#08. Past I 〜眩しい存在〜
これは、俺と誠一が中学2年生の時のことだった。
数学の授業が終わると、誠一は俺の方にやってきた。
「拓也ー、次の授業ってなんだっけ?」
「化学だよ」
「了解!じゃあ、早く行くぞ」
「うん。それにしても、誠一っていつもテンション高いよなぁ」
俺はさり気無く誠一に尋ねてみた。
俺は誠一のことが出会った時からずっと羨ましかった。いつも笑顔で元気で。友達も彼女も居るし。俺には友達なんて誠一と彼の彼女、真梨ぐらいしかいない。好きな人は一応居るが・・・・・・どうせ叶わない恋だと諦めている。
「まあね。ポジティブで前向きに生きてる方が人生楽しんだと思うんだよね。だから、拓也も頑張れよ!」
なんだか、今誠一のことが太陽光のように眩しかった。この時、俺は少し誠一から勇気を貰えた気がした。それと同時に俺はやはり、誠一には一生届かない存在なんだと情けも抱いた。
「ああ」
俺は二つの感情を抱きながら返事をすると、自分の机から立ち上がり自分のロッカーへと向かった。
俺と誠一は少し長話をしてしまっていたため、チャイムと同時に理科室に着いた。そして、いつも通り化学の授業が始まった。しかし、珍しく俺は授業で少し居眠りをしてしまった。また、居眠りしてる間に俺は妙な夢を見てしまった。
俺が居眠りから覚めると、授業は半分終わっていて、これから実験を班ごとに行おうとしていたところだった。
しかし、数分後俺が居眠り中に見た夢がまさに今、目の前で起こっている。