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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
8/23

双子の姉弟

タイトル予告詐欺だけど、中身は同じです!

気にせず読んでください。

私たちは西門というらしい小さい門をくぐってミゼの街へ入る。

入ったところで馬車が止まったのでどうしたのかと思っていると、サミさんがソニアさんに話しかけてきた。



「ソニアの旦那、依頼は完了だ、依頼カードにサインしてくれ」

「あぁ、分かったよ」


もうソニアさんは旦那と呼ばれることをスルーすることにしたらしい。

街に入るところまでで護衛の依頼は終了だったようで、ソニアさんがカードにサインをしてサミさんに手渡した。

依頼カードは依頼完了の証らしい。



「はい、書けたよ」

「ありがとよ、ソニアの旦那。じゃあ俺らはここで別れる。お嬢ちゃんたち、またな!冒険者になるならギルドで会えるだろう」

「サミさん、ニケさん、カイさん、またギルドで会いましょうね!」

「お疲れ様でした」

「今回はありがとう。また何かあったら依頼を出すからよろしくね、サミ」



サミさんたちはギルドに寄っていくそうで、そこで依頼カードを出し、報酬を受け取って宿に帰るらしい。

ソニアさんが払うんじゃないのかと思って聞いてみたら、依頼を出すとき、報酬はギルドに前払いするルールなんだそうだ。

依頼を完了したのに報酬を払わない人をなくすためらしい。

サミさんたちと別れた後、私たちはソニアさんのお家に向かった。



「あ、家が見えてきたよ」

「どれですか?」

「あの、茶色の屋根に白い壁の家だよ」

「わぁ……!」

「すごい……家っていうよりお屋敷ですね」

「そうかな?」

「そうですよ!うわぁ、なんか感動です!こんな豪邸見るの初めてです!」

「ふふ、それはうれしいね」



ソニアさんのお屋敷に感動していたら門についた。

門を守っている門番さんが二人いる。

え、個人で雇ってるの?すごい!



「あ、ソニア様!今門を開けますね」

「あぁ、頼むよ」

「はい!……どうぞ、お通りください!」

「ありがとう」



門番さんが門を開け、馬車が敷地内に入っていく。

お屋敷の扉の前にある階段のところで馬車が停まり、馬車から降りる。

そのまま、門番さんに案内されてイサさんが馬車を車庫のようなところに停め、馬を馬小屋に連れていく。

階段を登って扉の前に着いた瞬間、触っていないのに扉が開いた。

えっ、なんで?!



「お帰りなさいませ、旦那様」

「あぁ、ただいま帰った、ラック」

「旅でお疲れでしょう、中にお入りください。……おや、そのおふたりは?」

「ユズカとリツだ。こちらに来る途中で魔物に襲われているところを助っ人してもらってね。家に泊まってもらう予定だよ」

「さようでごさいましたか。了解いたしました。それにしても凛々しいお方と可愛らしいお嬢様で」

「ふふ、そうだね。ユズカ、リツ、こちらはラックだ。私の家の執事をしている」

「律です。よろしくお願いします」

「柚華です!よろしくお願いします!」



ラックさんは執事さんらしい。

優しく包み込んでくれるような落ち着いた雰囲気のある30代くらいの男の人だ。

お世辞でも、可愛らしいと言われて喜ばない女の子なんていないと思う。

嬉しくて笑ったら、にっこりと微笑まれた。

なんだかお父さんみたいで、ラックさんとは仲良くなれそう!



「旦那様、ユズカ様、リツ様。居間にお茶とお茶菓子の用意が出来ております」

「さ、様付けなんてしないでください……!」

「呼び捨てでお願いします、ラックさん。泊まらせてもらう立場ですから」

「いえ、旦那様の客人に呼び捨てなどできませんよ」



様付けなんて慣れないけれど、ラックさんに微笑みと共に却下されてしまった。

なんだかラックさんの微笑みに勝てる気がしない。

うぅ、年上の男の人に様付けで呼ばれるなんて……。

なんて思いながら歩いていると、居間に到着した。

扉が開かれ、中に入る。

白が基調の上品な空間はソニアさんにぴったりで、とても落ち着くけれど、貴族みたいな豪華な部屋だった。

テーブルには、ティーセットとお茶菓子が用意されている。

……いつ用意したんだろう?

