大会へ向けて.4
それからペンが出てきて、次にラルドが入り、その次にセナが入り・・・。
そして最後は俺が呼ばれる事になったようでして。
「じゃ最後はエンペル=キョウ君。どうぞ。」
まぁ、俺の場合はいちいち属性の確認や魔力を測る必要なんてないんだろうけどな。
先生も分かってる上で皆の手前同じ流れでやってるんだろうし、ここは俺も合わせておかないとな。
「はい。」
(ガチャ)
中へ入ると先生が椅子に腰を掛けて座ってる。
(・・・・・腰までフワリと沈む不思議な椅子・・・・。)
「じゃ、キョウ君こちらに座ってね。」
「先生、その椅子メチャクチャ気持ちよさそうですね。」
「え、あ、あぁ。これ。そうなんだよね。これがまた身体を包む感じというか気持ちよくて。」
「へぇ~。」
「あ、あ~。」
俺的に何が言いたいか時代は違えど同じ世界に生きていた前世の転生者同士だ。
多分察したんだろう。
チラっと椅子の方に目をやり俺の方をゆっくりと向いて口を開いた。
「この椅子は学園長から頂いた物で、この年齢になってくると腰が痛い時があって。」
「ハハ、ナッグ先生。冗談ですよ。前世ではオッサンでしたが転生した俺は今13歳の身体なんですから。腰も痛くありませんし、気持ちよさそうには見えましたけど、妬ましく思ったりなんて事はないんで。」
「僕もこちらの世界で生きてもう30代突入だからね。はぁ。」
「あ、ハハ・・・。まぁ、それは仕方ないですよ。俺もまたこの世界で先生と同じ様に年齢を重ねる事になりますしね。」
「そうだね。」
っと属性確認や魔力を測るのはそっちのけで世間話で盛り上がる俺とナッグ先生なのであった。
ってぇ、オッサン同士になるとこれだからダメなんだよな。
話を戻さなきゃな。
「あの俺まだ属性確認とか魔力測定まだしてないんですが、大丈夫なんですか?」
(まぁする必要はないんだろうけどね。ミコトがいる時の会話で俺が特異属性者だって完全に分かってるだろうし。)
「う~ん。他の生徒の手前キョウ君だけしない訳にもいかないんだけど、キョウ君の場合転生者であり直接ミコト様から祝福をしてもらった人間である以上・・・ね。」
っで、結局どうなの?
「ミコト様が現れた時の会話で君が転生者で特異属性者だって分かったけども、君がどの特異属性者かは分からないままなんだよね。だからこそ、こんな小さな部屋で特異属性者が五行紋を開放したら、多分・・・。」
(ミコトはあの時点で別に何も言わなかったし問題ないか。)
正直、素直に自分の特異属性を喋っていいのか迷う所だけど、現時点で俺よりもナッグ先生の方が詳しいのは当然の事だしお互い詳細は分かってる訳だし信じてみるか。
「ナッグ先生、俺の特異属性は「全」という特異属性です。」
俺はナッグ先生にそう言うと、魔力を通さず目の中にある五行紋だけを開放して見せた。
「瞳の中に五行紋が・・・。五行紋が白い。君は本当に「全」の特異属性者なんだね。」
「はい。」
「僕の事を信用して見せてくれたんだね。ありがとう。それだけで十分だ。」
「え、十分って・・・。魔力とかいいんですか?」
「特異属性者ってだけでも躊躇してしまうのに、その上魔力を測った所で意味がないよ。っていうか、こんな所で五行紋を開放してる状態で魔力を流したら多分ヤバイと思うしね・・・。君もミコト様から聞いてると思うけど、特異属性者は異質な存在だからね。」
それだ。俺が気になってたのは。
異質ってどういう事なんだ?
今すぐにでも先生から聞きだしたい所だけど、多分見た感じだと今は教えてくれなさそうな気がするんだよな。
「分かってるよ。キョウ君が気になる点が何かは。でもそれは今は知る時じゃない。」
(知る時じゃない。精神的にオッサン年齢の俺にあえて、そう言うって事はタイミングとかあるって事なんだろうな。)
「ふう。分かりました。」
「ありがとう。とりあえず、これで全員確認できたからね。それぞれに見合った鍛錬方法を決めれるよ。」
なるほど。個別で呼んでたのはそういう意味もあったのか。
確かにこの方法なら一石三鳥だ。
ナッグ先生以外に属性や魔力量は知られないし、一対一での会話でコミュニケーションを取りつつ、相手の性格や仕草なんかを見て鍛錬方法も考えれるって訳かぁ。
く~。さすがに先生歴長いだけあって素晴らしいな。
っと少し自分のクラス担任がナッグ先生でよかったと誇らしく思いながら俺は部屋を出た。




