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第3話 大会会場入り

ロッカールームのドアを抜けると、そこはもう大会会場になっていた。


上から見ると丸いすり鉢状の形をした古代コロッセオを模した造りの会場には、十段以上の観客席が設置されており、そこにはいろんなアバター姿のプレイヤーたちが座っていて、早くオープニングイベントが始まらないかと興奮した顔で待機している。


中には見知ったプレイヤーの姿もちらほらと見受けられた。


現在、コロッセオの中心部分である円形の闘技場にはまだ誰の姿もない。


「ふーっ、どうやらギリギリ間に合ったみたいね! あっ、あそこの席が空いてる! 早く行かないと!」


空いた観客席を見つけたらしいニケがアリスたちをその場に残して走り出す。


「おいおい、率先してチームワークを乱す行動をとってどうすんだよ」


毎度毎度のニケの自由行動パターンではあるが、やれやれとつぶやくしかいないアリスだった。


「わたしたちも遅れずに行こう」


サクラが歩き出すと、ごく自然な足取りでサクラの背中を守るようにマモルも歩を進めていく。


「しかし相変わらず目立つ二人だよな」


ニケとサクラの背中を見つめながらアリスは改めてそう思うのだった。実際のところ、ぐるっと周囲を見渡すと、かなりの数の熱い視線が二人に注がれているのが見て取れた。


大会では常に上位に入ることが多いアリスたちのチームはゲーム内でもそこそこ有名な存在であったが、それ以上にニケとサクラという美少女二人のルックスに注目が多く集まっているのも事実だった。


ゲーム内には見た目だけでいえばニケやサクラ以上に派手なアバター姿をしたプレイヤーも数多くいたが、そういうプレイヤーは概してゲームが下手な傾向にあるので、見た目も良く、さらにゲームの腕も良い二人はどこにいっても注目の的だった。


「まあ、いつものことだから気にする必要はないさ」


マモルはサクラの背中から視線を外すことなく答える。


「ほら、アリス、いつまでそんなとこでぼーっと突っ立ってんの! 歩く人の邪魔になるでしょうが! 早くここに来なさい!」


ニケが自分の隣の空いた座席をバンバン叩きながら叫ぶ。むろん、自分に向けられている周りの目など一切気にしない。



なんだかここでもペット扱いされているみたいなんだけど……。そう思うのはおれだけか?



アリスは周囲から寄せられる羨望と嫉妬が半分ずつ混じった視線を一身に受けながらニケの隣に座る。


「本当に遅いんだから! そろそろ運営が登場する時間だから! ちゃんと耳を全開にして話の内容を聞き逃さないようにして!」


ニケは子供のように嬉しそうな表情を浮かべて闘技場を見つめている。



いや、おれの耳はいつも全開だけどな。ていうか、人間の耳はいつも全開だぞ。



言っても詮無いことは胸の中だけでつぶやくことにしている。


急にコロッセオが闇に沈んだ。同時に壮大な音楽で世界が包み込まれる。


「ついにキターーっ!」


すでにニケはマックスの興奮状態である。


音楽がフェードアウトしていくと、今度は闘技場の中央にピンスポットが当てられる。光の中心にはこの場に似つかわしくないスーツ姿の若い女性の姿があった。


「ようこそ、ゲームプレイヤーの皆さん! 本日は『ダブルオーヘヴン』運用開始一周年を祝う記念大会にお越しいただきありがとうございます! 運営代表として大変感謝しております!」


女性の声が朗々とコロッセオに響き渡る。


「一周年、おめでとう!」

「『ダブルオーヘヴン』、最高!」

「これからもずっと『ダブルオーヘヴン』の運営を続けてください!」

「アリサちゃーん、カワイイ!」


観客の間からお祝いの声が一斉に上がる。中には運営代表の女性の名前を叫んでいるプレイヤーもいる。


ゲームとしての『ダブルオーヘヴン』の人気に伴い、運営会社の顔として数多くのメディアに登場する機会が多くなった所謂『中の人』のアリサは、今ではプレイヤーからも絶大の人気を得ていた。


「今日はゲームを始める前にいろいろと注意事項のお知らせがあるので、先にそれを皆さんに伝えたいと思います。その後でいくつかのサプライズ発表がありますので楽しみにしていてくだい。――それではここで一旦会場の明かりを戻します」

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