特異属性者の空間.1
空間の中なんて、前世では経験した事がないからちょっとドキドキ。
ようやく俺の鍛錬方法が分かるぞ。
結局ナッグ先生は鍛錬方法の詳細を教えてはくれなかったからな。
まぁ、それぞれの五行属性に合った鍛錬方法みたいだし、なる様になるはずだ。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
俺とユナは空間の中へ入って茫然と立ち尽くした。
なぜなら、空間の中は全く何もない只々白い空間だからだ。
「何もないわね。」
「何もないですね。」
(え、これもしかして空間を間違ったとかっすか・・・。)
さすがに初心者知識しかない転生したオッサンが理解できる状況でもないぞこれ。
「ん~。私的には瞑想部屋とかになってるものだと思ったんだけど。」
俺は逆に、ダンジョン的な空間とか次々現れるモンスターを倒して行くみたいな感じを想像してたけどね。
だが、何でユナは瞑想部屋なんて思ったんだ?
まぁ本人に聞いてみるか。
「あの、何でユナ先輩は瞑想部屋かもと思ったんですか?」
「五行属性の強化、魔力のコントロールをするのに瞑想をするのは当然です。」
(そんなに突然上目線で言わなくても・・・。)
なるほど。ユナ先輩の時は瞑想部屋だったのか。
っていうか、空間の中に入ってずっと瞑想するとか考えただけでもゾッとするな。
前世でも事務的な仕事だけはどうも苦手で大人しくずっといるのがどうにも耐えれなかったんだよな。
だからこそ、逆に後悔した日々を送ったっていうのもあるんだが。
前世の記憶がある分、そのしょうもない性格は引き継いでしまったみたいだな。
とりあえず空間の中には入った事だし、それ以上の事はナッグ先生から何も聞かされていないしな。
ユナにでも聞いて、去年どうやって鍛錬していたか参考にさせてもらおう。
「そういえば、ユナ先輩って去年は大会に参加しなかったって言ってましたけど、鍛錬はされたんですか?」
「もちろんしたわよ。先生に言われたのは大会の前日だったもの。」
(まぁ、五行紋の練度が高いなら事前に生徒に伝えておくのが通常だとは思うけどな。)
「ちなみにどういった鍛錬をしたんですか?」
「それを教えちゃうと私の五行属性も教える事になるわ。」
確かにそうだ。
鍛錬内容次第じゃ五行属性が分かってしまうな。
仕方ない。
「すみません。軽率でした。今のは聞かなかった事にしてください。」
「ふふ。キョウ君ってマジメなのね。まるで大人みたい。」
(は、はは。まぁ実際転生してるから外見は少年だが、実際はオッサンだからな。)
「私の鍛錬方法を聞いて、参考にでもしようと思ったんでしょ?」
「あ、はい。」
「分かったわ。私の鍛錬方法を教えてあげる。」
「え!いや、でもそれだとユナ先輩の五行属性が俺にバレちゃうって言いますか・・・。」
「本来は自身の属性を相手に教えるなんて常識では考えられないけど、サポートになった上級生は下級生に自身の属性を教える事になってるのよ。」
(え?何でだ?っていうか、それなら別に変な言い回ししなくてもいいじゃんよ。)
「サポートする側もされる側もお互いの五行属性を知っていた方が鍛錬に支障をきたさないって言うのが学園の考えだからよ。それに、キョウ君は特異属性者でありながら昨日今日サポートになった私に正直に自分の属性を教えてくれたから、むしろ私も教えなきゃ失礼だわ。」
ふむ。正直者でよかった。
やはり嘘付きよりも正直者の方が救われるっていうのは本当のようだな。
「ありがとうございます。」
そして俺はユナから去年ユナが行った鍛錬方法とユナの五行属性の詳細の話を聞いた。




