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もし野球で天下を取りたいのなら、良質なキャッチャーを育て上げろ  作者: 佐久間五十六


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ポイント⑤選球眼

 恐らく、キャッチャーはどのボジションの野手よりも、良質な選球眼を持っている筈である。要するに目が慣れているのである。多くの投手の球を受けているキャッチャーとしては、最大の長所になっているとも言える。

 打者にとって最も必要なスキルが高いと言う事は、実は強打者に成れる素質があるのである。元来、選球眼を鍛える事は容易ではない。キャッチャー以外の人間はフリーバッティング以外で投手の生きた球を拝む事は出来ない。実戦はぶっつけ本番も良い所で、アジャストしていくしかない。

 それに比べキャッチャーは、生きた球を練習時から沢山見る事が出来る。この少しの違いが塵も積もれば山となり、大きな差となってくる。選球眼とは、読んで字の如く球を見極める力の事を指す。簡単に言えばストライクかボールかを見極める目力の事である。当然、好球必打をする為には、選球眼が必要となって来る。

 ただし、注意しなければならないのは、選球眼があると言うだけでは、良質なバッターには成れないと言う事である。その理由は単純明快である。選球眼があっても、バットをどの角度で出して、どういったスピードのスイング、つまりバットコントロールが出来なければ、ヒットもホームランも生まれないのであるからだ。逆を言うなれば、ヒットやホームランを打ちたければ、選球眼を瞬時にバットスイングに反映させる事が出来れば、良いのである。選球眼だけでは意味が無い様に、それに相応しいバッティングが、出来ればこそ打撃スタイルが出来上がるのである。守備は合格点でも、打撃であまり芳しくない、不満足な結果しか出せていない、キャッチャーが多くいるのが現実である。

 それは、打撃のスタイルにばらつきがある為である。選球眼に頼り過ぎたり、バットコントロールが空回りしてしまうと、凡打の山となる。要するに一流と二流を分けるのは、百々のつまりがバランスにあると言っても過言ではない。投手にとって、一番嫌なのはヒットやホームランを単発で打たれるより、粘られて四死球でランナーがたまりタイムリーやホームランを打たれる事である。投手としては、ベストピッチを見極められるのは、ヒットより嫌なものなのだ。バッターとしては、四死球でもヒットでも、凡打にならなければ仕事をしたと言える。

 キャッチャーには、その選球眼を養うには充分過ぎる程の投球練習の時間が充分にあり、あとはその選球眼を活かす為のスイングスピードを得る為の打撃練習をして、自分の打撃スタイルを確立させれば、打撃面に関しては、文句の付けようが無くなる程の出来に成るに違いない。その辺りの匙加減が、野球選手としてセンスの有り無しに直結して来るのである。

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