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もし野球で天下を取りたいのなら、良質なキャッチャーを育て上げろ  作者: 佐久間五十六


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矢野燿大(阪神タイガース)

 阪神タイガースの監督を4年(2018~2022)勤めた矢野燿大は、2003年シーズンと2005年シーズンに低迷していた阪神タイガースをリーグ優勝に導いた名捕手を紹介しておきたいと思う。

 打力こそ、下位打線を打っていた矢野燿大だが、リードや守備力に定評があり、前述の谷繁元信同様、バリテック型のキャッチャーであった。彼は野球を体ではなく頭を使いプレーしていた。リードにしても守備にしても打撃においても、何をするにも、頭を使った。別に特段学校の成績が良い訳ではないが、スマートなプレーをする為に、駆使する頭脳が、抜群に他のプレイヤーよりも優れていた。

 前述の谷繁元信に似ているプレースタイルだが、矢野燿大の方がスマートなプレーをしている。何も谷繁元信を否定する訳ではないが、比較すると差が出ると言う類の話である。野球脳を持つことに矢野燿大は、特化していた。同じ故星野仙一と言う師匠が谷繁元信や矢野燿大と言うキャッチャーをそうさせたのかも分からない。

 誰に言われるでもなく、球界随一のキレ者は、スマートな野球と言うスタイルを確立させて行った。打撃、守備、リードどれもデータを駆使した。今投げている投手のコンディションと持ち玉を正確に把握していた。そこから1球1球の配球を組み立てる。それは簡単な事ではない。無論、どの球団のキャッチャーでもそこまでは出来る。矢野燿大が凄いのは、そこに立つバッターのデータを反映させる事が出来るのである。

 そこに気象条件を反映させてリードする。こうなればこうなる。ああすればああなる。と言う確たる予想でリード出来る。しかし、矢野燿大も神様ではない。打たれる事はあった。

 阪神タイガースに入団するまでは全く期待されずに、一軍の舞台で活躍するのは夢のまた夢かと思われていた。しかし、プロに入るとメキメキと頭角を表し、2003年シーズンの優勝の際には正捕手として活躍した。活躍はそのシーズンだけでは勿論無かった事は言うまでもない。ただ、何度もあった念願の日本一だけが矢野燿大の忘れ物であった。

 選手矢野燿大よりも、監督矢野燿大の方が令和世代にはピンと来るかもしれないが、矢野燿大の様な頭の良いスマートな野球脳を持ったキャッチャーの出現や育成を今後の阪神タイガースには期待する。そして、1986年シーズン以来遠ざかっている日本一のタイトルをファンは期待しているし、リーグ優勝も魅せてくれ!と思っている甲子園に通う熱心なファンもいる事を忘れないでいただきたい。これは監督矢野燿大が敷いたレールの先にあるのだ。

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