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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
9/23

絆の夜

4人で楽しく会話していると、コンコン、と扉がノックされた。

リンが扉を開けると、ラックさんが立っていた。



「ユズカ様、リツ様。夕食の準備が整いました。食堂へご案内いたします」

「あ、はい!分かりました!」



ラックさんに案内され、律と並んでついていく。

リンとナナは私たちの後ろにそれぞれついている。

食堂につくと、大きめのテーブルに椅子が10個並んでいた。

ソニアさんはまだのようだ。



「あぁ、ちょうど良いタイミングだったね。さすがはラックだ」

「恐れ入ります」



……と思っていたら、ソニアさんが到着。

なんて完璧なタイミング。さすが執事!

これが執事の基準なら、執事には超人でないとなれないと思う。

ソニアさんが上座に座り、私と律はソニアさんに近い席に向かい合わせで座る。

席につくとすぐに、前菜が運ばれてきた。

前菜を食べ終わって少しするとサラダが出てきた。

トマトやレタス、パプリカらしきものがきれいに盛り付けされている。

……この世界では何て言うんだろう。

野菜の味は地球のものと変わらないから、親しみがわくなぁ。



「美味しいです!」

「さっき焼き菓子を褒められて喜んだシェフが張り切っていたからね。それに、ユズカとリツと出会えたことを記念して、今日は少し豪華な夕食にしてもらったんだ」

「それはうれしいですね。本当に美味しいです」

「私たちも、ソニアさんに出会うことができて嬉しいです!」

「ふふ、ありがとう。シェフにも喜んでいたと伝えておくよ」



その後も、スープ、パン、魚料理、肉料理、フルーツと続き、どれも絶品だった。

その中でも、私はふわふわのパンとお魚のムニエルのまろやかな味わいがとても気に入った。

フルーツはパイナップルみたいな味に食感はメロンというもので、美味しかったけれど不思議な感じだった。

トロナというフルーツらしい。

私にはたくさん好きな食べ物があるけれど、このトロナは特に好きな食べ物になりそうだ。

美味しいなぁ。

その後、ショートケーキが出てきた。

生クリームがとても濃厚で、ついうっとりとしてしまうくらい美味しかった。

このケーキならいくらでも食べられそうな気がする。

少し間を置いて、紅茶が出てきた。



「本当に美味しかったです!」

「ユズカはとても楽しそうに食べるね。見ていて美味しいのが伝わってくる」

「柚華は昔からそうですよ」

「そうかな?それにしても、リンとナナは給仕のタイミング完璧だね!」

「ラックさんに比べればまだまだです」

「ラックさんには全然及びませんよ!」



みんなに視線を向けられたラックさんは微笑んでいる。

でも、本当にリンとナナもすごいのだ。

全く邪魔にならず、完璧な給仕だった。

まぁ、ラックさんがソニアさんに給仕する姿はリンとナナよりもさらに洗練された所作だったから、まだまだとも言えるのかもしれないけれど。



「そういえば、ユズカとリツはテーブルマナーを誰に教わったんだい?貴族や富豪などが学ぶものだけれど、とてもきれいだったね」

「あぁ、両親に教わりました。必要なときに困らないように、と」

「いいご両親だね」

「はい、自慢の両親です!」



両親にテーブルマナーを教わっていて良かった。

まさかこんな風に異世界で必要になるなんて思わなかったけれど。

というか、テーブルマナーは地球と変わらないんだね。

……お母さんとお父さん、元気かな。



「ユズカ、リツ、明日はギルドに行くんだろう?」

「はい!あ、その時、リンとナナを連れていっても良いですか?」

「あぁ、良いよ。案内役が必要だろうと思っていたしね」

「ありがとうございます!」

「私は明日は仕事があるからね。好きなように街を楽しむといい」

「そうなんですか。お仕事頑張ってください」



私たちはリンとナナと視線を合わせて喜び合う。

ソニアさんはお仕事か。

商人さんだからお店とか持ってるのかな。

そんな風に考えていると、ソニアさんが「あ、そうそう」と言った。



「リン、ナナ。ユズカとリツと仲良くなったようだし、ふたりも冒険者登録をしてくるといい。リンとナナはユズカとリツの専属にするから、一緒に行動して、色々教えてあげてくれ」

「分かりました、旦那様!ありがとうございます!」

「その服じゃ不便だろうから、服もふたり分用意しておこう」

「過分の配慮、感謝いたします」



やったぁ!

