ゴブリン(株)と姫騎士 Co. Ltd.
いやらしいことは一切ありません。
(株)、「Co. Ltd.」どちらも株式会社を表しています。
あるところに、ゴブリンという魔物がいました。
ゴブリンは、醜悪な見た目と残虐な性格で恐れられていました。
ゴブリンには女性が生まれないため、他の種族の女性を捕らえて無理やりゴブリンを産ませていたのです。
捕らわれた女性の扱いはとても酷いものでした。
衣食住は保障されているものの質は最低で、常にゴブリンと交わり続けて休みもありません。
なんと、年間休日が30日しかなかったのです。もちろん有給休暇などありません。
退職者が後を絶ちませんでした。
これにはゴブリンも困りました。
離職率は低下の一途で、新たに女性を捕らえようとしても一朝一夕には集まりません。
改善が必要でした。
緊急役員会の結果、まずは情報収集を行うことになりました。
マーケティング部門を新設し、女性のニーズを調査したのです。
隠密が得意なゴブリンによって集められた情報は、知能の高いゴブリンによってまとめられました。
その結果次のようなものでした。
1.顔
2.金(または宝飾品等の希少品)
3.愛情(顔の良い者に限る)
(※ただし衣食住の質の向上は必須)
この調査結果はゴブリンを打ちのめしました。結局のところ顔だったのです。
ゴブリンの中でも見た目の酷い者たちは、それはもう怒りました。
怒りのボルテージは成層圏を突破し、ついには女性たちを手当たり次第に襲い始めたのです。
賃金も休みも無し、まさにブラックの中のブラックです。
しかし、このようなことが長く続くはずもありません。
顔の酷いゴブリンたちは全員労働基準法違反で逮捕・勾留されてしまいました。
襲撃に参加しなかった顔の良いゴブリンたちはとても焦りました。
なぜなら、顔の酷いゴブリンは、ゴブリン全体の95%もの割合を占めていたのです。
もうゴブリンには5%の顔の良いゴブリンしか残されていません。
顔の良いゴブリンたちは絶望しました。このままでは絶滅してしまう。力なく街道を歩いていました。
その時、女性冒険者のパーティーが声をかけてきたのです。
「君たち、どうしたの? 迷子? 親御さんは?」
ゴブリンたちは困惑しました。
顔の良いゴブリンたちは力が弱く、女性を襲った経験もありません。もちろん女性と交わった経験もありません。
しどろもどろな受け答えしかできず。なんとか自分たちがゴブリンであることを伝えました。
「え? うそ、あのゴブリン? ブラックの?」
ゴブリンたちは必死に説明しました。
容姿はどうにもできないけれど、宝石を渡せること。(ゴブリンにとって宝石とは価値のあるものではありませんでした)
年間休日を120日とすること。年次有給休暇は勤続1年目は5日、2年目以降は10日とすること。
帰省の際の交通費を最大で銀貨10枚まで支給すること。
その他にも福利厚生の取り決めについて必死に説明しました。
後から知ったことですが、この女性冒険者たちは「ショタコン」という性質を持っていました。
「ショタコン」の詳しい性質はわかりませんでしたが、顔の良いゴブリンは大変魅力的に映ったそうです。
ゴブリンたちはなんとか女性冒険者達と雇用契約を結ぶことに成功しました。
喜んだゴブリンたちは、自社ビルへ女性たちを案内しました。
新たに建設した自社ビルは、マーケティング部門からの提言をできるだけ取り入れた最新のものです。
女性たちは大変喜びました。
それを見て、ゴブリンたちも喜びました。
早速業務が始められました。
ゴブリンたちは、女性の負担を最小限にしようと、三擦り半どころか零擦り半ですませる方法を会得していました。
もちろんこれもマーケティング部門からの提言です。
好きでもないゴブリンと交わる時間を減らして、心理的ストレスを抑えるためです。
始めの内はとてもうまくいっていました。
女性たちも業務の簡単さに驚いていました。
しかし、段々と不満がたまっていったのです。そう、欲求不満です。
何せ零擦り半で終わってしまうのです。これでは始まっているとも言えないでしょう。
あえて擬声語で表すなら、「シk、ピュッ」です。
女性たちが「ショタコン」であることも災いしました。
目の前に好みの「ショタ」がいるのに「シk、ピュッ」してしまうのです。
マーケティング部門の提言の前提条件が崩れていたのです。
ですが、女性たちも雇用契約にサインした身です。今更契約違反はできないと我慢をしていました。
女性たちは真面目だったのでしょう。我慢に我慢を重ねました。
我慢して我慢して我慢して……、ついにその時が訪れました。
女性たちの欲求不満が爆発したのです。
