第二話 私 失恋したんだょ
「ゲラゲラゲラゲラッ腹痛い…アホか笑」
「そやけどマスター…いつの間に美人なゾンビに電話したんよ」
「ウム…てか順よ、な、順よ、いちいち な をつけるなよっ。美人ゾンビじゃ」
「ごめんて、そんで その美人なゾンビはどんな感じなんよ」
「ウム…聞いとらんなハゲッ笑。サクラより美人やゲラゲラゲラゲラ」
「ちょっとマスターッ!もぅ店閉めへん?」
「まだこいつがおるやないか」
「たっちゃんと小橋さんは帰ったやんか」
「あほぬかせ、まだこいつおるやないか」
「順さんごめん、帰ってくれへん?」
「うわっ!言いよった 笑」
「マスターかて 順さんを お前か!とかハゲッ!とかゆ〜てるやんか」
「おいちゃんは連れやさかい」
「私かて順さんとは古い付き合いやもん。な、順さん」
「そやで、サクラちゃんは可愛いし、僕は独身やから
結婚しちゃう?」
「えっ?…それは…いや…つか…マスターら、何歳なん?」
「サクラ、な、サクラょ、おいちゃんな、それ嫌いやねんゲラゲラゲラゲラ。飲みに行って 何歳ですか〜?いくつに見える?ん〜30くらいかな、惜しい、じゃ28?ブブー。え〜じゃ31かな?アホか、あがっとるやないか!じゃ29。ブブー。もぅ何歳なんよ!!文化祭じゃ!ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」
「はぁ…順さん、帰ろか」
「うん、やっぱり頭に菌回ってるな…マスターおおきに帰るわ」
「やっと帰えんのか!はよいね」
「あはは…また明日くるわ」
「はいよ」
「順さんありがとね」
「んじゃ」
カランカラン
「お疲れさまんさ〜っ。サクラもう帰らいな、おいちゃん片付けしとくさかいに」
「いいよいいよ手伝うって」
「そか、すまんなってゲラゲラゲラゲラんで毎晩おいちゃん送っとるやないか〜。ま、夜道は危ないさかいな」
「うん。こんな美人で…困っちゃう。で、ゾンビってどんな人?」
「ウム…アホまるだしやないか。そもそもゾンビって人なんか?」
「は?今そんなんいらんねん、真剣に聞いてるの!」
「なんで?」
「はぁ?聞いたらあかんの?」
「かまへんけどよ」
「で、どんなん?」
「何が?」
「ゾンビよ」
「ムーンミュージック行ってレンタルしてこい」
「なんでよ!」
「ゾンビがどんなんか知りたいんやろが」
「はぁ…もぅいい。なんかマスターと話ししてたら疲れるわ」
「あほか!今観てる韓流ドラマの129話も疲れるぞ」
「あれ観てるん?なんやったっけ」
「ペテンの罠やんな」
「ペカンの罪やろ?」
「ん?ちゃうぞ!エデンの民やったか?」
「あれ…なんやったっけ」
「帰って見て電話したるわ」
「電話てもぅ3時やんか」
「ほな明日教えたるわ」
「うん…そやけど…ほんま肘大丈夫なん?」
「あぁどもないさかいに。ほな帰ろか」
「うん」
私はマスターと店を出た。
夏の暑い夜。
「まだまだ暑いね」
「ん〜50度くらいけ?」
「なんでやねん!」
40歳くらいなのかなぁ………
いや…50前か……
30代か…な…
かなり若く見えるし…若いのかな…
「なぁマスター何歳?」
「地鎮祭!ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」
「もぅ!」
「絶対誰にも言うなよ」
「うんうんうん、で?」
「お野菜」
「……お疲れッ!くそおやじ〜〜っ!」
私は家の前でマスターを追い払った。
「お疲れ〜っ!キミエによろしくな」
「は〜い。グナイ」
「グッドなナイト!」
あ、キミエは私のお母さんね。
マスターはいつも歩いて家の前まで送ってくれる。
そしていつも「グッドなナイト」と言って1人暗闇に消えてゆく。
カチャカチャ
「ただいま…」
(って…お母さん寝てるよね)
「おかえりっ!お母さんトイレやったねん」
「あ、ビックリした!ただいま」
「お風呂入って寝やいや」
「え…邪魔くさっ」
「あ〜も〜そんなんやし彼氏も出来ひんのよ。ちょっとお洒落して清潔にしなさいよ!お母さん寝るしな」
