ユナの想い
ユナに言われて来たのはいいけど・・・。
「ごめんなさいね。突然で。」
「いえ。俺は全然かまいませんよ。」
(むしろ、告白系とか勘違いしちゃうくらいに嬉しいです。)
うん。俺はこの世界ではエンペル=キョウであり、詐欺でも何でもない健全な13歳なんだ。
精神はオッサンだけど、それは前世の記憶を持ったまま転生したからであって、本来なら、そんな記憶は
ないはずだし。
「キョウ君・・・これ。」
「これは?お守り?」
一人考え込んでる俺をよそにユナが俺にお守り?らしきものを渡してきた。
「い、一応キョウ君のサポート役な訳だし、貴方に何かあったら私もやっぱり責任を感じてしまうし・・・。あ、あれよ。願掛けよ。」
ふむ。最近思うけど、ユナって時々ツンデレみたいな感じになるんだよな。
年頃の女の子はそうなのかもしれんが。
前世でも恋愛経験が少なかった俺にはよく分からんが、何だかんだ心配してくれてるんだってのは分かる。
ここは素直にお礼を言っておこう。
「あ、ありがとうございます。大事に持っておきますね。」
「え。う、うん。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
(え、この空気どうしたらいいの?き、気まずい・・・。)
このままここで黙ったままいても仕方ないし、ここは男の俺が先にリードして声を出さなきゃな。
「じ、じゃ~行きますね。」
「え、う、うん。」
(はぁ~。変に緊張した。)
俺はユナに背中を向けてテクテクと進みだした。
「キョウ君!!」
「え?はい。」
(ガバッ)
「え・・・。」
ユナに呼ばれて後ろを振り向いた瞬間ユナが俺に抱きついてきた・・・様に見える。
(ユナが俺に抱きついてる様に見える・・・。これは何かの幻術的なスキルか?え?ユナってそういうスキルも使えるのか?あれ?そもそもそういうスキルってあるの??)
落ち着け俺!!
相手はまだ14歳の子供だぞ。
冷静になるんだ俺!!
「ユ、ユナ先輩、ど、どうしたんですか?」
って言うと、ユナは涙目で俺を見ながら少し頬を赤くしている。
(うわぁ。これはヤバイ。)
14歳だが、この学園に入学する前にミコトに聞いた話だと確かこの世界では16歳から成人みたいだ。
だから、実際は、前世基準で考えると18歳くらいになる訳だ。
外見的にはまだ14歳って感じだが、精神年齢はユナだけじゃないけど、かなり大人に近いと思える程だ。
「絶対に無理はしないでね。わ、私は・・・。」
(ふむ。これは大人の勘だが、おそらくユナは俺に好意を持ってる可能性があるかもしれんな。)
・・・。
ヤバイ。正直嬉しい。
ダメだ。嬉しい気持ちが顔に出てしまう。
女性にこうまでされて行動しない男は男じゃない!
「ユ、ユナ先輩。この大会で優勝できるか分かりませんけどユナ先輩にこれ以上心配をかけないようにしますから安心してください。それと、無事に大会が終わったら話したい事があるんですけど、かまいませんか?」
俺がそう言うとユナは安心した顔つきでニコっと微笑みながら口を開いた。
「大丈夫よ、待ってるわ。気をつけてね。」
「はい。」
ふぅ。言ってしまった。
ここまで言ったら後は当たって砕けるつもりでいくしかないな。
まぁ、一つよかったと思えたのは、この告白的な状況下を作り出す事で相手の事を自分の中ではどう思ってるのか分かる所だな。
俺はユナが好きなんだ。
外見なんかはもちろんあるんだけど、中身も俺的にタイプなんだろうな。
ただ、年上だし自分が中身はオッサンだしとか考えてるとどうしても引け目になってしまってたが、年齢なんてそもそも関係ないっていうのを思い出した。
それは前世からそうだったろうし、それ以前の古い歴史から見ても男女の関係に年齢の壁は関係ないのだろうから。
俺は大会に対する覚悟を改めて持ち、それが終ってからのユナとの話も覚悟を持ち、闘技場へと足を運ぶことにした。