自重という名の鎖から解き放たれた女性たちは、好みのゴブリンを「貪り食い」ました。
運よくターゲットにされなかったゴブリンは、この時のことをこう振り返っています。
「あれは何か恐ろしいモノだった。理性のかけらもなく、ただ本能に従っていた」
ここでようやくマーケティング部門は間違いに気づきました。
顔の良いゴブリンたちは、女性たちの好みの顔だったのです。
そして、零擦り半ポリシーは間違いであっただけでなく、女性たちのワークライフバランスを著しく破壊していたのです。
即座――実際には女性たちの「貪り食い」が3日間行われたため4日目――に業務内容が見直されました。
役員と労働組合による協議の結果、一人の女性に一人のゴブリンが割り当てられる「二人制」とすることで妥結しました。
尚、「二人制」のことを「夫婦制」と呼称する女性社員もいますが、正確な名称ではありません。
この転換によって、ゴブリン(株)は増々安定し、顔の良いゴブリンが増えることとなりました。
平和な日々が続きました。
しかし、栄える者あれば落ちる者あり、盛者必衰は世の常です。
ゴブリンに試練の時が訪れたのです
その日、採用担当のゴブリンは、就職説明会の帰りでした。
良い説明会ができたと、満足気に街中を歩いていると、鎧を着た女性に話しかけられました。
ゴブリンが振り返ると、女性はその場に倒れ大声で叫び出しました。
「きゃーやめてー、乱暴する気でしょ[検閲済み]みたいに、[検閲済み]みたいに、くっ殺せ(棒読み)」
ゴブリンには何が起きているのか理解できませんでした。
女性は大声で同じ言葉を繰り返しています。
どうしていいかわからず、ゴブリンはその場で立ち尽くしていました。
程なくして衛兵が現れました。
「女性に乱暴しているゴブリンはお前か、逮捕する」
ゴブリンの頭はますます混乱しました。
権利の読み上げもなく、自白を強要されて初めて自分がハメられたのだと気付いたのです。
衛兵はにやにやしながらこちらを見ていました。
何人ものゴブリンが逮捕されて、ようやく会社は事態に気づきました。
何者かが悪意を持ってゴブリンたちを貶めているのは明白です。
事態を収拾するまで、就職説明会の中止とゴブリン一人での外出が禁止されました。
緊急役員会の結果、まずは情報収集を行うことになりました。
法務部門を新設し、事件の調査をしたのです。
隠密が得意なゴブリンによって集められた情報は、知能の高いゴブリンによってまとめられました。
その結果、事態が明らかになりました。
首謀者は姫騎士 Co. Ltd. でした。
姫騎士 Co. Ltd. は、王女が発起人かつ筆頭株主である企業です。
衛兵を自由に動かすことなど容易いでしょう。
原因も判明しました。
ことの発端は、昨年の新卒向け就職説明会でした。
姫騎士 Co. Ltd. はその企業理念から、騎士学校を卒業した女性を中心にリクルーティングを行っていました。
ほぼ全ての卒業生が姫騎士 Co. Ltd. か関連企業に就職すると言ってもいいでしょう。
ですがその年は、例年とは異なりました。
そう、ゴブリン(株)です。
急激に影響力を伸ばしたゴブリン(株)は、マーケティング部門の働きもあって、九割の卒業生を雇用することに成功しました。
女性の就職先はもとからあまり多くなく、何もしなくとも女性が入社してくる姫騎士 Co. Ltd. は、企業努力を怠っていたのです。
ゴブリン(株)と姫騎士 Co. Ltd. の待遇の差は歴然でした。
これに腹を立てたのが、王女です。
姫騎士 Co. Ltd. の収益は、王女のお小遣いに直結しています。
今は良くとも、新入社員が減っていけば、お小遣いも減ることは自明の理です。
対策が必要でした。
そこで王女は考えました。
ゴブリン(株)が邪魔なら、排除すればいい。
姫騎士 Co. Ltd. には残念ながらマーケティング部門はありませんでした。
そして、「乱暴する気でしょ」作戦が開始されたのです。
この調査結果はゴブリン(株)を打ちのめしました。結局のところ権力だったのです。
ゴブリン(株)の中でもマーケティング部門の者たちは、それはもう怒りました。
自分たちが企業努力で成果を出している中、権力でそれを奪おうとしているのです。
しかし、公正取引委員会は王女の手中です。訴え出てもプラスに働くことはないでしょう。
一発逆転の策が必要でした。
何日も何日も、社員一丸となって対策を考えました。
役員も労働組合も、目指すところは同じでした。
ある日、女性社員が一人の女性を連れて相談にやってきました。
その女性は、女性社員の友人で姫騎士 Co. Ltd. に勤めているそうです。
友人は、ゴブリン(株)への非道な業務に良心が咎め、仕事を辞めたいと女性社員に相談したのです。