さっきも、タイミングぴったりで扉が開いたし。



「………?」

「あ、いえ……すごく用意が良いなって思って……さっきも」

「ふふ、執事ですから」



不思議だなぁとラックさんを見つめていたら、視線に気がついたらしく、ラックさんに微笑まれた。

そして、帰ってきた言葉が「執事ですから」。

おぉー……聞いてみたい言葉ベスト10くらいに入る言葉だ……。

もう、ラックさんが何をしても執事だからで納得することにしよう。



「さぁ、お座りください。お疲れでしょうから、リラックス効果のある紅茶を入れましょう」

「ありがとうラック。そうだね、リツとユズカも疲れただろう。客室を用意するから、今日は早く休むと良い」

「ありがとうございます、何から何まで……」

「ありがとうございます!」



ふかふかのソファーに座り、紅茶が入るのを待つ。

ソニアさんが客室を用意すると言ってくれた。

客室。このお屋敷の大きさならあるかもとは思っていたけど、本当にあるなんて。



「気にしなくて良いよ、泊まるなら部屋は必要だからね。隣同士にするけれどそれで良いかい?」

「もちろんです」

「むしろ同じ部屋でも良いくらいです!」

「それでも良いな、ひと部屋ですむし」

「一緒に寝ることもありますから、それで大丈夫ですよ!」

「それはどっちかがへこんでたり泣いてたりするときだけだろ。しかも柚華が勝手に俺のベッドに入ってくる」

「むー……でも律だって追い出さないでしょ!」

「ユズカ、リツ、遠慮しなくていいよ。部屋は余っているし、"この世界では"空いている部屋があるのに客人を同じ部屋で寝かせるのはあまり良いこととされていないからね」



……あれ、ラックさんがいるけど、"この世界では"とか言っちゃって良いのかな。

まぁ執事さんだから良いのかな。

と思っていたら、後で律に「わざわざ言わなくてもいい"世界"って言ったんだから、さっきのはラックさんなら信頼できるっていうポーズだと思う」と言われた。

……ソニアさん、ポーズなんてとってたっけ??と頭の中ではてなが飛び交っていると、律に盛大なため息を吐かれた。

ポーズとは、態度っていう意味らしい。

ラックさんは微笑みを崩さず、丁寧に紅茶を淹れている。



「紅茶が入りましたよ」

「わぁ、良い香り……」

「……こんな美味しい紅茶、初めて飲みました」

「ラックの紅茶はとても美味しいからね。焼き菓子も」

「!美味しい……!」

「絶品ですね」

「ふふ、ありがとうございます。ここまで喜んでもらえれば作ったシェフも喜ぶでしょう」



紅茶はとても香りが良く、今まで飲んでいた紅茶はなんだったのかと思うような素晴らしいものだった。

なんだか落ち着く香りだ。

リラックス効果があると言っていたし、なんだか体がじんわりと温かくなってきた気がする。

お茶菓子はマドレーヌっぽい焼き菓子で、口にいれたらほろほろと溶けるようにすぐになくなってしまう。

……美味しすぎるー!!いくらでも食べれちゃう……!

