最凶賢者の討伐
私は最も討伐が簡単なローパーを討伐することにした。
ローパーは倒し方によってその素材の質が変わる。
これはローパーが魔力により動いている魔物だからだ。ローパーの触手には魔力を通す為の道が毛細血管の様に張り巡らされている。魔力を通す道には魔力が常に通っていると思って良い。この特性の為、ローパーは錬金術の優れた素材になるのだ。
魔力が充満した場所が傷つくと魔力が噴き出し魔力の通り道を傷つける。その為、戦闘が長引くほどローパーの触手の価値は下がることになる。
加えて、一体が倒されると他のローパーは狂暴化状態になり触手を滅多矢鱈と振り回し傷をつける。これによって狂暴化状態のローパーの触手だけでなく近くのローパーも傷が付きの価値が下がる事になる。
仲間が倒されたと気付かれることなく倒す。
私はローパーの密林の周囲に魔法陣を描く。ローパーからかなり離れているので気付かれることは無いと思うが、念のために隠蔽用の魔法陣も追加しておく。
この魔法陣は普段使われる魔法陣とは少し違う。普段書かれている魔法陣は地面や壁に直接描かれるのに対し、私が今描いている魔法陣は少し高い位置、空中に描かれている。
「対になる場所をどこにするか……屋敷の隣で良いか、場所は開いているし。町に近いから後の作業もしやすいからいいだろう。一応、安全を期して割り込みで良いか……。」
私はローパーの密林を囲む魔法陣に魔力を流し呪文を唱える。二重になっている巨大な魔法陣の内側が光り魔法が発動した。
黒い半球状の膜がローパーの密林をすっぽり覆う。
「これで外側の魔法陣の音や光は内側にもれない。」
私は続いて外側の魔法陣に魔力を流し発動させる。魔法陣は轟音と共に光輝き行く層もの複雑な図形を構成し始めた。
「目標、屋敷横、森林側の平地。発動!」
指を鳴らすと同時に構成された図形が更に輝きを増し轟音と共に光の奔流が生まれる。その光の奔流はあまりの大きさに町の方やサイクロプス討伐に出た冒険者の目にも写ったと言う。
そして光の奔流が消えうせた時、ローパーの密林があった場所には何もなかった。いや、何もないわけではない。切り株の様な物が多数あるだけだった。
私はその切り株を見て何も異常が無いことを確認する。
「ふむ。一瞬で転移することで綺麗に切断出来たな。これならばローパーも倒されたとは気づくまい。」
私は広域転移魔法陣の位置を少し高い位置、空中にすることでそこから上を別の場所に転移したのだ。
「次はスワンプドラゴンか。あれは動いているから今の方法は使えないから一頭一頭倒すしかないか。素材が必要なければ広域殲滅呪文で何とかなるのだが……。」
私は飛行魔法を唱えた。そして、スワンプドラゴンの倒し方を考えながら、住処である湖へ向かうのだった。
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ローパーの密林からそう遠くない岩山ではサイクロプスと冒険者の戦いが繰り広げられていた。
冒険者ギルドの総力を挙げた戦いであり、領主であるマグナスから各種アイテムを下賜されていたがサイクロプス相手に苦戦していた。
彼らが弱かったわけではない。この場所に住むサイクロプスが想定よりも多く居たことと、年を経た青いサイクロプスが居たことが原因だった。
「なんてしぶといサイクロプスだ。赤い騎士と言われた俺たちが連続攻撃をしているのに倒れやしねぇ。」
「ガラミテ、もう一度連続攻撃をかけよう。」
「だめだ、ノウン。あの青い悪魔のようなサイクロプスは隙がねぇ。他のサイクロプスも集まってきやがった。連続攻撃に割り込まれる可能性がある。そうなるとまずい事になる。」
ガラミテ達の連続攻撃は一体を倒すための連続攻撃で相手の攻撃を封じるのだが、そこへ別の目標が混じると連続攻撃が寸断され、逆にガラミテ達がダメージを受ける。
(あいつの気をそらせればいいのだが……。)
その時、ガラミテの願いがかなったのか、はるか遠くで巨大な魔力が発生した。その魔力のあまりの巨大さは古参のサイクロプスの注意を引き付ける。
「しめた!奴の動きが止まった、ヴィ!ノウン!連続攻撃だ!」
ガラミテが槍を構え大きく切り払う。その後ろからヴィが槍を叩きつけ、さらに後ろのノウンが槍突撃する。動きの止まったサイクロプスはたとえ古参であろうと彼らの連続攻撃の相手ではない。あっという間にその命の散らすこととなった。
(しかしあの魔力はなんだ?確かあそこはローパーの森があったと言っていた所だな……。)