そして、同じように仕事を辞めたいと考えている姫騎士社員は多くいるとのことでした。
さらに衛兵たちは、「自分たちがモテないのはゴブリンのせいだ!」との考えを持っており、忠実な王女のしもべになっているとの情報も得られました。
これらの情報をもとに、一発逆転の策が考え出されました。
その名も、「[検閲済み]みたいにしちゃえ!」作戦です。
この作戦の最終目標は、姫騎士 Co. Ltd. の敵対的M&Aです。
そしてこの目標は、筆頭株主である王女を堕とす――[検閲済み]みたいなことする――ことで達成されます。
当初この作戦は、実現可能性に疑問がありました。
しかし全女性社員へのアンケートでは、百%の社員が実現可能だと回答しました。
自由記入欄には、「絶対に堕とせる」、「二人なら二百%確実(一回堕ちた後、もう一回堕ちる確率が百%)」、「私にもしてほしい」、「王女様だけずるい」、などの回答が寄せられました。
二百%確実との助言を受けて、さらに余裕を持って四人での作戦が立案され、承認されました。
作戦に際して、相談にきた友人を含めて、数人の姫騎士 Co. Ltd. 社員が協力者として、侵入を手引きします。
尚、協力者の姫騎士 Co. Ltd. 社員から、[検閲済み]みたいなことの効果を実証するため、自分たちに実施してほしいとの強い要望がありましたが、ゴブリン(株)の女性社員の強固な反対により実施されませんでした。
さて、「[検閲済み]みたいにしちゃえ!」作戦の実行日になりました。
この間、協力者の姫騎士 Co. Ltd. 社員の働き掛けによって、ほぼ全ての姫騎士 Co. Ltd. 社員が協力者になりました。
協力者になっていない社員は、本日全員休暇をとっています。
ゴブリン(株)の命運を背負った四人のゴブリンは、呆れるほど簡単に王女の部屋へと侵入を果たしました。
「なんだお前たちは!はっ、さてはゴブリン(株)だな!」
「警備の者はどうしたのだ! 誰か! 誰かおらぬか!」
王女は大声をあげますが、それに答える者はいません。
いえ、いました。野次馬根性を発揮した姫騎士 Co. Ltd. の社員が、扉や窓や屋根裏から見ていました。
「こやつらをひっとらえろ! どうして何もせぬのだ! はやくしろ!」
ゴブリンを止める者はいません。
四人のゴブリンはお互いに確認し合い、[検閲済み]みたいなことを開始しました。
「こら! 触るな! やめろ! 乱暴する気か、[検閲済み]みたいに!」
王女の顔が羞恥にゆがみます。
「くっ! お前たちに屈したりはしないぞ! [検閲済み]みたいに乱暴されても、心は屈しない!」
盛り上がってまいりました。
野次馬たちは隠れるのを止め、ベッドの周りに集結しつつあります。
ゴブリンたちは、様々な[検閲済み]みたいなことをしました。時に優しく、時に激しく、四人でかわるがわる[検閲宇角]みたいなことをしました。
王女の顔はますます羞恥に歪みます。ベッドの周りに集まった社員に見られていることが、羞恥に拍車をかけていたのです。
お昼前から始められた[検閲済み]みたいなことは、食事をはさんでさらに続けられました。
もちろん食事中も[検閲済み]みたいなことは続けています。
「くっ! 食事すらも自由にできぬとは、なんたる屈辱! だがまだ屈しないぞ!」
王女は強敵でした。
ですがゴブリンにも負けられぬ思いがあります。
それに段々と、王女の弱いところがわかってきたのです。四人は弱点を一気に突いて勝負にでました。
「や、やめろ! そこは、そこは……あぁー!! ……ぁっ、ぁぁっ」
王女は放心状態で、口からはちょっとよだれが垂れています。
四人は勝ったと確信しました。
「し、しましゅ。株式はぜんふ譲渡しましゅ~……」
呂律が回らないながらも、株式の譲渡がなされました。
すぐに証拠の書類が用意されサインしました。
もちろんこの間も、ダメ押しで[検閲済み]みたいなことは続けられています。
作戦は成功しました。
姫騎士 Co. Ltd. の買収が完了したことで、ゴブリン(株)への脅威は去りました。
さらに王女を手中に収めたことで、権力も手にしました。
冤罪で捕らえられているゴブリンもすぐに開放できるでしょう。
こうしてゴブリン(株)と姫騎士 Co. Ltd. の争いは幕を閉じました。
これからもゴブリン(株)は様々な困難に直面するでしょう。
しかし、社員一丸となって協力することで、きっと解決できるはずです。
解決できないときは王女の権力でなんとかしてもらいましょう。
end
[検閲済み]には好きな言葉を入れてください。
例として、[タイ古式マッサージ]や[足つぼマッサージ]などです。