談笑しながら紅茶とお菓子を楽しんでいると、すぐに飲み終わってしまった。



「さて、少し休めたことだし、そろそろ部屋へ案内しようか」



チリンチリン。ラックさんがベルを鳴らすと、メイド服を着た女の子と執事服を着た男の子が入ってきた。

ふたりとも良く似た容姿をしていて、髪はピンクプラチナで瞳は水色。

女の子は高い位置のサイドテールで、元気な感じの印象。

男の子はサイドは律と同じくらいの長さで、それより少し長い後ろの髪はひとつにくくっていて、冷静な感じの印象。

整った顔はうりふたつで、私たちとは違ってどこからどう見ても姉弟……いや、双子かな。

顔だけならどっちがどっちか分からないくらいだ。

でも、表情が全然違うからすぐに見分けはつくね。

女の子は全開の笑顔、男の子は無表情だけど、冷たい感じはしない。



「ユズカ様、リツ様。こちらは、執事見習いのリンと侍女のナナでございます。リン、ナナ、ご挨拶を」

「初めまして、ユズカ様、リツ様。おふたりのお世話をさせていただきます、リンと」

「ナナです!よろしくお願いしますっ!」

「僕たちに敬語は不要です。リン、ナナ、とお呼びください」

「分かった!リン、ナナ、よろしくね!」

「よろしく」

「それじゃ、また夕食の時にね、ユズカ、リツ」

「はい!ソニアさん、また後で!」



リンとナナの自己紹介が終わり、早速部屋に行くことになった。

リンが律、ナナが私担当らしい。

やっぱりリンとナナは双子だったらしく、双子同士とても気が合う。

年もリンとナナは17歳で、私たちと同い年。

ふたりとも仲良くなれそうだ。

敬語が嫌だなと思って、やめてくれるよう頼んでみたら、ナナは嬉しそうに、リンは少し戸惑いながらOKしてくれた。



「ここだよ、ふたりのお部屋!」

「ナナ、4人の時は敬語じゃなくて良いけど、それ以外はダメだから」

「分かってるってリン!右がユズカで左がリツのお部屋だよ」

「分かった!律、また後で遊びに行くからね!」

「柚華、あんまりはしゃぎすぎるなよ。じゃ、後でな」



一旦律とリンと別れて部屋へ入る。

ここも、白が基調の豪華なお部屋だ。

ベッドがすごく大きい。なんだか高級ホテルのお部屋みたい。



「ユズカ、この扉を開けると服が入れられるからね」

「うん、ありがとう!」



ナナに色々と説明してもらいながらお部屋を見まわる。

ここに泊まるなんて、なんだかわくわくしてきた!



「そういえば、ユズカは荷物ないよね?」

「あ、アイテムボックス持ちなの」

「わぁ!そうなんだ!私とリンもだよ!」

「え、律もだよ!すごい、みんな一緒だ!便利だよね」



一通り見終わったところで、コンコン、と部屋の扉がノックされ、ナナが扉を開く。

すると、ラックさんが立っていた。



「ユズカ様、お湯殿の準備が整いました。お入り下さい」

「分かりました!」

「行きましょう、ユズカ様」



ユズカ様、と言うとき、ナナが茶目っ気たっぷりにウインクしてきたので、思わず笑ってしまった。

すると、ラックさんが苦笑して、「普段は良いですが、他のお客様の前ではダメですよ」と言った。

……どこまでお見通しなのだろうか。

まぁ、執事さんだからね!



「……ナナ、一緒に入るの?」

「ううん、ユズカのお手伝いをするんだよ!さぁさぁ、脱いで脱いでー!」

「えっ、ちょ」



お風呂につき、ナナに服を脱がせてもらう。

自分で脱ぐと言ったけれど、気づいたら脱がされていた。

なんという早業。ナナ、恐るべし。

すると、リトがやっと起きたのか、ポーチからでて私の肩に乗った。



「わぁ!かわいい猫ちゃん!」

「リトだよ」

(おはよう、リト)

『おはよう……ふぁ、寝すぎたね』

(ふふ、そうだね。この女の子はナナだよ)

『そう、友達になったんだね。今からお風呂?』

(うん!とっても気が合うの!リトも入る?)

『そうだね。ついていくよ』



お風呂に入り、ナナに頭を洗われる。

体も洗うと言われたけれど、辞退した。

……さすがにそれは恥ずかしいよ。

そうしたら、私が体を洗っている間、リトを洗っていた。

リトは気持ち良さそうに目を細めている。

ふふ、良かったね、リト。



「リトちゃん、かわいいね!あ、浴槽につかっててね!」

「だよねだよね!分かった!」

「それにしても、ユズカはスタイル良いねぇ」

「そう?お母さんはもっとスタイル良いよ?」

「出るとこ出てるのに他は細いもん。お母さんがそうならユズカももっと良くなるかもってことだね!」

「……ナナに言われたくはないかなぁ。けど、頑張るよ!」

「ん?何で?筋肉のつき方もきれいだし、これはリツも大変だね!」

「ううん、何でもない! どうして律が大変?」

「変な虫が寄ってきそうだから、心配だねってこと!」

「ふーん?」



正直ちょっと何でいきなり虫の話になったのか分からないけど、この世界にはそんな変な虫がいるのか。

律が大変じゃないように自衛できるようにならないと。

お風呂からあがると、あっという間に体と髪を拭かれ、服は自分で着ようと思ったら、さっきまでの服は他の侍女さんが洗ってくれているらしい。

拭かれている間、リトはぴるぴると体を震わせて水気を飛ばしていた。

そこは魔法使わないんだね、リト。

新しく用意されていた白いワンピースに着替えさせられ、リトを肩にのせて、部屋へと戻る。



(ナナのあの着せ替え術はどうなってるんだろ……)