「清潔にて、汚いみたいやん」
「お風呂はいらへんしやんか」
「朝に入ってますぅ」
「はいはい、そうですね、そうしときます」
「なによ!」
「お・や・す・み」
「…もう!おやすみ」
私は部屋に入り、マスターより先にレンタルDVDを見た。
(プカンの罰……全然ちゃうやんか)
プルルプルルプルルプルル
「マスターどしたん?」
「おいちゃんや!」
「わかってるわ!もぅ夜中やし明日にするってゆ〜たやんか!つか家着いたん?」
「今着いたがな。ほんで何が明日にや?」
「韓流のタイトルよ」
「あ〜プカンの罰か!」
「は?知ってるやんか」
「当たり前やないけ!毎晩?毎朝方?みとるさかい」
「店では無茶苦茶ゆ〜てたやんか」
「あほっ!誰が聞いてるかわからんやないか」
「誰が聞くんよ笑」
「盗聴器あるかもしれんやないけ」
「うそっ?!て韓流ドラマのタイトル盗聴してなんか得するんかいな笑」
「ウム…世の中何があるかわからん」
「普通に生きてたら大丈夫ですよ」
「わかるかい!今日でも美人が噛んできょったやないか!門脇のおばはんは歯またなかったやないか! こはっちのジーパンほっそいほそいやないか!ん!な」
「はぁ…ごめんもぅ寝ていいかな?」
「寝ていいかなって、自分からかけてきて泣かしたろかゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ」
「あのさ、マスターがかけてきたの!」
「ウム、はよ寝ろよな。あ、そや、明日の」
ガチャ
「うわ最悪!あほっ」
(ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ切ったったわい続き観よ)
【プカン、あなた…。すまない、ずっと苦しかった。どうして?ねぇどうして?あの日から俺は変わったんだ。悪魔に魂を売り、プカンの名を捨てジェーンとして生きてきた】
(ジェーンてゲラゲラ)
【チョラマに復讐するために黙ってたんだ。すまないスチャラ。プカン…私は】
プルルプルルプルルプルル
(あぁええとこやないか!サクラやろ…無視無視 笑)
【スチャラ、今は君と結婚できないんだ!】
プルルプルルプルルプルルプルル
(あ〜も〜イラッするがな)
「もしもし!あんなぁ頼むわ、今え〜とこやないか!なんや?まだなんかあんのか」
「……あ…の……」
「は?寝るんちゃうんかい!おいちゃんは今いい所なの!わかる?い・い・と・こ・ろ」
「すみません…こんな…夜分に…」
「すみませんな気持ちなら明日にしろよ!なんや?わすれもんか?」
「……大丈夫でしたか?」
「大丈夫ちゃうわい!これからやんけ!あ〜も〜忘れたやないか!なんでプカンがジェーンになるねん!せめてマイケルやろが」
「…はい…すみません」
「は?関係ありまへんがな」
「ですよね…」
「ですよねってサクラ!はよ寝て…な、お願い。おいちゃん続き観たいの」
「あの……」
「なんやのんもぅ堪忍して〜な、な、お願い、バイト代あげたげるから」
「わ、私は…夕方の」
「まだゆ〜とんのかい!レンタル屋いけよ」
「聞いてくださいよっ!!」
「どしたねんっデカイ声出してビックリするやないか」
「大丈夫か聞いてるんですよ!」
「……は?なにが?」
「夕方ぶつかった者です」
「……あっゲラゲラゲラゲラすんまへんな、ゾンビちゃんでしたか。おいちゃん…サクラやと…」
「はい?ゾンビ?」
「おいちゃんの肘は美味しかったか?なんや君は夜行性なんか?こんな時間に」
「ずっと気になってまして…何が美味しいんです?」
「ウム…もぅな、4時半やねん。こんな時間に起きてたら おしっこ漏らすぞ」
「すみません…」
「どないしたんや?おいちゃんな、今な韓流ドラマ中やねん」
「わたし…今日失恋したんです。それでショックで下向いて歩いて…ぶつかってしまいました…」
「そうなんか。で?」
「え?」
「だからなんや?ほんで?」
「あ…」
「その連絡やったら、どもなさいさかいにな。ほなな」
「はい……すみませんでした」
「はいは〜い」
