」
「ゲラゲラゲラゲラ禿げて。毛あるやないか!どないしたねん」
「マスターって最低!」
私はスタッフルームに入り頭を冷やした。
そしてすぐに切り替えて接客を頑張った。
カランカラン
「有難う」「おおきに」
みんなが帰り
いつものようにマスターと一緒に帰った。
「まだまだ暑いね」
「ゲラゲラ8月やさかいな。テブラママ覚えとけよ」
「はいはい」
「今日はどないしたんや?調子あがらんかったんか?順がゆーとったぞ、カクテルが混ざりきってへんてな…」
「え!(マジか順さんごめん)明日からまた頑張るわ」
「そやな。ほなゆっくり休めよ。キミエにも宜しくな」
「うん、今日も有難う。あ、そや」
「どないしたんや?」
「カフェのやすえさんって綺麗よね」
「そやな」
「マスタータイプ?」
「あほぬかせ」
「なんでよ〜美人好きやん」
「色々あるんや!はよ家入れ」
「は〜い、じゃまた」
「うむ、グッドなナイト」
「おやすみ」
優しい背中が闇夜に消えてゆく。
消えるまで見届け 私は
家に入った。
「おかえり!」
「お母さんビックリするやんか!」
「トイレやんか!風呂はいりや」
「朝はいるし」
「お母さん寝るで!あんた井上の息子になんかゆーたか?」
「なんで?」
「ま、ええわ。おやすみ」
「おやすみ」
ギーバタン
部屋に入り
暫くボーッとしていた。
そしてクッションを抱きしめ
ディナーを楽しみに
寝た。