リンとナナも冒険者になったら、一緒に依頼を受けたりしたいなぁ。

きっと楽しいよね!

それに、明日4人で適性検査もできる。

専属になったなら、色んなところに一緒に行けるし!

ソニアさん、ありがとう!大好きです!




「では、明日に備えてもう休もうか」

「はい!ソニアさん、おやすみなさい!」

「ソニアさん、おやすみなさい」

「おやすみ、ユズカ、リツ」



微笑むソニアさんに挨拶をして、食堂を出る。

部屋についたら、リンとナナと部屋の前で挨拶するけど、明日が楽しみで仕方なくて、笑顔が止まらない。



「じゃあまた明日ね、リン、ナナ!」

「うん!楽しみにしてる!」

「また明日ね、ユズカ、リツ」

「ちゃんと寝ろよ、柚華、ナナ」

「「え、リンは?!」」

「「リン(僕)は大丈夫だ」」

「「えぇー?!」」



……ここまでハモるのはもはや奇跡だね。

リンとナナと出会ったのは運命だったに違いない!

4人で顔を見合わせて笑ってから別れた。

部屋に入って、ベッドに入る。

ベッドはふわふわで、とても落ち着く。

いつの間にかベッドメイキングされていたみたいだ。

ここの人達はみんな優秀だなぁ。



(きもちいいなぁー……)



それなのに、どうしてか。

いつもならすぐに眠気がくるのに、今日はなかなか眠くならない。

ベッドで寝返りをうちながら、リトに話しかける。



(……リト)

『どうしたの?ユズカ』

(んー……なんか眠れなくて…)

『どうして?』

(うーん……)



どうして?どうしてだろう。

この世界へ来てからのことを思い返してみて、最初に出てくるのは、やっぱり初めての戦闘のこと。

……殺気を向けられるのも、戦うのも、全部初めてだったからね。

戦闘が終わった後、不思議と恐怖とかはなかった。

今までの生活とのあまりの違いに、まだ心が追い付いてないんじゃないかな。

戦闘中、私は魔法を試すことを考えるくらい余裕があった。

その後だって、心にはちゃんと余裕があった、はず。

無意識に現実逃避でもしてたのかなぁ。



(さっきまでの元気は、空元気だった?)



自分でも良く分からない。

今、気分が少し沈んでるのは分かるけど。

………あー、ここは地球じゃないんだから、頭を切り替えなくちゃいけないって思うけど、うまくいかない。

何だかぼーっとして、考えがまとまらない。



(リト、魔物って魔法は使うの?)

『使うよ。でも、人間や精霊とは魔力の質が違うんだ。独特の禍々しい魔力だから、魔力を察知できるようになれば、近くの魔物の位置は特定できるだろう』

(そうなんだ……)

『全ての魔物は魔力を持っているけれど、魔法を使えるのはそれなりの知能を持った魔物だけだ。つまり、魔法を使うものは強い。気をつけて』

(うん、分かった)



リトと念話をして気を紛らわしてみても、眠気が一向に来る気配がない。

明日に備えて寝ないとなんだけどなぁ。

野宿でも馬車でも普通に寝られたのに、なんでだろう?



(………あぁ、そっか。律がすぐ隣にいたからだ)



考えていたら、結構簡単に答えにたどり着いた。

そっかそっか、そういうことか。

私はどんなことがあっても、律が隣にいれば安心できる。

昔からそうだったなぁ、そういえば。

近所の子にからかわれて泣いてた時も、転んで怪我して泣いてた時も、悲しいことがあって泣いてた時も。

いつだって律が隣にいて助けてくれた。

……なんか私、泣いてばっかり。

でも、泣いたあとすぐに笑顔になれるのは、律のお陰なんだよね。

なんだかそう思ったら、律に会いたくなってきた。

ちょっと寂しさを覚えて、枕を抱きしめる。



(私ばっかり頼ってる気がするけど、私は律を助けられてるかなぁ)



私が律を助ける姿を想像できない。

逆ならいくらでも思いつくのに、なんてことだ。

……広い静かな寝室にひとりって、寂しいなぁ。

リトはいるけど。

私は律と部屋は別だったけど、寝室は同じ部屋だったから、特にそうなのかもしれない。

あー、ひとりだからじゃなくて律がいないから寂しいのかな?



