合格.1
「待ってましたよ。」
「ど、どうも。」
俺は今校長室へとやってきた。
最初の五行属性適正試験は保留になったから、そのまま魔力試験と学科を受けてそのままセリア先生に案内されて訪れた感じかな。
だから、俺の合否がどうなってるのかはまだ分からない。
「エンペル=キョウ君。試験お疲れ様です。」
「あ、お疲れ様です。」
「試験が終わったばかりなのに呼び出してしまい申し訳ありませんね。」
「いえ、俺は別に大丈夫ですけど・・・。」
(あー緊張する。)
いいから、早く用件を言って欲しいんだけどなぁ。そして早くこの場から立ち去りたい。
自分から聞いてみないと話が進まないなこりゃ。っと思い俺は自分から話を吹っかけてみた。
「あの、試験が終わり次第ここへ来る様に言われましたが、俺何か問題でもあったんでしょうか?」
すると、校長先生はニコっと微笑み首を横に振った。
「いえ、あの五行属性適正試験でのキョウ君の適正は問題ないと思っています。魔晶石が割れるということは一定レベル以上の力があるということです。ただ一つ確認しておきたくて私が個人的にキョウ君と話をしたかったんですよ。」
なるほど。って事は、校長の話的には最初の試験は合格って事だよな。
校長先生は、そのまま会話を続けた。
「私の確認したかった事は一つです。君は、もしかして女神の加護を受けているのではありませんか?」
(女神の加護??なんじゃそりゃ?)
初めて聞く言葉に俺はかなりポカーンとした顔で校長先生を見ていたんだろうな。
校長先生も少し苦笑してるし。
「えーっと、女神の加護って一体何なんですか?」
「女神の加護とはその通り、女神から加護を受けた特殊な人間の事ですよ。女神の加護を受けた人間は他の五行属性者とは全く異なる特異属性者となるのですよ。」
ん?どういう事だ?
女神と言えば思い当たるのはミコトくらいだが、別に普通に五行属性の儀式的な事をしただけだろう。
ミコトも別に女神の加護とか一言も言ってなかったし。
「通常、五行属性を得る儀式では自身で儀式場所を探し、そして女神様により祝福を受けて五行属性を得る訳なんですが、女神様が直接儀式を受けにきた人間に対して祝福を与える時があります。それは本来の祝福とは異なり、五行属性者を特異属性者へと変化させます。」
(まさか・・・。)
俺はふと頭にミコトが俺に口付けをした時の事が頭をよぎった。
ミコトのヤツ、そんな事一言も言ってなかったのに。
この話には妙に納得できる部分がある。
多分だが、本来は俺の五行属性は炎属性か水属性のはずだったが、女神である(この世界の神って言ってたけど)ミコトに口づけをされた事により、俺の五行属性を特異属性に変化させたんだろう。
ミコトはあれでもこの世界の神みたいだし、おそらく知ってて俺に口づけをしたんだろうな。
転生したボーナス的なヤツなのか?
校長は続けて話しだしてきた。
「この学園で現時点で特異属性者はキョウ君を含めて4人しかいません。それだけ重要な存在だということです。この学園では特異属性に限り、無条件で試験を合格にするというルールを定めているんですが・・・。キョウ君はどうでしょう?」
(これは多分合格にするけど、入学するかい的な言い回しだな。)
それよりも俺からはまだ俺が特異属性者だと口にしていないのに、校長先生は既に俺を特異属性者だと断定している。おそらく確信を持ってるから俺の属性を聞かず話してるんだ。
さすがに前世で社会経験を積んだオッサンだからな。これくらいの言い回しなら理解できる。
「俺はぜひお願いしたいです。ただ、一つ気になる事があるんですけど。」
「なんでしょう?」
「特異属性者が非常に少ない貴重な存在だというのは分かりましたが、だからと言って何故そんなフリーパスでの合格なんですか?レベルがどうなのか分からないし魔力も学科も、もしかしたらダメかもしれませんし。」
「それは簡単ですよ。特異属性者は基本的にレベルも魔力も通常の五行属性者とは異なるからです。」
「え?」
「そうですね。分かりやすく言うと、五行属性者の上限レベルが先程の魔晶石一個分としたら、特異属性者は魔晶石がいくらあっても足りませんね。なんせ特異ですから、レベルが読めないですよ。それに、基本的に特異属性を得た人間は、潜在魔力がかなり多くなければなれないのですよ。」
(その言い方だと実際に試した様な感じだが。)
「なるほど。」
(っていうか、それなら俺試験全部受けなくてよかったじゃん。)
「すいません。この話を聞いた時点で何故試験を全部受けさせたのか意味不明ですよね。」
(え!こ、心を読まれた!?)
俺は少しギョっとなった。心読まれてたらマジメに怖いんですけど。
「あ、間違っても心を読めるとかではないので。キョウ君顔に出るので何だか分かりやすいんですよね。それと、全部試験を受けさせたのは周辺の子達の手前仕方なかったのです。」
納得。確かに、途中で俺だけ試験は合格にするから、残りの試験は受けなくていいよ。なんて聞いたら、色々勘違いしたり、文句を言ったり、もしかしたらそれが原因で大事になる可能性もあるもんな。ん~、それなら仕方ない。
「校長先生の言いたい事は分かりました。」
「ありがとう。では、改めて言い渡します。私、グロリア=ペンスの名の許にエンペル=キョウを合格とし、グロリペンス学園への入学を認める。」
っと、校長が言うと、俺の足元に大きな魔法陣が出てきて、ピカーっと光った。
そしてあまりの眩しさに俺は目をつぶってしまった。




