第1章〜面接〜#3
翔は白衣の女性の言う通りに進むと一人の男が立っていた。男は翔に気付いて近寄る。
「やぁ、校長ならこの先のドアにいるから、緊張せずに気楽にして面接したらいいよ」
男は優しく問う、きっと緊張をほぐすために言ってくれたのだろう、翔はドキドキと高鳴る心臓の音を聞きながら「ありがとうございます」と言い、一礼してからその場を後にする。
「・・なぁなぁ・・・バルト・・・」
どこからか声が聞こえる。
「・・・・今仕事中だから後にしてくれないか?、あと、『透明化』は解くなよ?」
男は何もいないところを見ながら話す。
「あの子結構『素質』あると思うよ?」
声の主はそう言うと、男は驚く、彼女がそう言ったのは久々だったからだ。
「へぇ、久しぶりに聞いたな、それは本当なのか?」
何もない空間から少女の頭だけが現れた、髪色は緑でカメレオンのような舌を出した『ドールズ』が現れる。
「うん!私の目に狂いがなければ、あの子は何か大きなことをすると思うよ」
ドールズは自信満々に話す。
「そうか、だけどなぁ・・・」
男はドールズの頭にげんこつをくらわせる「ゴツンッ」という音と共に「いたっ!!」と両手でげんこつをくらったところを押さえる。
「透明化を解くなって言ってるだろ?本当はここへ『一人』で仕事しろって言われてんのにお前のわがままのせいでこんなことになってるんだからな?」
「しゅ・・・しゅみません・・・」
ドールズは少し涙目になりながらも男の説教は続いていた。
「すぅー・・・はぁーーーー・・・」
校長室のドアの前に立ち、一回、二回と深呼吸をする、そして覚悟を決めてドアを三回ノックする。
「どうぞ~」
その声はとても若々しい女性の声だった、翔はドアを開け「失礼します」と言いながら一礼をする。目の前には子供のような女性と、執事服を着た男性型ドールズがいた。初めて男性型のドールズを見たのか、翔の顔は驚いていた。
「どうぞ」
翔よりも若い校長の前にある椅子に座る。その椅子はとてもフカフカで体が吸い込まれそうな心地良さだった。
「私が『ドールズ学園』校長の藤宮です、そしてこっちが私のドールズのヒエン」
ヒエンは左手を胸に当て、右手を後ろに回してお辞儀をする。
「それじゃあ面接を行うわね」
「はい!よろしくお願いします!」
翔は座ったまま挨拶をし、軽く頭を下げる。
「うん!元気でよろしい!」
校長は翔の願書を取り出し、目をなぞりながら見る。
「・・・・なるほど・・・小さい頃にうちの生徒が君を助けて、そこからこの学園に入学したいと・・・」
翔は元気よく「はい!」、と返事をする。
「成程・・・・合格!」
「・・・へ?」
翔は目をパチパチしながら校長を見つめる、それを見て、ヒエンは彼女の言葉に文句があるのか口を開く。
「藤宮様、流石に適当が過ぎますよ、まだ願書を見ただけで30秒もたっていないではありませんか」
彼が言ったことは事実だ、確かにここへ座って翔が書いた願書を見ただけだ。
「いや良いんじゃない?それにこんなに良い志望動機はなかなか見当たらないよ?ね?だからもう早く終わってクッキーが食べたい」
「ダメです、ちゃんと仕事をしないとクッキーはあげられませんよ」
そうヒエンが言うと、両手をパタパタとさせ、「いやだ!いやだ!」と駄々をこねる校長。
「はぁ、申し訳ございません翔様、こうなってしまっては藤宮様は聞く耳を持ってくれないのです・・・」
残念そうな顔を浮かべながら翔に頭を下げる、流石執事というべきか、その動作一つ一つが美しい。
「いえいえ、大丈夫ですよ、それで俺はどうすればいいですか?」
その間ずっと駄々をこねている校長を、ヒエンはなだめながら答える。
「藤宮様がこうなっているので、合否は手紙で送らせていただきますがよろしいでしょうか」
「わかりました・・・・もう失礼してもいいのでしょうか?」
「はい、構いません、今日はありがとうございました、気を付けてお帰りくださいませ」
そう言いヒエンは彼女を連れどこかへ行く、多分クッキーを食べるんだろう、そういえばうちにもクッキーあったよな?と思いながら、校長室を出る。その後何も無かったので翔は家へと帰る。