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もし野球で天下を取りたいのなら、良質なキャッチャーを育て上げろ  作者: 佐久間五十六


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阿部慎之助(読売巨人軍)

 NPB史上キャッチャーとして最高打率(3割4分0厘)を2012シーズンにマークし、打率と打点の二冠王になった阿部慎之助は、読売巨人軍に日本一を奪還させる起爆剤となった。第三回ワールドベースボールクラシックでは、日本代表の4番を務めた。

 阿部慎之助は今や読売巨人軍のフロントには欠かせない名コーチに変貌したが、肩や守備力やリード力は、魅力ある打撃以上にチームを助けた。そもそも、日本を代表するキャッチャーになった彼だが、高校時代(安田学園高)では甲子園に出場していないし、大学時代(中央大)も特に目立つ存在ではなく、阿部慎之助と言うキャッチャーの将来性にかけたスカウトの目を誉めるべきである。

 エリート街道を走って来た訳ではない阿部慎之助は、読売巨人軍に入団して日の丸を背負うキャッチャーになると誰が想像しただろうか?ただ、阿部慎之助の長打力には定評があった。とは言えその打撃力が開花するのに5年程かかっている。要するに、阿部慎之助と言うキャッチャーは努力家なのだ。前述の城島健司の様に、彼はキャッチャーと言う難ポジションにいながら己の打撃力を磨いたのである。

 怪我に泣かされる事はなく、常勝軍団である巨人の正捕手として、使い続けてもらった。常に試合に出ると言うのが、味噌である。彼は目先の利益にとらわれる事はなく、引退までの長期ビジョンを立て、日本を代表するキャッチャーになったのである。右投げ左打ちの彼にとって、大切な事は、自らの成績ではなくチームを勝たせる事、リードしている投手を打たれないように導く事である。

 そうすると、数字が上がる。明るい人柄もあり、多くの投手や野手から厚い信頼を寄せて貰えた。読売巨人軍生え抜きのキャッチャーとして、読売巨人軍を愛して、FA権を行使しなかった。メジャーリーグでも活躍出来る力はあったが、機を逃した。勿論、メジャーで活躍するだけが成功ではない。NPBで活躍し成功する事も立派なサクセスストーリーである。メジャーが身近になった現代に、腰を落ち着けていられないようでは、選手として最高のパフォーマンスを見せるのは難しい。

 阿部慎之助は、読売巨人軍を愛して、ファンを愛した。日本球界の発展の為に、骨を埋める覚悟をしたのだ。無論、野球選手阿部慎之助と言う人物は、そんな大そうな大それた事は考えていないが。日本人キャッチャーとして一時代を築いた阿部慎之助と言うプレイヤーを野球ファンは忘れないだろう。

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