大会へ向けて.5
(ガチャ)
っと俺が部屋を出てからナッグ先生が、しばらくして部屋から出てきました。
「皆、お待たせ。皆の五行属性と魔力量を見せてもらったおかげで、皆が強くなる為の鍛錬方法を考える事ができたよ。」
俺は直接内容を聞いたから、別に驚く事も何もないけど他の四人は個別に呼ばれた理由なんて知る由もない訳で。
(ガタっ)
っとヴァンとセナとラルドが席を立ちあがった。
「なんだそりゃ!」
「どういう事ですか?」
「先生といえど、きちんと俺達が納得行く理由を説明するのが筋じゃないのか?」
「え、え~っと。」
ペンの反応は予想通りだけど、全く分からないままで納得いかない皆の気持ちは分からんでもない。
まぁ、俺も何も知らない状況なら、皆と近い感じで先生に反論してただろうしな。
「まぁまぁ、そう興奮しないで。一旦皆落ち着こうね。」
ナッグ先生が一言静かにそう言うと、三人はグッと抑え込まれた様に席に座った。
(一言で場を鎮めるとは先生の圧力ってのもなかなか凄いもんだ。)
今の俺には懐かしいが、俺も前世でまだ子供だった頃毎日怒る先生に言われるより、普段とても優しいけど、たまに怒ると静かに「静かにしなさい。」って威圧感を出す先生がいたけど、そっちの先生の方が怖かったなぁ。
まぁ、こういう相手に対する恐怖とか空気を感じ取るってのも学生の醍醐味だしな。
社会人になってからじゃ手遅れだからなぁ。
ってこの世界でそれが関係あるのかは分からないけど、全く関係ないって訳もないだろうし四人にはいい経験だな。
「もちろん、初めから説明はするつもりだったから安心してね。それに鍛錬方法をそれぞれに見合ったやり方にするって言うのを初めに言っちゃうとワザと手を抜いたり、仲のいい友達に合わせたりしちゃう子っているからね。それも含めて最初には言わなかったんだよ。」
(ふむ。この子達にはいい経験になるな。)
「先生、今の先生の言い分だと私達生徒の事を全く信用していない様に聞こえますが?」
まぁ、誰かしら反論してくるとは思ったけど、セナからか。
まぁ、何だかんだ言ってもまだ子供だし分からないよな。
セナの質問に対してナッグ先生はサラっと口を開いてこう言った。
「そうだね。信用していないかな。」
まぁ、その言葉を聞いてショックなのか悔しいのか知らないが四人は黙り込んだ。
質問したセナ本人なんて少し涙を流してるじゃないか。
「まだ13歳の皆には厳しい言い方をしたけど、君達がこの先年齢を重ねていく中で、こういう信用するしないや、騙した騙されたって言うのを経験する事になるんだ。だからこそ、僕の生徒になった子達には先に大人の世界がどれだけシビアで汚く厳しい世界なのか一部だけど知って欲しかったんだ。」
っと先生が言ったけど、おそらく理解しきれず納得できない状態だろうな。
こればかりは成長過程で自分でツライ経験をしたりしないと分からないからなぁ。
「ふぅ。突然暗い雰囲気になっちゃったけど、僕が言いたいのは出会ったからすぐに他人を信用しちゃ駄目だし、信用しても駄目って事だね。今は難しいかもしれないけど、せめて頭の隅っこでいいから入れておいてね。」
先生がそう言うとセナは黙ったままコクリと頷いた。
ナッグ先生は本当に生徒の事をよく考えてるな。
言葉に思いやりも感じるし。
「じゃ!皆気持ちを切り替えて!大会までの時間をタップリ使ってそれぞれ強くなれる様に今から一人ずつ言っていくからきちんと聞くように!」