そんなことを考えながら、早速律の部屋に遊びに行く。

律はリンと向かい合ってソファーに座り、談笑していた。

律もお風呂に入ったみたいで、服が白いシャツに焦げ茶のパンツに長いブーツという格好になっていた。

なんだか貴族のラフな格好、っていう感じがする。

ナルは律の肩に乗っている。

ナルも起きたみたいだ。



「律ー!遊びに来たよ!」

「うわっ」



後ろから律に抱きつく。

律は多少びっくりしていたけど、いつものことなのですぐに冷静になり、「座ったら?」と言ってきた。

ナルをなでなでしてから律の隣に座ると、ナナもリンの隣に座った。



「髪がちょっと濡れてるけど、乾かすか?」

「あ、お願い!」

「りょーかい」



そう言うと同時に、ドライヤーみたいな温かい風が吹き、私の髪を乾かしていく。

今回はたいして威力も必要ないので、無詠唱だ。

風が治まる頃には、完全に髪が乾いていた。

満面の笑みでお礼を言う。



「ありがとう、律!」

「ユズカとリツは本当に仲が良いよね」

「そうか?」

「ナナとリンも仲良いでしょ?」

「そうかなー?私はリンに抱きついたりしないけど……」

「そうなの?」

「あ、ナナとケンカは良くするけどね」

「私も律とケンカすることあるよ!」

「俺らの場合はケンカっていうよりはお説教の方が多いだろ?」

「うっ……律、ひどい!」



それはそうだけど!何も言えない自分が悲しい。

だってこの世界に来たときもお説教されたから、反論なんてできるわけがない。



「そういえば、僕らもそうだね。ナナに侍女なんだから落ち着きをもてって何度お説教したことか」

「えぇっ、飛び火した!リン、今それは言わなくていいよ!」



ナナも私と似たような感じみたいだ。

私が仲間を見つけたと思っていると、律とリンが『同志よ……!』みたいな顔で握手していた。

思わず、ナナと目を見合わせて、くすくすと笑ってしまう。



「でも、律がお説教するのは私を心配してだもん。リンもそうだと思うよ。ね、律?」

「……それが分かってるならお説教されるようなことするなよ、柚華」

「ふふー、律大好き!」

「はいはい」

「本当に仲良しだねぇ。リン、私たちもやる?あのいちゃいちゃ!」

「やらないから」

「リン大す、ふぐっ」

「………ぷっ」

「リン、ひどい!止め方に優しさを感じない!」



抱きつこうとするナナの頬を片手で掴んで止めるリン。

ナ、ナナの顔がひょっとこみたいに……!

私がナナの顔の面白さに笑っている間にもリンとナナの攻防は続く。

ふふ、リンとナナもかなり仲良いと思うけどなぁ。

仲の良い姉弟のやりとりって見てて和む。

私と律もこんな風に見えてると良いな。



「うぅ、リンのガードが固すぎる……!」

「あ、そういえばリツ、君ツァオベリーだったんだね」

「あぁ、そうだな。柚華もだぞ。俺の得意属性は風で、柚華は水」

「無詠唱でそこまで自在に魔法使うやつなんて初めて見たよ。天才なんじゃないか?」

「それなら柚華も天才だな。柚華も同じようなことができるから」



あ、とうとうナナが無視された。

ぷぅーっとふくれているけど、すぐに魔法の話題に気をとられて機嫌は直ってしまったみたいだ。

……リン、これ計算なのかな?

まぁいっか。

やっぱり魔法を無詠唱でポンポン使う人はあまりいないみたいだね。

あ、そういえば、リンとナナは魔法使えるのかな?



「リンは魔法使えるの?」

「適性を調べたことがないから分からないかな」

「ナナも?」

「うん、分からない!」

「私たちもまだだから、今度一緒に適性調べに行こうよ!」

「それも良いね!ね、リン!」

「そうだね。旦那様に許可をとれたら一緒に行こう」

「俺たちからもソニアさんに頼んでみるよ」



こんな感じで私たちは、こちらの世界で唯一無二の親友となるふたりと出会ったのだった。

あ、ナナは最初の印象そのままだったけど、リンはナナに振り回されるせいで冷静さが崩れちゃってて見てて楽しい。

いやー、人って初対面の印象とは少し違うことも結構あるよね!




第二の双子の登場!

いやー、双子二組の軽い掛け合いは書くのが楽しいです。

仲の良い姉弟って良いですよね。

このふたりは柚華たちに雰囲気が似ているけど、柚華たちほどいちゃいちゃはしません。

恥ずかしいみたいです。

律は小さい頃からいちゃいちゃしてたので、人前でも恥ずかしくありません。

むしろいちゃいちゃがないとちょっと調子が狂います。

柚華は言わずもがな。



次は、絆の夜です。

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