(律に会いたいなぁ)



さすがに今から律の部屋に行っても、律は寝てるだろう。

明日の朝1番に律に突撃しよう。そうしよう。

………と、思っていたら。

コンコン、と扉を叩く音がした。



(っ!律だ!)



なんでそう思ったんだろう。

直前まで考えてたからかもしれない。

でも、とにかく律だと思って、私は扉を開けた。

そうしたら、そこに立っていたのは予想通りナルを肩にのせた律で。

なんだか感動して、律に思いっきり抱きついてしまった。



「律ーーーっ!」

「はいはい」



いつもはいきなり抱きついたら少しは驚くのに、今日は驚かない。

なんでだろう。予想でもしてたのかな。



「どうしてこっちに来たの?」

「リトが呼びに来たんだよ。柚華が眠れないみたいだって。ナルが翻訳してくれた」

「リトが?」



そういえば、リトが途中から声をかけてこなかった気がする。

律を呼びにいってくれていたのか。

律の足元にいたらしいリトが私の肩に登ってくる。



『柚華が律に会いたがってたからね』

(リト、ありがとう!)

『いいよ、ユズカが少し元気になったから』

(ごめんね、心配かけて)



私がそう言って謝ると、リトは慰めるように私にすりすりと頬擦りしてくれた。

リトはやっぱり可愛いなぁ、なんて考えながらリトの頭を撫でる。



「けど律、寝てたんじゃ……。ごめんね」

「いや、まだ寝てなかった。それに、柚華に話したいこともあったから。けど、柚華の話を先に聞くよ」

「………そっか。なんだろう、ここは地球じゃないんだなぁって思ったら、寝れなくて、律に会いたくなったんだよね」

「……ふ、そうか」

「むー……笑わないでよ律!結構深刻なんだからね!」



人がシリアスな感じなのに笑う律をちょっと恨めしく思いながら睨むと、頭を撫でられた。

ますますふてくされる私に、律は懐かしむようにくつくつと笑いながら言う。



「いや、昔も怖い夢見たときとかこんな感じで不安そうだったなって思って。くくっ、あの時は泣きながら俺に抱きついてきて離れなくて大変だったな。結局そのまま寝たけど」

「あぁ、ひとりで寝るのが怖くて律のベッドに潜り込んだんだっけ?」

「そ、なんか入ってきたと思ったら大泣きしててびっくりした」

「あの時は律が『大丈夫だ』って言いながら手繋いでくれて寝たんだったね!」

「それから何かあると手繋いで寝てたな」

「律と手繋ぐと安心するんだよねー」

「……眠れないなら久しぶりに手繋いで寝るか?」

「本当?!それならすぐにでも寝れるよ!律大好き!」

「はいはい、知ってる。……大丈夫だ、この世界には俺が一緒にいる」

「……ふふ、律には私がいるよ!」

「……知ってるよ」



ベッドに入ってふとんをかぶり、片方の手は律と繋いで、もう片方の手はリトを抱きしめて目を瞑る。

律と手を繋いで寝るならどこでも寝られる気がする。

双子だからかな、昔から律と手を繋ぐと本当に落ち着いて、安心して、ぐっすり寝られるんだよね。

リトも、本当に私を思ってくれてるのが伝わってくる。

ナルだって、私にすり寄って、心配そうにしてくれていた。

これ以上心配かけていられないね!

魔物への怖さも、律とリトとナルと一緒ならきっと大丈夫だ。

この世界へ来たとき、律と一緒で本当に良かった!



