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最凶賢者、セクハラで辺境へ左遷される。  作者: 士口 十介
最凶賢者は辺境へ行く
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閑話:深淵の図書館

 “深淵の図書館”と言うユニークスキルが発動したのは私が五歳ぐらい、丁度物心がついてしばらくした頃だ。


 私自身は貴族の六男として生まれた。

一番上の兄は私が生まれる前に亡くなったらしい。

次男のブラン、三男のマークは健在だが、他の兄達は五歳になる前に亡くなっていた。

その為、私はマークの予備としてこの世に生を受けたらしい。

家での生活はブランやマークが優先されており、私はもっぱら放置されていたのだ。


 小さいとはいえ、五歳ごろになると様々な事に興味を持つようになる。

いわゆる知的好奇心というものだ。

私は家族や使用人から放置されていた為、その好奇心が満たされることは無かった。

常に知識に飢えていたとも言える。

その上、貴族によくある膨大な魔力を持て余してもいた。


ブランやマークには専門の教師が付き、魔法を習っていたがまだ年少の為でもあるが私に魔法の教師はいなかった。

彼らが魔法の訓練する傍らで、その様子をじっと見つめていた。


アレはいったい何の魔法か?

どうやって使うのか?

私にも使えるのか?


好奇心が大きかった為か、魔法に対する能力が高かった為か……?

ある日、頭にひらめくものがあった。


魔法の矢マジックアロー、詠唱を行ってください。使用不可>


詠唱?


<魔法を使用するカギとなる幾つかの文言を唱える事>


なぜ私には使えない?


<メンタルポイントいわゆるMP、精神点が足りません。>


精神点?


<魔法を使うのに必要な精神エネルギーの事>


精神点を増やす方法は?


<精神点を限界まで消費する。年齢が低いほどその効果は高い。>


 私が疑問に思ったことの答えが次々浮かび上がった。

好奇心が大きかった為か、魔法に対する能力が高かった為か……?

私の“何かを知りたい”と言った要求が“深淵の図書館”と言うユニークスキルを発動させた瞬間だった。


 発動した当初の“深淵の図書館”は知りたい事について簡単な答えが得られるものだった。

幼いなりに色々と使っていると多くの答えを得られる様になる。

更に使っていくと、さらに答えの内容が増えて行った。

どうやら私の知識量にも比例している様だった。


スキルの使用を繰り返す内にそれは一冊の本の形を取り始めた。

私が尋ねる事柄が高度な物になり以前の様な数行で収まる物では無くなっていた。

特に錬金術や大規模魔法は数冊の本が必要な物もあるのだ。


私はスキルを使い、様々な魔法や錬金術などを覚えていった。

その絶え間ない研鑽の結果、王国魔導学院を首席で卒業し、魔導研究所の一員になった。


ある日、私の目の前に厳めしく重厚でそして怪しげな扉が出現した。

それが”深淵の図書館”への入り口であり、私は図書館自体に出入りする事が出来るようになった。


当初は図書館の管理人と言っていた”N”に出会った。彼の奇妙な姿に私はとても驚いた。が、怖いとは思わなかった。


確かに不気味で得体のしれない者たちだが、彼らが一体何なのか?

興味の方が勝っていたともいえる。


私は彼らが何なのか?どのような存在なのか?一つ一つ解きあかしていった。

そして、私は図書館にある数々の驚異を克服することでさらに成長を遂げた。


更なる成長を遂げたが、その反動もある。

ある日、一斉に私の頭から髪の毛が抜け落ちた。

頭皮から髪の毛が失われたのだ。

さらに目は落ち込んだ上、皮膚は不健康にくすみ、不健康そうにふらふら歩く。さながら死者ゾンビの様だった。


しかし私には問題はなかった。

次の日には元通り、ふさふさの髪の毛、つやつやの肌で、溌剌と健康的な姿で研究所へ出勤した。

極めている錬金術を駆使し、毛生え薬、美容液、活力剤を作り出したのだ。


問題はそれを見た国王やお妃、宰相や軍務大臣にあった。

当時国王は薄くなる自分の頭に悩んでいたらしい。

そしてお妃は年齢からくる肌の衰え。

宰相と軍務大臣は兵士の強化。


それぞれも思惑が絡み合った結果、


毛生え薬は”ノビールΩ”

美容液は”ウルオインZ”

活力剤は”リブートX”


として大々的に採用および販売された。

その結果、アルバ王国には自分で剃っている者以外、髪の毛のない者はいなくなり、女性は若々しく見え、疲れた顔の人が少なくなった。

これらの売り上げは莫大な利益を王国と研究所にもたらした。

美容液は遥か遠方の国からも引き合いがあったそうだ。


私はこの三つの発明品により、“トリストメギストス”三倍の賢者の称号を受けた。

他にも魔道冷蔵箱や新魔法を開発した結果、若くしてアルバ王国の筆頭魔導士にもなり、人々から賢者と呼ばれるようにもなったのだ。


全ては”深淵の図書館”があったからだと言えよう。


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