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震えるドア

作者: 森 彗子

トイレの花子さんを召喚してしまった?話です。

 小学生の時の実話怪談です。


 私は小学三年生でした。当時はこっくりさんやトイレの花子さんの怪談が流行っていて、自称霊感持ちの私を試すようなことを言ってくるクラスメイトが数人いました。さして仲良くしたこともない彼女達に「花子さんを呼んで見せてよ」と言われました。


「いいよ」


 私はそう答え、四人ほど引き連れて最寄りの女子トイレに行きました。校舎は三階建てで、三年生の教室は二階にあり、廊下を挟んで南側に教室がならび、北側にトイレや手洗い場があるという、よくある校舎のつくりをしていました。


 時間は放課後なので、まだ全然陽が高い時間帯だったと思います。だけど、多くの子供はとっくに帰宅したあとで、その時その付近には自分達以外は誰も居ませんでした。


 背の高い細身の子が、四つある個室のひとつ、奥から二番目の個室に入り内側から鍵をかけ、上の隙間から這い出てきました。別の子が掃除用具入れの机を置いてそこを足場にしたので、それほど大変な作業ではありませんでした。


 鍵のかかったドアの真ん中に人差し指で十字架を書き、その真ん中をトントントンと三回ノックします。


「は~なこさん、出ておいで」


 私が花子さんを呼びました。


 しん、という静寂。


 一同は私の背後から固唾を飲んで見守っています。


 三秒ほどした時、突然トイレのドアがガタガタと大きな音を立てて震え始めました。


 その瞬間、彼女達は悲鳴をあげて逃げ出しました。私ひとりを残して。


 私はというと、驚きと好奇心からその場を動けずにいました。脚がすぐには動かなかったのです。


 あれは金縛りだったのかどうかはわかりません。でも、動けませんでした。


 ドアはしばらくの間ずっと壊れそうな勢いでガタガタガタガタ大音響を出して震え続けました。


 私は隙間から中を覗こうと目を凝らしました。


 黒い前髪が見えた気がして、そこから生理的な恐怖(死の恐怖)を感じてトイレの出口に向かってよろけて転び、立ち上がってからはもう無我夢中で玄関に向かって階段を駆け下りて行きました。


 翌日、トイレの鍵を内側からかけたのは誰だというお叱りがあり、私に花子さんを呼べと言った子達の密告で職員室に呼ばれてお説教を喰らいました。先生にドアが震えたことを話すと「集団ヒステリーだ」と言われました。さらに「まさかこっくりさんをやっているんじゃないだろうな、あれは本当に危ない遊びだからやったらダメだ。先生の知り合いで精神がおかしくなって病院で一生暮らしている人がいる。トイレの花子さんも二度とやったらダメだよ」と約束させられました。(しかし、こっくりさんは通算十回程度はやったことがあります。先生ごめんなさい)


 それから数年後、あれは降霊術なのだということを理解しました。私は降霊術に成功してしまったのだろうか、と今更ながらゾッとして以来、そういったことはしていません。


 だれもいない教室がならぶ廊下に、ガタガタとトイレが震える音が響き続けるのを想像してみて下さい。とても怖いものがあると思いませんか?


 おわり

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