「あ、そういえば、律が話したいことって何だったの?」

「……あぁ…シェリと連絡がとれなくなったんだ。スキルを使っても繋がらない」

「えぇっ?!」

「シェリが最後に『教会を探せ』って言ってたから、明日ギルドに行った後、時間があれば探そう」

「教会かぁ……何かあるのかな?」

「分からないけど、行ってみる価値はあると思う」

「そうだね!……律、そんなに不安そうにしなくても大丈夫だよ!」

「不安そうになんてしてない」

「大丈夫、大丈夫!律、明日楽しみだね!」

「聞けよ、人の話……。まぁ、楽しみだな」

「明日のためにもう寝ないとね!律、おやすみ!」

「あぁ、そうだな。おやすみ、柚華」




ーーーーーーーーーーーーーーーー




次の日の朝、律に起こされて目が覚めた。

律のお陰でぐっすり寝れたみたいで、すっきりとした気分で起きることができた。



「おはよう律!リトとナルも!」

『おはよう』

「おはよう。準備もしないといけないし、そろそろ俺は部屋に戻るよ。後でな」

「うん!律、後でね」



ナルも体をすり寄せて、おはようの挨拶をしてくれた。

魔法で水を出して顔を洗う。

魔法の水って自由に出せるし消せるし便利だよね。



「ユズカ、おはよーう!」

「あ、ナナおはよう!」



少ししてナナが着替えを持ってやってきた。

昨日洗ってもらった服だ。

なんだか新品みたいにパリッとしている。

昨日のお風呂でも思ったけど、ナナの着せ替え術すごい。

あっという間に着替え終わった。



「ナナの着せ替え術すごいよね」

「ふふん、侍女のたしなみですから!」



ぷっ、ナナってばすごいどや顔。

その後、櫛で丁寧に髪をとかしてもらい、お風呂に行く前に外してアイテムボックスにしまっていたネックレスもつけて、準備完了だ。

言う前に全てやってくれるので、気がついたら準備が終わっていた感じがする。

朝食の準備もできているらしいので、食堂へ行く。

部屋を出たところで律とリンに会ったので、4人で向かう。

食堂につくと、ソニアさんが座るところだった。



「ソニアさん、おはようございます!」

「あぁ、おはよう。朝から元気だね、ユズカ」

「おはようございます、ソニアさん」

「おはよう、リツ」



すぐに席につき、朝食を食べる。

朝食はパンとスープ、スクランブルエッグ、ヨーグルト、フルーツだった。

今日のフルーツはティコというフルーツで、甘さが強いのでヨーグルトに入れるととても美味しかった。



「今日も美味しいです!」

「ありがとうございます」

「!シェフさんですか?」

「はい。そんなに喜んでいただけると作りがいがあります」

「わぁ!お料理もですけど、お菓子がとっても美味しくて感動しました!」

「はは、嬉しいです」



シェフの方とお菓子トークをしていたら、何故か毎日お昼のお菓子を作ってもらえることになった。嬉しい!

最近はソニアさんが仕事で家を空けることも多く、食事もお菓子も気合いをいれて作ることが少なかったそうで、やりがいがあると燃えていた。

このお屋敷にいる使用人さんたちは、ぱぱっと作ったものだけで食事を終えてしまうらしい。

楽だけど、作りがいがなかったそうだ。

お菓子は、外にいることが多いだろうからと、朝のうちに渡すと言ってくれた。

なんて優しい人だろう。

毎日律とリンとナナと一緒に食べようと思う。

シェフさんの優しさに感動していると、律に声をかけられた。



「じゃあ、朝食も食べ終わったし、そろそろ出発の準備をしよう、柚華」

「そうだね!ソニアさん、行ってきます!」

「行ってらっしゃい、ユズカ、リツ。リンとナナも。気を付けるんだよ」

「はいっ!」

「旦那様、行って参ります」



部屋に戻って、マントをつけ、腰に剣を装備する。

ポーチも腰につけて、リトを肩に乗せたら、準備完了だ。

ナナも私のと似たようなキュロットとシャツに着替えて、マントをつけていた。

私の服の色のコンセプトがオレンジでナナが赤。

色違いの双子コーデみたいだ。



「わぁ、ナナもリンも似合う!」

「えへへ、ありがとう!」

「初めて着たね、こういう服」



部屋を出て律とリンと部屋の前で合流すると、リンは律と色違いのような格好でマントをつけていた。

ソニアさんが私たちの服と似たようなのを選んで用意してくれたんだろうな。

リンの色のコンセプトは緑だった。律は青。

ナナはリンと並ぶと、くるんと一回転してポーズをとる。

……うー、なんだかわくわくしてきたっ!

4人でお屋敷を出るために玄関に向かう。

すると、そこにはラックさんが立っていて、微笑みながら送り出してくれた。



「お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「「「「行ってきます!」」」」



いちゃいちゃ回でした。

大好きな両親に会えない分も姉弟で補充しあってます。

柚華が沈んでる時はいつも律に元気を注入してもらっています。

リンとナナが専属になりました。



次はミゼの街です。

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