エピローグ
翌朝、目が覚めると私はベッドの上にいた。
当然服は着ていない。
私の傍らではアデレードがすやすやと寝息を立てて寝ていた。
彼女もまた服を着ていない……手首に巻いているのはリボンか?
これは私がアデレードへ贈った箱(矯正下着入り)に使った物の様だ。
少し遡って思い出してみよう。
場合によっては事の再現の必要があるだろう。
昨日、屋敷を持ってきたのは良かったのだがベッドは一つしかなかった。
他の部屋は人が来ることは想定していなかったので備品は一切ない空き部屋の状態だ。
ベッドを取りに王都へ行ってみるが、すでに夜遅く店も閉まっていた。
仕方がないので、その時はベッドをアデレードがソファーを私が使うと言う事になっていたはずだ……。
その後、食事になり、アデレードが作った料理を食べた。
食後に秘蔵のワインを開け……かなり強い酒だったのかその後の記憶があいまいだ。
責任を取らなくてはならないとかなんとか言われたような気もする。
……済んだことは仕方がない。
村長に訂正をする必要が無くなったと考えればよいか。
とりあえず、今後の対応を図書館で検索する。
一緒に朝を迎えた時のセリフは……。
むむむむむ、時間が足りない。
そうしている内に隣で寝ていたアデレードが身じろぎしぼんやりと目を開けた。
何とか異界のセリフ集をアレンジしてみよう。
「やあ、おはよう。アデレード。君の可愛い寝顔を見ていてもよかったんだが……」
私の言葉にアデレードは顔を赤くし、シーツの向こうに隠れてしまった。
「やれやれ、困ったお嬢さんだ。」
と言ってアデレードを抱きしめた。
その後、二回戦が始まったのは言うまでもない事だ。
客室のベッドは今だ購入されてはいない。
-------------------
私の名はグリーデン、魔物使いだ。
あの偉大な”トリスメギストス”マグナス様によってこの場所に来ることが出来た。
この場所、深淵の図書館にはこの世のあらゆる文献が揃っている。
失伝したと言われている魔物使いの上級職”魔獣使い”や”悪魔使い”についての文献が存在した。
それだけではない。
聞き覚えのない職業、来訪者使いなどの文献も存在した。
(来訪者とは何だろうか?)
私はそれらの書物をむさぼるように読んだ。
いったいどれほどの時間が過ぎたのだろうか?
もう何年もここにいるような感覚になる。
いや、何十年、何百年だろうか?
ここでは眠くなる事も空腹になる事もない。
その事実がこの場所の特異性を語っているようで心胆を寒からしめる。
ここの管理人と言う自称”N”と言う顔のない男もそうだが、不気味な不定形の生物やナメクジの様な生物たちが闊歩する。
私はそれらのあまりにもおぞましい異形に恐怖を覚えながらも魔物使いを極めようとしていた。
マグナス様は”最低限オーガ”とおっしゃられていた。
だからと言って”オーガ”を使役すれば良いと言う物ではない。
”ジャイアント”
やはり”ジャイアント”を使役できるようにならなくてはいけないだろう。
今では”トロル”まで使役できるようになった。
目標の”ジャイアント”まであと少し。
そうすればこの場所から……。
-------------------
それからしばらく、一月ほどは村の整備や村からの道路の整備に忙しかった。
次は耕作地も改良する予定だ。
そんなある日、私は朝食後の休憩とお茶を楽しんでいた。
アデレードは少し気になったことがあるのか私に尋ねてきた。
「ところでマグナス、この間のゴブリンですが……」
「ゴブリン?ああ、村を襲った。」
「あのゴブリンはなぜ村を襲ったのでしょうか?」
「……あ。」
第1章 完
第二章は近いうちに投稿する予定です。




