1 スーパースター 2
@キリンスタジオ社長室
「社長、政治界の大物という人がお会いしたいと」
受付の山田さんが社長室に入ってきた。ぐるぐるの眼鏡をかけた彼女もまた、人間ではない。
いわゆるケモノ耳がはえている。
「ええ、ええ。断っといて。なんやねん大物て。どこの世界に『政治界の大物』(笑)みたいなものがおってん」
「しかし……」
「やかましい!追い返せ、社長命令だぞ!たっ!あと、山田さん。ロッカーの鍵しらない?」
山田さんはすでにいなくなってた。悪いことしちゃったなあ。
しかし……
この社長室、本当に社長室と呼んでいいものか。
なんか独身男性の部屋そのものみたいだなあ。無駄にドラムキットとか、布団敷いてあるし……ていうか掃除全然されてない。
あのちゃらんぽらん……放漫経営にもほどがあるよ……
PPPPPPP
社長室のデスク横にある、社長専用の電話がなる。
「はい、社長室」
「万造さんが向かっています」
「万造?」
「副社長です」
ポカーンとする僕をよそに、社長室のぼろい引き戸が空いた。(ガラスが割れてる)
「社長、ロッキーがアフリカから帰ってきました。あと、再雇用をもとめる方たちが五人…」
「万造?君万造?」
「え?」
「は?」
「え?は?ハゲ?」
「麒麟の化身の万造さんですか?」
「こね男か?」
目の前にいる、二メートル三十ほどで茶髪、まつ毛の長い大男が間を置いた。
「屁理屈 こね男? ……憂か?」
「おう……」
ドロン!という音とともに、僕は社長の姿からもとのタヌキに戻った。
「社長に似てたかな」
「お前九年間どこ行ってん!!」