生と死の大会.9(ラルド対ユーラ)
煙の中からギルド=ユーラの姿が見えた。
「ふぅ。今の攻撃は少し驚いたな。まさか、特異体質の五行属性者だったとはね。」
(全然効いてなさそうだけど・・・。)
ふむ。本当に驚いたのか?全く驚いた表情でもないが。
「今の攻撃が効いてなかったのか?」
「う、嘘でしょ。」
ヴァンもペンもかなり驚いてるな。
実際俺も全く攻撃が効いていないのはビックリしたけど。
「さっきのは中級スキル「土龍」だね。土と岩を混ぜた龍を造りだし、100%放った相手に龍が襲いかかるスキル。俺のクラスには土の属性者がいないから、いいものを見せてもらったよ。」
「はぁはぁ。な、何で俺の攻撃が全く効いてないんだ。」
ふむ。ラルドのヤツかなり体力が減ってるみたいだ。ギルド=ユーラの話を聞く処じゃなさそうだな。
それだけ今のスキルは五行紋開放での消耗が激しいのか?
「体力がヤバそうだね。まぁ君は魔力を調整しながらっていうのが苦手そうだしね。ただでさえ特異体質の人間は、五行紋開放にかかる負担が大きいというのに。」
「う、うるせぇ!まだ俺の体力は十分あるんだ!」
すると、ギルド=ユーラは溜息をついて再び口を開いた。
「もういいよ。少年レベルにしてはなかなかだけど俺が相手だったのは不運だったね。もう終わらそう。」
「なめんなぁ!」
(おぉ、気合いの入った声だ!けど、さすがに・・・。)
さすがに見た感じからも分かる。
どう見ても劣勢だぞ。
そして静かに、ギルド=ユーラがゆっくりと左手をラルドの方へ向けた。
「君は殺すには惜しい。だから、特別に痛みもなく終わらしてあげよう。」
(何を言ってるんだ?)
そしてギルド=ユーラは静かにそっと口を開いた。
「五行紋開放・・・。」
(ドサっ・・・。)
「え!」
「おい!」
「ラルド君!」
かなり突然過ぎて俺達三人は動く事ができなかった。
「ラルド!」
っと急に倒れこんだラルドを心配してか、闘技場に入ろうとヴァンが足をかけた。
「止まりなさい!」
っと、その声でヴァンはその場で止まった。
セリア先生だ。
まぁヴァンの気持ちは分からんでもないが、今は決闘中だしセリア先生の判断が正しいんだろうな。
「Dクラスのヴァン君、速やかに元に位置に戻りなさい。今は決闘中です。ラルド君の様子は私が審判として確認するので安心しなさい。」
「くっ。分かりました。」
そう言うとセリア先生は倒れてるラルドの方へ向かって確認を始めた。
3分後ー・・・
(いや確認ってそんなにかかるんかい!)
とりあえずラルドの様子を確認し終えたのか座り込んで確認していたセリア先生が静かに立ち上がった。
「グロギシア=ラルドの魔力枯渇による失神により、この戦いの勝者をBクラスギルド=ユーラとします!」
(パチパチパチっ!!)
勝者が決まった瞬間に観客席から多大な拍手が沸いた。
結果、ラルドは負けた訳だが死んだ訳じゃないしよかった。
だが、気になる点がある。
どう考えてもまだ魔力量もあったはずだし、失神する様なヘマはさすがにしないはずだ。
なのに、魔力の枯渇の上失神した?
以前に俺がラルドと手合わせをした時、俺は「炎雨」を発動してそのまま意識を失ったけど、俺とは違い、この世界の人間であるラルドが魔力が枯渇するまで暴走するのか?
さすがにありえん。
それにギルド=ユーラの五行紋開放が確認できなかったのも気になる所だな。
五行紋を発動していたはずなのに何の現象も起きなかった。いや見えなかった・・・。
(ギルド=ユーラ・・・怪しい。)
ヴァンもペンもギルド=ユーラを怪しんでいるみたいだが、原因が分からない感じだな。
(テクテク)
「やぁ。俺の戦いはどうだった?」
考え事をしていたので、全く気付かなかった。
いつのまにか、目の前にギルド=ユーラが立っていた。
っていうか、突然何で俺に話しかけてきたんだ?
訳分からん。
もしかして一番話しやすそうだったからか・・・。
いや、それなら俺よりペンの方が話しやすいのは外見的にも明らかだしな。
これはあくまで大会だし、ここで無視するのも変だしな。
一応会話しとくか。
「違和感でいっぱいだったよ。」
「違和感でいっぱいか・・・。まぁ君からすればそうなのかもしれないね。」
(俺からすれば・・・って全員同じだと思うんだけどね!)
「まぁ今は大会途中だし、この大会が終わってからまた話そう。じゃ。」
っと言うと、ギルド=ユーラは闘技場を出て行った。




