第1章〜試験〜#2
──そして迎えるドールズ学園の試験、翔は緊張で心臓が激しく動いていた
「大丈夫!絶対に合格する、『あの人』みたいになるんだろ、俺」
「バチンッ」と頬を叩き、その痛みで緊張をごまかす。
翔は指定されていた教室へ向かう、足取りは重く不安もあるが、この学園に入学したいという気持ちは誰にも負けない、そう自分に言い聞かせる
「2-1・・・ここか・・・」
教室のドアを開ける、そこには翔と同じ受験者が席に座っていた。緊張して汗を流す者。合格できる自信があるのかイビキをかきながら寝ている者。復習する者様々な受験者がいた。
翔は指定された自分の席を探す。一番後ろの席の番号と自分の番号が同じ席を見つけ、座る。
ドクン、ドクンと心臓の音がうるさい・・・耳から出てきそうな程だ。もしかしたら翔の心音が周りに聞こえているんじゃないかと思ってしまい、顔は動かさず目だけを動かす・・・・どうやら勘違いだったようだ、と翔は安堵する。
しばらくすると教室のドアから足跡が聞こえる、「ガラガラッ」と、ドアが開く音が聞こえ、その方を見る。そこにはヒョロヒョロとした体格で、今にも倒れそうな男が眼鏡をクイッと上げて教室に入る。背後には今日のテスト用紙を持ったドールズも後から入る
「それじゃあ今からの事を説明しますのでよく聞いておいてください」
男は教卓の前に立ち、ドールズはプリントを教卓に置く
「試験内容は筆記試験と適性検査、最後に面接がありますので頑張ってください」
「それではプリントを配ります、裏にして後ろに渡してください」
そう言いドールズと男はプリントを配り始める。全員にプリントが行き届いたことを確認し、試験が始まった。
辺りから鉛筆の「カタカタ」という音が聞こえる、それに負けじと翔は問題を解く。
時計を見ると、時間は残り5分を切っていた、翔は問題を全て解き終わり、今は不備や誤字が無いか確認をしている、ようやく難関であった筆記試験が終わりを迎える、翔は最後の確認を済ませ、ペンを机に置く。
チャイムが鳴り響き受験者達の解答用紙を回収する。
「やっと、筆記が終わった・・・あとは適性検査と面接で終わりだ」
「それでは次に適性検査に移りたいと思います」
男はそう言い、廊下に出る
「皆さん、次の試験場へご案内しますのでついてきてください」
受験者は椅子から立ち上がり、男の後ろをついていく、着いた先は『保健室』だった。
「皆さん、これより適性検査を行いたいと思いますので一人ずつ中へ入って検査を受けてください」
受験者は不思議そうな顔を浮かべたが、男の言う通りに一人ずつ入る。ものの数分で受験者が戻ってきたが、その顔は疲れており今にも倒れそうな程衰弱していた。
その後も続々と受験者が保健室の中へ入る、最初の男と同じ症状で出てくる者もいれば、涼しい顔をして出てくる者もいた、そして次は翔の番が来た。翔はドアを開け中へ入る
「やぁ、こんにちは、ここに座って」
ドアを開けると目の前に白衣を着た女性と眼鏡をかけたナース?が座っていた。ナース姿の彼女は、おそらくドールズだろう、翔は白衣の女性の前の丸椅子に座る。
「今から適性検査を始めるんだけど・・・」
女性は、ドールズに何か指示をした、ドールズは保健室の裏に行った、しばらくすると青い液体の入った小瓶と注射器を持ってきた
「それ・・なんですか?」
「これはドールズへの適性があるのか試す薬、普通のドールズなら必要ないんだけど、私たちの学園で支給されるドールズは戦闘用に開発してるから、その分身体への負担が激しいの、だからその検査のためにこれを使う」
彼女は青い液体の入った小瓶を翔に見せる
「この液体をあなたの血管に注射する、適性があれば何も起こらないけど、なければ激しい脱水症状とめまいのような症状になるから覚悟してね」
だから最初の人は気分が悪そうにしていたのか・・・と納得する
「それじゃあ、腕出して」
彼女の指示に従って腕を出した、注射器に青い液体を入れ、翔の腕の血管に刺し、液体を注射する。
注射器の中の液体が無くなり、注射を抜く。抜いた箇所から血が溢れてくる、ドールズはそれを見てポケットからくまさんマークの絆創膏を付けてくれた。
「どう?即効性はあるからもう効いてもおかしくないけど?」
翔は自分の体を触ったりして確認するが症状は出ない。
「いえ、いたって普通です」
「うん、適性はあるみたいね、合格よ」
その言葉を聞いて翔は安心する。
「次の面接の試験場は校長室で行うから、ここから出てずっとまっすぐ行くとボケーっと立ってる人がいるからその人の判断に従ってね」
翔は「ありがとうございます」と言って保健室を出る。
「あ・・・」
ナースが突然口を開けたまま言った、それに心配してか白衣の女性は「どうしたの?」と聞く。
「彼に打った薬を間違えてました・・・」
彼女がそう言いながら本来彼に使うべきの青い液体の入った小瓶を持ってくる。
「え!?まさか『試作品』を彼に使ったの!?」
「は、はい・・・ごめんなさい・・・」
白衣の女性は慌てた顔を見せた。
「あの薬は本来濃度を薄めて使わないと死に至る可能性がある劇薬よ!?」
ドールズは困り果てた表情を浮かべる。
「ですが、彼元気でしたよね?普通だったらもう効いててもおかしくないはずなのに」
白衣の女性は顎元に手を置く。
「・・・・確かにそうよね・・・どうしてかしら・・・」
そう考えている間に次の受験者が入る。
「とりあえず今は仕事に専念しましょう」
ドールズは頷き、仕事に戻った。