キャッチャーの仕事①リード
どんなに速い球やキレのある鋭い変化球を投げられたとしても、キャッチャーが取れなければ意味はない。キャッチングの技術はプロのキャッチャーならば、何万球と受けているから大抵のボールなら取れる。取れなくても体を使いボールを前に落とすことが出来る為、ボールを後ろにそらす事は滅多にない。
投げて来る球は投手により異なるし、変化球の持ち玉や変化球の変化の具合は、投手により異なる。当たり前だが、それらを何気なくキャッチングするキャッチャーは凄いのである。そして、ただ、ボールをキャッチするだけでなく、投手の投げる球をバッター、一人一人に組み立てる。それもキャッチャーの仕事である。所謂リードというものである。
ランナーが出れば、盗塁をカバーしなくてはならないのであるが、まずは、投手のリードする事を覚えよう。しっかりリードする事を覚えれば、自然と被安打、被本塁打、四死球は減ってくる筈である。リードの目標は、あくまで打たれにくいコースをキャッチャーが予測した上でどの球種、どのコースに投げて欲しいか投手にサジェスト(提案)する事である。勿論、投手がサインに首を振る事もある。サイン交換とはキャッチャーがリードするものを投手と確認し合う、意思伝達手法であり、あらかじめチームによって決められている事が多い。
つまり、キャッチャーというポジションはチームの投手陣全ての球種や球速を頭に入れておく必要がある。頭を使うポジションであるのだ。最もキャッチャーも人間だから試合前に先発する投手とは、サインを入念に話し合う。だが、中継ぎやクローザーはそうはいかない。簡単なサインの確認でリードするのが定石である。
投手を車だとしたら、キャッチャーは運転手である。あらかじめ行きたい場所をナビに入力し、行く。目的地を知っているのはキャッチャーだけである。野球も同じだ。投手の投げる球は車でその性能は投手毎に違う。捕手は、ストライクと言う目的地に投手を導くのが仕事である。コントロールの良し悪しは、車がどこに辿り着くかと同じで、目的地に迷わず行ける投手が良い投手と言える。
投手の投げる球とキャッチャーの要求した場所にピタリと合致した時、被打率の低いナイスボールが投げられる。投手の能力を活かすも殺すもキャッチャー次第。と言う事が何と無く分かって頂けたであろうか。
通り一辺倒の配球では、良い球も打たれてしまう。よく、投手と打者の駆け引きと言われるが、あれは間違いである。正確には投手+捕手と打者の駆け引きである。目が行くのは投手かもしれないが、打者は常に2VS1と言う数的不利な状況で安打や本塁打を放たねばならない。キャッチャーが巧みであるという事は、それだけ打ち崩し難い状況であると言える。投手も大事だが、キャッチャーにも目を向けると、野球と言うスポーツの見え方が変わる事だろうと思う。