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最凶賢者の都市計画

 グリーデン達がヒポグリフの世話をしている間、私の方でも別の計画を進めなくてはならない。


“都市計画”


 折角、ヒポグリフによる輸送網を構築しても、それを利用する対象が無ければ全く意味が無いのだ。その為にも、ヒポグリフの輸送網の中心点である都市を建築しなければならない。私は自分の机の上に村や屋敷の位置が書かれた図面を広げる。以前記入した計画をさらに細かく仕上げるつもりだ。


 (ヒポグリフを輸送の中心にするとして、それが発着する場所を中心からそう遠くない場所に建設する必要がある。商業区画の傍らが最も適しているな。ただヒポグリフの獣舎からの排水は他の区画とは別系統の排水にする必要がある。商業区画の中心に排水路を引く計画だからその反対側に引くと……。)


 およその町の形が書かれた図面の上に四角い図形や丸、直線が書き加えられ都市の形が表されてゆく。その形は王都とは全く異なる物だった。王都は城壁で都市を囲っている形だが、私が作る都市の城壁はその外側の耕作地とグレンツェンデ大森林との間に築く。その為、城壁の長さは王国でも例を見ない物になる。だがその事により耕作地を守ることが出来る。片方をシフベルガ山脈に繋げれば、山脈からの道も少しは安全な道になるだろう。


 この時点で、私の計画している城壁は幅が10mある物になっていた。その為、基礎の部分を作るだけでも私の魔法で一ヵ月近くはかかる計算だ。基礎が出来上がった後は石材を組み上げればよいのだが、流石に大量の石材が必要となり、ヒポグリフの輸送力が必要となる。その為、基礎が出来上がったらヒポグリフで石材の輸送が出来るまで休止となるだろう。


「マグナス、これは以前見せてもらった図面ですよね?」


いつの間にかアデレードがやって来て私が書き加えた図面を眺めている。この際、アデレードに都市計画についての感想を聞いてみようか?アデレードなら違った視点で見ることが出来るため、私とは異なった意見が出る可能性が高い。


「アデレード。前に見せた町の開発計画の図面をさらに詳しく書き込んだものだ。これでこの辺り一帯の開発計画を書き込んだのだが、君の意見を聞きたい。」


「色々追加されているのですね。村の道を延長した先には商業区画を作るのですか……。商業区画の隣の広い施設は?ひぽぐりふ?発着場?」


「ヒポグリフはグリフォンの様に空を飛び大きな荷物を運ぶことが出来る。気質は馬に近く調教しやすい。発着場はそのヒポグリフが離着陸する場所だ。」


「そうなのですか。でもその様な魔獣がいたのですか?」


 やはりアデレードはヒポグリフと言う魔獣が今まで存在しなかった事を知っている様だ。


「グリフォンと馬を魔術的に交配させた魔獣だ。」


「交配!?ですか……。王国でも戦力強化で研究はされてきましたが、どの交配も凶暴で手に負えなかったと記憶していますが?」


「戦力強化のために攻撃性を上げる方向にした結果だな。攻撃性を高めた事で気性は荒くなった。魔獣だから手に負えなくなるのも無理はない。それに対してヒポグリフは扱いやすさ、気性が穏やかな方向を目指したのだ。」


 私の説明を聞き、アデレードは納得したように頷いた。


「輸送のための魔獣を商業区の隣で離着陸することで物資の輸送を早くするのですね。魔獣用の獣舎の排水と商業区画の排水を分けることで獣舎の汚水の悪臭が商業区画に影響しない様にしているのですか。ヒポグリフの発着場の近くに職人の区画、商業区画を挟んで反対の位置に居住区は良いと思います。後は……?マグナス、この町の守りは?以前はこの位置に示されたと思いましたが?」


 私が依然示した城壁位置は現在の耕作地の外側だった。だが、新しい図面に示された城壁の位置はもっと森に近い位置だ。その場所に城壁を表す線を引いている。シフベルガ山脈から平地を通りイムラデリン川にまで続く線だ。この線は川の近くで曲がり川に沿って引かれている。しばらく川沿いを進んだ後、再び平地を横切りシフベルガ山脈にまで続いていた。


「長大な城壁ですね。この長さだと完成に数年はかかります。ホーエンハイム領での一大事業となります。数年単位で工事を分けるとして、グレンツェンデ大森林との間の城壁を早急にかかった場合でも完成は二年後ですか?」


「いや、そんなにかからないぞ?半年以内には完成の予定だ。」


 アデレードは概算で施工期間をはじき出したようだが、私の魔法と図書館からの知識があればこのぐらいの城壁は半年もかからない。実際、余裕だろう。


 だが、アデレードは少しむっとした様な顔をして私を見た。


「マグナス、それだとあなたは休みを取らない事になりませんか?それに何日も働きづめだと思いましたが?」


「そうだな。でも私は魔導士なのだからこのぐらいは平気だし、いざとなれば数々の秘薬もある。中には”三日ぐらい寝なくても全然疲れない薬”もあるから大丈夫だ。」


バンッ!


「何を言っているのですか!」


 アデレードが机を叩き、厳しく詰め寄ってきた。その迫力に私は思わず縮み上がってしまう。


「いいですか?領主であるあなたが休まないのにそれに仕える領民は休むと思いますか?当然、休みませんよ。あなたと同じように休まず作業することになるのですよ。それこそ老若男女問わずとなります。それで領民は疲れずに過ごせるとお考えですか?休みなしで働くと体力や気力が著しく低下します。そのような状態で領地の防護も出来ると?魔獣に襲われても十分な反撃も出来ないでしょう。それに!」


 と、一気に捲し立てた後


「それに、私は休みの日にはあなたとゆっくり過ごしたいのです。」


「……」


 アデレードはすこしうるんだ目でも上目遣いで私を見た。


「……。」


 うん、彼女の言う通り休みは大切だ。

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