#04. Small Finds
「それじゃ、次はこの事務所をどこに移すか考えないとな」
「そうだね」
今日から高校生になった俺はもうこの中学校に来ることができない。毎回毎回、侵入するわけにはいかないので、拠点を移す必要があった。それも、俺とリナイエが集まりやすい場所に絞らないといけない。
「明光第一高等学校はどうだ?学校なら何かあったときにすぐ集まれるし、管理もしやすいと思うのだが‥‥‥」
「そうだね。それも一つの案だと思うけど、先生たちにバレる可能性は無いの?」
「確かに、先生に勘付かれる可能性はあるかも」
「でしょ??それに、私の次空間はどこでも発動できるわけでは無いのよ!?」
「そうなの?それ、初耳なんだけど‥‥‥」
「それは、だって今初めて教えたんだもん」
「なんかもう3年も一緒にいるけど、まだ俺あまりリナイエのことを知らないかもしれない。リナイエは俺のことについてかなり詳しいし。なんかごめん」
俺は自分の惨めさに腹を立てていた。すると、そんな様子を見ていたリナイエは俺に温かい言葉をかけてくれた。
「そんなことないよ。私もまだ拓也のことをあまり知らないよ。だから、お互い様だよ。人はみんな他人なんだから、その人の全てを知ることはできないよ」
「ありがとう」
俺はリナイエの言葉を有り難く受け止め、リナイエに感謝の気持ちを示した。
「じゃあ、本題に戻ろうか?」
「うん」
本題に戻ると、俺は改めてリナイエに尋ねた。
「俺の高校が無理なら、どこにする?それと、次空間の発動条件とかってどういうのがあるの?」
「発動条件というか、場所の適正かな。特殊能力が使える6人にしか見えないんだけど、空気中に龍子というのがいるんだよね。その龍子は6種類あって、光龍子、炎龍子、水龍子、風龍子、地龍子、音龍子があるの。私は光龍術を使うから、光龍子を素としてるんだよね。簡単に言えば、光龍子が少ない場所では光龍術が使えないの」
「そうなんだ。じゃあ、今俺たちがいるところには光龍子が沢山いるってこと?」
「そういうこと」
「その光龍子の量って現場に行かないと分からない?」
「うん」
俺はやはり探偵事務所はリナイエが持つ次空間にしたいと思ってる。つまり今リナイエが言ったことによると、新たに次空間を開くには光龍子が多い場所を探さないといけないことになる。できれば早く新しい場所を確保したい。しかし、土曜日までの三日間はまだ学校があるので新しい場所を探しに行く時間が無い。
「俺、明日も学校があるから土曜日に一緒に新しい拠点を探しに行かない?集合場所は後でメールで教える」
「分かった。何か持っていった方がいい物とかある?」
「特に無いな」
「じゃあ、飴玉を沢山持ってくね」
リナイエは微笑みながら俺に言った。俺はその微笑みによって意識を失いそうになったが、なんとか意識を保つことができた。
「じゃあ、今日はここまでにするか」
「そうだね。もう、18時だし帰ろっか」
時計を見ると、時刻は18時になりそうだった。
俺はクッションから立ち上がり、プリントをファイルにしまい、ファイルを棚に戻しながらコップを片付けてくれているリナイエに一つ尋ねた。
「そういえば、次空間の中ってこのままで平気なの?今日でここの場所から離れるけど‥‥‥」
「平気だよ。5日間以内だったら違う場所でも同じ次空間を出せるよ」
「そうか。ありがとう」
俺とリナイエは次空間の中を掃除すると、次空間の外に出た。外はもう日が沈んでいて、辺り一面暗かった。俺とリナイエは正門へと向かい、無事バレずに学校の外に出ることに成功した。
「じゃあな。気をつけて帰れよ」
「うん。拓也もね」
俺たちは互いに別れを告げ、それぞれの帰り道を歩いて行った。