ガチャ
(…ちょっと失恋したのょ…大丈夫か…とか…ないのかしら…)
(ウム…やっぱりなぁ陰気臭かったしな…)
−翌日-
き〜こ〜き〜こ〜
「マスターおはよ〜」
「ゲラゲラ門脇のおばはん、もぅ昼やないか」
「買い出し?ニコッ」
「……おえっ、な、どないしたら そんなスマイルできまんねん?自分が歯ないのわかっとるんか?」
「うもぅまたからかう」
「からかうて…あんな、あんたは前歯が3本ありまへんねん。その顔で笑われたら、おいちゃんはな、右の鼻からムカデがでて、左の鼻から線香花火がでてまうやないか」
「マスター夏やなぁ〜私、夏好きやわ〜ニコッ」
「……ウッ……ほなな!」
「まって〜なマスター!そんな急がんでも」
キコキコキコキコキコキコ
「うもぅ。またお店いくね〜!」
「はいよ〜!よろしくメカドック」
プルルプルルプルルプルル
「内田さん、やっぱり出ないみたい」
「モモアちゃん……何かあったのかな…無断欠勤なんて」
「ウチ今からマンション行ってきますわぁ」
「ゆかりちゃんお願い。で連絡頂戴」
「はい、行ってきます」
「はぁ…ねちゃっ……え?あ、どしよどしよ…え〜っもぅ昼まわってる…うわぁ…」
私の携帯には
職場の上司や同期の ゆかりから着信だらけ
プルルプルルプルル
「は…い…」
「あ、モモアあんた何してんのよ!大丈夫?何回も電話してんのに!」
「ゆかりごめん…今起きたの」
「はぁ?どしたん珍しい、内田さん焦ってんで」
「あ…打合せ…」
「私が代わりに出ました」
「ごめん…」
「もうあんたのマンション着いたしロックあけて」
「え?来たの?」
「来たのて、あんたなぁ、めっちゃ心配してるんですけど」
「ごめん、開けた」
「ほな切るで行くわ」
ガチャ
ピンポーン
カチャ
「ゆかり、ほんとごめん」
「はぁ、なんなんよ、髪ボサボサやんか」
「あはは…ごめん…」
私は内田さんに連絡を入れ
ゆかりに昨日の話をした
「マジでっ!ヒロシあいつ…泣かしたろか」
「ゆかり、いい、もう…いいょ」
「もういいて あんた納得してんの?な?ウチやったらシバキたおすわ」
ゆかりは可愛いとは違い カッコイイ美人。
175センチはある。
切れ長の目に高い鼻。
「でモモアどうするんさ」
「何が?」
「何がて次よ次よ。内田さんは?あんたの事好きやん笑」
「ちょっと…ゆかり」
「だらだらしんときや〜パッと次行きなさい」
「……」
「ちょっとモモア!あんた引きずるもんなぁ…あ〜想像できるわぁ。くっらい暗い顔して帰ったんやろ?」
「あは…は…」
「はい正解!」
「あ、その時に…ぶつかっちゃって…」
「うわぁあんた最悪やな」
「相手さんをコカしてしまって怪我させちゃった」
「うそ〜、その人大丈夫なん?」
「ちょっと…変な…人かな…」
「えぇ!あんた とことんついてないね〜」
「うん、だけどちょっと心配なんだけどね」
「謝まった?」
「うん、電話したよ…だけど…やっぱり変なのよ」
「何がよさっきから変て」
「ん…クセがキツいのかな…個性的なのかな…」
「は?あんた何ゆーてるかわからん。携帯貸して」
「はい」
ピコピコ
「これか?」
「え、う、うん」
プルルプルルプルル
「ちょっと、ゆかり」
「シーッ」
プルルプルル
「おいちゃんや!誰や」
「あ、あの…昨日の…」
「なんや!またお前さんか!韓流の感想け?な、な、うむ、ナ・イ・ショ!ゲラゲラゲラゲラ」
(モモア…このおっさんヤバいな笑)
「お怪我は大丈夫ですか?」
「よ?お前さん風邪ひいたんけ?」
(うわぁ、敏感やんかおっさん)
「はい…ちょっと」
「尻出して寝てるしやないか!な」
「え?アホか おっさん」
「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラな、な、アホかて失礼やないか。君が誰かは知っとるんやで」
「え?」
(モモア、マジで?)(知らないよ)
「君はな」
「………は、はい」
ガチャ
プープープー
「うわっ!切りよったムカつく」
「ゲラゲラゲラゲラ切ったったわい」