仕事⑤ブルペンキャッチャー
例え、スターティングラインアップとして正捕手の座を掴めなくても、控えキャッチャーにも仕事は残されている。ブルペンキャッチャーがその仕事である。
ブルペンキャッチャーとは、ブルペンで控える中継ぎやクローザーの肩を作らせるキャッチング専門のキャッチャーの事である。アマチュア野球ではエースが一人で完投し、中継ぎは出番が少なかったりもするが、ペナントレースを戦うプロ野球チームにとっては、ブルペンを支える縁の下の力持ち的な重要な10人目の影のプレイヤーである。ただ球を取る。それだけなのだが、これは職人技が必要と言える。試合中の様にサインを出したり、コースを指示する事は無く、投手の投げたい球を捕球する。その繰り返しである。ブルペンに入る投手も、本番前なのでガキになっては投げない。
本当にブルペンキャッチャーは、取る、投げ返すの繰り返しである。この2つの動作をする為だけに存在している。馬鹿にされるかもしれないが、投手としては、感謝すべき尊敬の対象である。しかも、将来的には分からないがロボットには出来ないと言う事も、ブルペンキャッチャーの面白い所である。
試合に出場する選手だけで勝ち抜けると思う内ははっきり言って二流、三流である。ブルペンキャッチャーを含めた中継ぎやクローザーと言った試合終盤の投手陣の形成が強いチームを作る事に繋がる。プロアマ関係なく、全員で勝利を掴むと言う気概が無ければ勝ち続ける事は不可能である。ただ取る、投げ返すのそれだけの事なのであるが、長年ブルペンキャッチャーをしている人間には、球を受けるだけでその投手の調子や気力が分かると言う。球のキレ、球質、手に伝わるボールの感触で、投手の調子が分かるコーチに近い選手になれると言う。個人差はあるだろうが、ベテランのブルペンキャッチャーはそうした境地に立てるらしい。
日本人はブルペンで長く投げ込む傾向があり、メジャーの中継ぎはブルペンでほとんど投げないと言うが、これは文化的価値観の違いもあるだろう。何球も投げ込んでエンジンをかける日本人とたった数球でエンジンがかかる米国人のどちらが良いかと言う事ではない。ブルペンキャッチャーからしてみれば、米国型の投手が良いのであろうが、日本人的な投手の方が得られる情報が多い為、一長一短的な部分がある。
投手の肩を作らせる為だけのブルペンキャッチャーは、プロアマ関係なく勝ち続ける為には必要不可欠な存在である事は間違い無い。捕球に自信のある人は選手としての出場は難しくても、ブルペンキャッチャーとして影ながらベンチ裏のブルペンを支える捕手になると言う選択肢もある。プロの投手の球を毎日飽きるほど受けられる事が仕事になるのは、野球人にとっては悪い事では無いだろう。